「ご所有のマンション売りませんか?」の正体 ~不動産投資コラム~
不動産投資をしていると、必ずと言っていいほどこんな連絡が来ます。
「お持ちのマンション、売りませんか?」
「ご所有の不動産、高値で買い取ります!!」
いわゆる「ワンルーム不動産業者」と言われる、私のようなサラリーマン不動産投資家をターゲットにした不動産屋が、どこからか情報を仕入れてくるのです。
はじめはDMだったり、情報が洩れると電話やメールだったり。
あらゆる手法でサラリーマン大家さんに連絡をしてきます。
今回は、こういった不動産業者と真摯に向き合い対応した結果、私の中で「彼らの実態」を探り当てることができたので、記事にすることにしました。
1.ワンルーム不動産のビジネスモデルとは?
まず、彼らの目的は何なのかを知るためには、彼らのビジネスモデルを知る必要があります。
もちろん業者によっては色々なビジネスをやっている会社もありますが。
「不動産売りませんか?」
と連絡してくる会社の事業はほぼ一つです。
<彼らのビジネスモデル例>
①相場2,000万円の物件を1,800万円で仕入れる。
∟ポイントは、サラリーマン大家の多くが素人であることを良いことに、相場より安値で買い叩きます。
②1,800万円で仕入れた物件を2,200万円で売却する。
∟ポイントは、サラリーマン大家の多くが素人であることを良いことに、相場より高値で売り付けます。
これだけで、粗利400万円です。
多少の経費はかかりますが、最終300万円は彼らの手元に残るでしょう。
こういった手法を取る多くの不動産業者が、中小・零細企業です。
大手は黙ってても情報がやってきますから。
2.どこで私の情報を仕入れてくるのか?
気になるのが、
「彼らはなぜ私が投資不動産をもっていることを知っているのか」
ということです。
1発当てれば数百万円の利益を得られるビジネスですから、あの手この手で情報を仕入れてきます。
<ステップ①>
まず、不動産を保有すると「登記」がされます。
この登記情報は、法務局で管理され、誰でも閲覧することができます。
例えば、「新宿区にある●●マンションの▲▲号室の所有者」を知りたければ、簡単に調べることができるのです。
さらに、名前だけでなく住所も分かります。
つまり、
■調べたい物件と、所有者の住所が一致していれば居住用
■調べたい物件と、所有者の住所が異なれば投資用
ということです。
<ステップ②>
投資用不動産を保有している人の「名前」と「住所」が分かりました。
次に不動産業者が取る行動はいくつか分かれます。
(A) 住所にDMを送る
(B) SNS等で名前を検索して連絡を取る
(C) 名前をネット検索して、会社などの情報を得て連絡を取る
(D) 一度連絡した不動産業者から情報が洩れてる
私がこれまでに経験した方法はこの3つです。
(A) 住所にDMを送る
これがポピュラーな方法です。
最も簡単で、ただレスポンス率は極めて低いでしょう。
私の自宅にもしょっちゅう知らない不動産業者からDMが届いていますが、大半はそのままゴミ箱行きです。
(B) SNS等で名前を検索して連絡を取る
本名でSNSをされている方は、このパターンも多いでしょう。
私は基本的にハンドルネームでSNSをしているのですが、1件名刺管理アプリ「エイト」だけは本名でした。
そこで友達リクエストがあり、「あれ?以前名刺交換したかな?」とリクエストを受けたら、不動産業者だったパターンです。
(C) 名前をネット検索して、会社などの情報を得て連絡を取る
珍しい名前の方は注意です。
まさに私がそうで、苗字も名前も珍しく、この組合せはおそらく世界で一人だと思います。
そして、現在私は所属する会社の子会社の社外取締役をしており、HPに名前が載っています。
ゴミのような不動産業者は、そこの代表電話から私に繋がろうとしてくるのです。
以前、その子会社から「●●という会社から電話です」と取り次がれたことがあり、さすがに本気でキレました。
(D) 一度連絡した不動産業者から情報が洩れてる
これは自業自得です。
ここまででご紹介した方法にて連絡が来た不動産業者と、何回か連絡を取ったことがあります。
決して売却する意思があった訳ではなく、どれくらいで評価されるのか知りたかったためです。(当然、売却検討しようと思う価格は出てきませんでした)
そこで話が一旦終わっても、他の不動産業者からも連絡が来ることがあります。
その不動産業者が他に情報を流しているのか、退職者が情報を持って行ったのか、真相は不明です。
3.不動産業者と面会したエピソード(やっぱりゴミだった)
ここまでは前置きで、つい最近、このような手法で私に連絡を取ってきた不動産業者と面会し、彼らの思惑を暴いてきたので共有します。
面会した不動産業者は「エイト」で繋がった業者です。宅建免許番号(2)の比較的新しい会社でした。
今年10月頃、私の墨田区の物件を売却しないかと電話が来たので、
「いくらで買ってくれるの?」
と振ってみました。
「かなり高い値段でご希望されているお客様がおりまして・・・」という鉄板の返し。
こういうときって、絶対そんなお客さんいないので注意してくださいね。(話を進めたら、「ご縁がなかったようで・・・」とか言ってきますよ)
さらに私は、
「売るだけは考えていない。代わりにいい物件があれば買い替えたい」
と切り返しました。
不動産業者からすると、新しい物件は仕入れられて、古い物件を売り付ける大チャンスです。
すると、「良い物件がある。会って話したい」と。
ちょうど週末、出掛ける用事があったので、一度会ってやろうと思いアポを取りました。
会ったのは池袋のルノアール。こういう怪しい話って、なんでいつもルノアールなんでしょう。
電話で話した人とは別に、年配の男性がおり、二人組でした。どうやら上司のようです。
コロナ禍の定型世間話から、向こうの会社の歴史の話が始まり、不動産市況の話につながり、「今が売り時ですよ」という絵に描いたような営業トークです。
個人的には、電話口で話した営業さんのような、たどたどしい人間味のある営業さんが好きだったので、こういう定型文の営業トークには嫌気がさしていました。
30分くらい気持ちよく話した後、
「返済表」「物件資料」「私の源泉徴収票」
をくれと言い始めたので、
「買い替える物件しだいだ」と切り返しました。
てっきり新しい物件情報を用意してくれてるのかと思いきや、
「週明けに物件情報を送ります」
とのこと。
ガッカリです。
もういいや、と思い、
「実は私、元不動産屋なんです」と明かしました。
凍り付くルノアール。
「・・・大手ですか?」
「はい、業界1位のところです。」
「・・・。」
先方の心境、お分かりになりますでしょうか。
要は、彼らの仕事は「素人を騙す仕事」なのです。
プロを相手には相手にされないことが分かっています。
つまりこの瞬間、私は彼らにとって「客ではなくなった」ということになります。
もちろん私は現在不動産業界からは離れていますので、現役ではありません。さらに、営業の現場にいたのはほんの少しで、プロの中では知識は底辺です。
しかしそんな浅いプロであっても分かる程度の、薄い知識しかない私でも騙せない。
そんな商売を彼らはしています。
4.不動産業者と面会したエピソード(その後のメールやり取りでフェードアウト)
その場は一旦解散となり、物件情報は別途メールでくれることになりました。
正直、向こうは消化試合だったと思います。
とはいえ私としては、どんな物件を出してくれるのか興味津々でした。
週明け、業者からメールを見ると、クソ物件しかなくガッカリ。
そこで、
「過去の成約事例」「なければ類似物件の成約事例」
を求めたところ、なんとスルー。
以後、連絡はありません。
5.まとめ・・・彼らの正体は「素人を騙して稼ぐ輩」
いかがでしたでしょうか。
彼らの手口をまとめると、
① 登記から不動産投資家を探す
② 片っ端から連絡を取る
③ 反応した投資家に売却の提案を持ちかける
④ 「今が売り時」「欲しがっているお客様がいる」などと煽る
⑤ 買い叩く
という流れです。
こうやって書くと、「そんなのに騙される奴いるのか」と思ってしまいますよね。
ただ、こういう不動産業者が多くいるということは、騙されている人がいるということでしょう。
不動産投資家の皆様なら、耳にタコができるほど聞いていると思いますが、
「うまい話など無い」
ということを忘れないようにしましょう。
6.最後にアドバイス
そして、「これから不動産投資を考えている」という方にアドバイスがあります。
不動産投資素人にとって、「不動産選び=不動産業者選び」だと思ってください。
電話やDMで向こうからやってくる不動産業者にロクな奴はいません。
まともな不動産業者は、そんな昭和な方法で集客しなくても、良い物件を買えるし、お客さんも付いてきます。
繁華街で、キャッチに連れていかれる居酒屋で良いお店なんてないですよね?
「飲み放題500円」とか「食べ物全品2割引き」とか、煽ってきますよね。
良いお店は黙っててもお客さんがやってきます。
小手先の割引なんかしなくても、料理やもともとのコスパで勝負しています。
ちなみに私が不動産投資をはじめたときは、会社の後輩の実家の不動産業者にお世話になりました。
今考えると、それはそれで危険だったかもしれません。
ただ今となっては、自宅の購入や資産形成にまでアドバイスをいただけて、良好な関係な築けているので結果オーライでした。
そういった紹介やつながりがあれば良いですが、私のように不動産会社で働いていた方でもないと、難しいかもしれません。
その場合には、大手の不動産会社に複数行ってみるのがいいでしょう。
しがらみがなく、フラットな目線で色々な不動産会社を見るところから始めてください。
決して、すぐに食いつかないこと。
買いたい気持ちを抑えて、慌てず、焦らず、まずはあなたの目を鍛えることが大切です。
「不動産」を見極めることと同時に、「不動産業者」を見極める力を身に付けましょう。
就職活動と同様、「業界研究」は基本ですね。