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ヲタクが競馬の向こう側へ飛び込んだ話

初めに

これは個人の感想であり、団体、協会、その他個人すべて一切関係ありません。また、特定防止のため重要な部分や個人名などは一部フィクションやボカシを入れています。本記事内容に関する個人からの問い合わせには一切応じませんので予めご了承願います。また本記事は長いものになります。

昔々のお話(ここからプロローグ)

自分は幸運にも幼いころから競走馬や乗馬に触れる機会があった。親戚は関係者だったし、父も母も馬が好きだった。
自分もそのおかげかこの世で一番好きな動物は馬になった…。
幼心に感動した初めての競走馬はサイレンススズカだった。忘れもしない、連れて行ってもらった中京競馬場、G3小倉大賞典…。
そこから…天皇賞・秋まですべてのレースを見た。初めてそこで競走馬の現実を目の当たりにした。
なんやかんやその後も色々なレースをみたりした。勝馬投票券も買える年齢になって大負けも経験した。

ウマ娘との出会い

自分は俗にいうヲタクで最初は大のウマ娘アンチだった。友達にこんなのがあるよと言われたとき、安易な擬人女体化系の作品だろと思った。競走馬はそんな甘い生き物じゃない。そういう気持ちがあった為全く受け入れられなかった。
時は流れてウマ娘がアニメ化されて放送が始まった。もちろん見る気もなかった。だが、友達がこう言った
「サイレンススズカが出ているのにみないの?」
くっ、サイレンススズカが出ているなら見ないわけにはいかない……いい加減で萌え系の安易な作品だったら見るのを打ち切ろうと思って1話から見始めた(ニコニコチャンネル)
まぁ、うん。ハマった。スタッフの競走馬や史実に対する強いリスペクトが溢れていた。
全話が放送しきった頃、バイクにスズカさんを貼ろうと決めた。それと同時に競馬に対するモチベーションが爆裂した。勝馬投票券を買うだけじゃなくて競走馬に関わってみたい…。そう思うようになった。

一口馬主

親戚に聞いてまずは一口馬主というクラブが購入した馬に100-200口で分担した権利を購入するシステムを教えてもらった。早速募集のあったとあるクラブに参加した。奇跡的に審査も抽選も通って晴れて一口馬主になった。だが、その子は新馬戦を迎えることはなかった。残念ながら調教中に事故を起こしてしまい故障…競走馬としての馬生はそこで絶えてしまった。
悲しかったし、競走馬の現実をあの時以来に思い知った。

もっともっと深い関わりをしてみたい

その事故からしばらくして自分はもっともっと深い関わりをしてみたいと思った。もちろんボクみたいなクソザコが個人の馬主になんてなれない。
気になった人は中央競馬の個人馬主の審査条件を見てみるといい。
そう、競走馬を持ってレースさせるとは半端なことではないのだ。いつかの夢を抱いて口応募をまたしようと思っていた…そんな矢先だった…。例の伝説のひめたま事件が起きてしまい、翌年のコロナ過で競馬場が無観客になる中、NHKマイルCでとんでもない事が起きてしまう。
結果、まとまった金が手に入ってしまった。なお、そこで100億稼ごうが個人馬主にはなれませんので悪しからず。
その年の終わり…親戚の関係者から親戚伝手でこんな話が舞い込んだ
「ある個人馬主の馬に割合で出資してみないか?」
正にとんでもない話であった。
結論から言うとこの話を受けました。その過程は個人情報やらが関与するのですべて記載しません。よって次の章からが本編ですが少し話が飛びます。

個人馬主にくっついてみた(ここから本編)

普通は入れないところに入れるようになった。色々あってとあるバッジも借り受けた。
まずその牡馬は新馬戦を快勝し2歳である重賞にも勝った。翌年クラシックレースに出場、一応そのクラシック最終戦の菊花賞を無事完走した。
立ち位置が変わって深くかかわって大きく考え方や、競馬に対する姿勢が変化した。

東京優駿は本当に特別

よくこう言う…ダービーは特別であり、全てのホースマンの目指す頂であると。自分も口では言ってたし理解したつもりだった。でもそれはつもりでしかなかった。
東京競馬場のとある上階の部屋…そこの空気は凍り付いて張りつめていた。何度かそういう部屋には入っていたし、他のG1レースの時も入っていたのでいつもの感覚とまるで違くて驚いた。
いつもならご挨拶させて頂いてるんだが、その日は全く誰にも声がかけられる空気ではなかった。誰一人、口を開かない。丁度8Rが終えたあたりだったと思う。あまりの空気に耐えられずコッソリ逃げ出した。エレベーターで鉢会ったら最悪なので一番遠いところの階段を使って降りた。
あまりの恐怖に足が震え、胃液が込み上げてきた。トイレで胃液が出なくなるまで個室にこもった。雑魚メンタルだからだろ?そう思うだろ?これでも自慢じゃないけど崖っぷちを何度も切り抜けてきたし、デスマーチブラック最強の個人事業をこなしつつ大学に通い、薬剤師国家試験だって一発でクリアしてきたんだ…そこまで雑魚ではないさ。
だがあの空気は違った…今までの人生で経験したことのないものだった…。受験のバチバチ感とも違う。200万を賭けたギャンブルの緊張感とも違う。皆が同じ目標を抱き、そこに全てを賭けてきた。馬主、調教師、厩舎スタッフ、そして騎手…。そのすべての人たちがゴール版の向こう側を見据えているのだ。周りの人たちは全てライバルのはずなのに、そこに視線は向かない。皆がみな同じ向こう側を見ている…尋常じゃない光景だ。
これを書いている今でもあの日の光景を思い出すと手が震えてくる。そんな感じだ。
今までは純粋にダービーを楽しんでいた…でも、もう二度とそうはならなと思う。あの日のあの空気こそが真実なのだ。ダービーとはそういうものなのだ。

悔しくて悔しくて申し訳なくて…

あるレースで出資馬がギリギリの敗着を喫した。勝馬投票券に絡めなかった。最初は距離適性に不安があったし頑張ったね!無事に帰ってきてくれてありがとうって思った。
だが、時間がたつと…ツイッターで色々な人が反応してるのが見えた。罵声だったり、健闘をたたえる声、次走を期待する声…色々なご意見だった。
そういったもの見てると…段々、段々悔しくなってきた。そして、期待してくれてた全ての人たちに申し訳ないなって気持ちが強くなった。
自分は事情があって現地で応援することはできなかったのだが、家の中で遂に耐えれられなくなって、慌てて風呂場へ逃げ込むように入った。
30超えてまさか、声を押し殺してワンワン泣く日が来るとは思わなかった。泣いても泣いても悔しさがどんどんどんどん膨れ上がっていくのだ…。もちろん自分も勝馬投票券的な意味でも賭けていて負けたのだが。そんなことは微塵も思い出すことはなかった。金の問題ではないのだ。この気持ちはそういう問題ではなかった。1時間近く取り乱して泣いて…落ち着いたころに電話が来て色々お話しした。
この経験もこちら側に入ったからこその感覚だと思う。やってみなきゃわからないと思うから理解されたいとは思わない。

ウマ娘の歌詞に抱く感情やシナリオを見る視線が変わった

例えばGIRLS' LEGEND U
おそらく多くの人は「やっとみんな会えたね」でグッと来ているんだろうなって思う。
ボクはそれよりも
「ゆるぎない覚悟決して
1つ2つ共に綴る記録
背中に迫る迷い振り払え
今の自分追い越すだけ
勝ちたい 勝ちたい 勝ちたい キミと勝ちたい」
の部分が聞いててくるものがある。勝ちたいんだよ。勝たなきゃダメなんだよ。競走馬…つまりレースである以上は絶対に勝たなきゃダメなんだよ…1番人気なんてどうでもいいんだよ。2着でも3着でもダメなんだよ。1着じゃなきゃダメなんだよ。そう今は強く思う。

シルバーコレクターやブロンズコレクターという言葉が大嫌いになった

引退後はその異名でもいいのかもしれないけど、現役の今…そういわれるのだけはマジで耐えられないし、腸が煮えくり返りそうになる。
さっきの話と同じだけど、勝たなきゃダメなんですよ。陣営も騎手も勝つために全力を尽くしてるんです。馬だって勝ちたくて走ってるんですよ。1着じゃなきゃダメなんですよ。まぁ、心の中で思ってるだけです。

こんなに分の悪い賭けはない

例えばディープの子を1億円で買っても1勝もできなかったり条件戦にすら出れないで終わるなんてこともあれば。500万で買った馬が重賞を勝ってG1も勝っちゃった。なんてことが起こる世界です。馬主はある意味最強のギャンブルだなって思います。

重賞レースで勝つことは尋常じゃなく大変

さっき話したけど名馬の血統だとしても未勝利で終わるし、未勝利勝って条件戦勝ってOP戦勝ってやっと見えてくるのが重賞戦。新馬戦で勝ってそのままOP戦勝って重賞戦へいくとか。新馬戦で勝って巡りあわせで追加登録費用収めて重賞戦出場みたいなこともあるけど、出るだけでも大変な重賞戦。一番下のG3を勝つことですら尋常じゃない。ウマ娘のゲームのようにはいかない。うん十年馬主してても勝てないこともある。それが重賞戦。G1なんて木星くらい遠いわ。

まとめ

一言で言うなら…勝馬投票券を買ってるうちが華

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