MINAMI WHEEL というイベント
MINAMI WHEEL というイベントがある。大阪・心斎橋周辺のライブハウス20ヶ所ほどを使った大掛かりなサーキットイベントで、今年で20周年を迎える。今でこそ東京や名古屋などにも同じような形式のイベントはいくつかあるが、規模的にはこのミナミホイールが最大級ではないだろうか。
自分の記憶が確かなら2008年頃からほぼ毎年このイベントに通っている。基本的には駆け出しの新人ミュージシャンを主な出演者としているため、新人発掘するのに最もコストパフォーマンスの良いイベントがミナホなのだ。頑張れば3日間でおよそ20組以上は新しい音楽をチェックできるのである。今年なんかは Tempalay 、羊文学、King Gnu 、ベッド・インなど、音源だけチェックしていた面子のライブを一気にさらうことが出来た。最も衝撃的だったのはやはりベッド・インだった。ようやく目の当たりにすることが出来てもはや感慨深かった。
しかし何故自分はおよそ10年もこのイベントに通い続けているのだろう。もちろん前述の通り新人発掘のためではあるが、それだけではない。ちょうど夏が過ぎて秋の気配が深まり始める頃、様々なバンドマンやスタッフがチラシを配りながら客に呼びかけ、いつも以上にアメリカ村が賑やかな様相を呈する、この雰囲気が何だか大学の頃の学園祭を彷彿とさせる感じがあって、ひとりこっそりとノスタルジックな気分に浸ることができるのだ。元々アメリカ村は若者向けの様々なサブカルチャーがごった煮になった、大阪の中でも特に猥雑な雰囲気を持った街のひとつである。それが一層熱気を帯びるのがこの秋の連休3日間、ということだ。ある時などはその辺のベンチで一息ついていたら、隣に座っていた男性がとある出演バンドのドラマーで、宣伝を受けるついでにバンドマンならではの苦悩やミナホにかける意気込みなど、普段では聴けない世間話を聴かせてもらったりした。基本的に自分はライブ終演後など演者に気軽に声を掛けられるタイプではないので、非常に刺激的な体験だった。
フェスというものも今や日本中に乱立していて、それぞれの特色を打ち出すのが難しい時代になってきている。その中でもミナホは、バンドマンの熱量を普段のライブよりも直に感じ、ささやかな人間ドラマと触れ合い、街の活気とライブの活気が渾然一体となる、正しい意味での「祭り」感が表れたフェスではないかなと思う。