【レポート】① -沖縄と日本と世界の話をしたい、京都から-
芸術や文学を通して、様々な国・地域の歴史や現在の問題に触れてみる朗読会。2024年8月から月1回程度の頻度で実施しています。
詳しい企画趣旨などは、こちら。> https://note.com/silclub/n/nf69d078e8482
第一回は、沖縄をテーマにお喋りしました。その時の様子を簡単にご紹介します。(文責:植村)
開催日:2024年8月20日(火)19:00〜21:00
会場:シルハウス
トークマスター:植村純子
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まず、会の前半は、これまで私たちが沖縄に行ったり、沖縄の友人知人との出会った中で感じたこと、本や映画・演劇に触れて知ったこと、これまでの勉強会などで話しあったことなどをご紹介させてもらいました。
・沖縄で経験した思い出 ①
2018年にアトリエ銘苅ベースで公演をしたのですが、その片付けをしていたときのことを、忘れられないでいます。
翌日はオフだったのでどこに遊びに行こうかとみんなで相談していて、その時に、平和祈念公園のことを話してくださったのが、『9人の迷える沖縄人』の作者である、安和学治さんでした。
「平和祈念公園に行って、”安和”を探してください・・」とボソッと呟かれた時、大変衝撃を感じました。ああ・・私は何もわかってなかった、と思いました。
沖縄の戦争の話は、小さい頃からたくさん教わってきたし、平和を学ぶ観光地(戦争遺跡、資料館)にもたくさん足を運んだことがありましたが、そこに沖縄で亡くなったたくさんの方が眠っていることは、もちろんよく知っていたけど、それが、今お会いしてる方々のおじいさんやおばあさんやご親族の方であるという想像力・連想力を、全然持っていなかったことに気づかされました。
・沖縄にまつわる作品
2023年、ロームシアター京都で『9人の迷える沖縄人』という演劇が上演されました。この作品は、1972年の沖縄本土復帰当時に、沖縄に住む人たちが何を考え、どう捉えたのか、を描いた会話劇です。2015年に沖縄で初演されました。
この京都公演をきっかけに、私たちは京都の仲間と沖縄について話したりするようになりました。(KAIKAで「沖縄を味わう」勉強会イベントも開催しました。その際は、『9人の迷える沖縄人』の作家さん・演出家さんにもオンラインで参加いただきました。)
また、「全国小劇場ネットワーク」の「シアター・ホームステイ・プロジェクト」というレジデンス企画で、沖縄からKAIKAに、演撃戦隊ジャスプレッソの渡久地雅斗さんが滞在をされました。
その彼が出演されていたということもキッカケに、映画『ミラクルシティ・コザ』を見たり、同じくコザ騒動を題材にした演劇『hana-1970,コザが燃えた日』を見たりもしました。
沖縄返還50年の節目の年でもあった2022年には、こうした作品にたくさん出会うことができました。私の知らなかったことを、知る機会でした。
・沖縄で経験した思い出 ②
そうして2022年6月、関心が高まった私たちは、一緒に沖縄へ行きました。
最初はアメリカンビレッジに遊びに行って、何気なく嘉手納基地を見学に行きました。それから「ミラクルシティコザ」の撮影地訪問でもしようと、基地の周りの道をドライブして向かったら・・、辿り着くまでの道のりが想像以上に長く、あまりに遠く、基地の大きさに改めて驚きました。地図で見ているだけでは、わからない体感でした。
・沖縄で経験した思い出 ③
それから2023年10月、再び沖縄へ訪れる機会がありました。
主目的はフラフェスティバルに出演することだったのですが、初めて石垣島へ行きました。
帰りには沖縄本島にも寄り、再びコザの町に行きました。カフェシアター「シアタードーナツ」で、せっかくだから沖縄にまつわる映画を見たいと思って、『沖縄戦の図』を観ました。
若い世代が、おばあちゃんの戦争体験を伝えていくのに、歌でそれをやろうとしたり、こうして絵で伝えられているものがあることの意義を考えました。実際に演劇でそれをやろうとしている仲間も知っています。
私も伝えられて感慨に耽っているだけじゃなく、私自身が、何かを残していく/引き継いでいく、ということを少しは意識しないといけないなあ・・ということを改めて考えています。
・沖縄と日本と世界の話をしたい
似たような経験を、例えば、韓国のことを考えた時、ハワイのことを考えた時にも感じたことがあります。
私たちは(少なくとも私は)、「1945年」を一つの大きな区切りのように捉えて、それに安心して生きてきたのではないか、と思うのです。戦争も平和も、「過去の物語」として消費して、全く当事者意識を持てていなかったように思います。
『9人の迷える沖縄人』京都公演を紹介されていたSNSのページで、役者紹介が綴られているのを読んだ時。その中の「京都の人への質問」という項目で、出演者の犬養憲子さんが「都は京都にあるべきだったと思いますか?」と問われたのが、とても鋭い・・と感じました。そういうことなのだと思います。こういう視点が持てるかどうかを問われているのだろう。
遷都はともかくにしても、最近の出来事としては、では、文化庁が京都に来たことは良かったと思うか。自分の考えをきちんと言葉にしたことはありません。
本土にいて、京都にいて、私に何を言えるだろうか・・とずっと考えていました。このような勉強会(朗読会)をすることの烏滸がましさも、正直、すごく感じています。でも、昨年の勉強会の時に、こういうことをやりたいと思ってるんですが・・ということを伝えたとき、『9人』のメンバーの方々が「ぜひやってください」と言ってくださった。そのことを改めて有り難く思います。
・未来に対しての責任
会の後半は、参加者の皆さんから、様々な話を聞くことができました。予想していた以上にちゃんとお話ができたし、沖縄のことを中心に、あれこれ現在の問題やら、色々な体験や意見・感想をシェアし合って、充実した時間になりました。
沖縄にルーツのある親戚の話、ニュージーランドにホームステイした時の経験談、北海道に訪れた話、祖父母や親族から聞いた戦争の話、パレスチナやその他の地域への関心の持ち方、中国の人と交流した時の体験、韓国の人との交流した時の体験など、芋づる式に思い出したことが多岐にわたって話されました。
京都はこれまでの戦争の時にも(他の都市と比べて)大きな被害を受けていなかったゆえか、京都にも現代史の物語があるはずだが取り上げられないように感じています。それを残すべきなのかもしれない・・ということを、最近考えています。
戦争にまつわる話はもう本人から話を聞ける機会がなくなっていってるけど、私たち世代が祖父母などから聞いたことのあるエピソードを集めるというのもやってみたら面白いかも・・と考えたりしました。
「歴史に対して責任を負わないといけないことはないが、現在と未来に対しての責任はある」という発言が、参加メンバーの中から聞かれました。
沖縄やその他地域を「バックヤード」のように見ないことにしてしまわないで、私たちも「迷い続けよう」、と改めて考える時間でした。
「沖縄と日本と世界の話をしたい、京都から」という、割とタイトル通りの場になったような気がします。参加いただいた皆さん、ありがとうございました。こういうのを積み重ねていきたいと思います。それだけでも何かあると信じています。
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『平和を求める朗読会』
主催・企画:シルクラブ
京都府文化力チャレンジ補助事業
次回は、10月22日(火)19:00〜。参加お待ちしてます。
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