The Cure "Seventeen Seconds"

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イギリス・クローリー出身のロックバンドによる、1980年発表のフルレンス2作目。

前作 "Three Imaginary Boys" をレコード会社主導で制作されたのがとにかく不本意だった Robert Smith は、今後の作品は全て自分が総指揮を執る!となり、良くも悪くもエゴイスティックで完璧主義な彼の思想を加速させる結果になった。やっていきに火がついた Robert Smith 。ここから彼の本領が発揮される。なので今作こそが The Cure の実質的なファーストアルバムだろうと、個人的には思っている。

とは言いつつ今作もまた制作上で難があり、予算やスケジュールの都合のためにたった7日間でレコーディングを完了しなければならず、1日に16~17時間は缶詰めで作業する羽目になっていたらしい。そんなカツカツにも程がある状況だったからか、出来上がった10曲中3曲はインストゥルメンタルの小品。しかもそのうち "The Final Sound" は本来ならもっと尺の長い曲にするはずだったのが、結局は期日に間に合わず、わずか52秒の未完の曲として世に出さざるを得なくなったというトラブルも。しかしながら、そういった問題全てがここでは怪我の功名に転じているように見える。楽曲の方向性が統一されてゴシック由来の陰鬱なムードが蔓延し、コンセプチュアルな世界観が全編に展開されているわけだが、不気味なインストゥルメンタル曲が合間に挟まることでアルバムの構成に程良い起伏が生まれ、イマジナティブな深みが増しているように思う。特に先述の "The Final Sound" が突如ブツ切れで終わり、今作の最大のハイライトである "A Forest" へと突入する流れには思わず鳥肌が立つ。 

改めて聴いても思うが、 "A Forest" はこのアルバムの中で明らかに抜きん出た存在感を放っている。もちろん他の曲が不出来なわけではなく、Robert の繊細なギタープレイが冴え渡る "Play for Today" や、不協和音が呪術的な重苦しさを醸し出す "At Night" など、聴きどころは随所にある。しかしイントロが追加されてシングルバージョンよりも厳かさが増した "A Forest" は、全体の流れの中で確実に一番の山場、中枢の役割を果たしており、何ならこの曲の魅力を十二分に補強するために他の曲を拵えたのではないかとも思うくらい。冷たさばかりを聴き手に残すギター、何かに追い立てられているように疾走するドラム、そしてシンプルながら強烈におどろおどろしい印象を植え付けるベース。中でもベースが良い仕事っぷりだ。この曲を聴くと2019年のフジロックでのライブを思い出す。その時はベーシスト Simon Gallup が諸事情で不参加となり、急遽代役で息子の Eden Gallup がベースを担当していた。そこで披露された "A Forest" は音源よりもベースの迫力が数段増しで響いてきたし、アウトロで他のパートが音を消した後、たった独りでベースを重々しく鳴らし続ける Eden の雄姿は、今でもはっきりと脳裏に焼き付いている。すっかり夜が深まり、しとしとと雨が降る苗場の山中。あの時のフジロックは確かに "A Forest" の世界と化していた。

フジロック、今年はなくなってしまったな。

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