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【嗅覚疲労】人体のネガティブ機能を使った精油の官能評価トレーニング!

さて!ラベンダーの収穫・オイル抽出からそろそろ半年を迎える頃合いが近づいてまいりました!
(なぜ半年寝かせなければならいのかは実は詳しく分かっていない私)
いよいよウチで収穫したラベンダー品種たちの香りの違いを調べていくお楽しみパートに入るんですが・・・

日本国内で手に入るL. angustifolia品種を30品種近く集めたわがラベンダー研究園(23.07.04)

同じ植物種(Lavandula angustifolia)の"品種同士"であり、育つ気候収穫タイミングもほぼ同じ収穫条件下で得られた精油の官能比較評価を行うにあたって、とある難点(課題)が存在しています。

●香りが似ている分、比較は難しい。

精油(香り)って、辛い香りや甘い香りなど、似た香り同士をいくつも嗅ぎ比べているとだんだん香りの輪郭像がボヤけてきて香りがよくわからなくなってきてしまうんです。

植物分類学上では"同種"だが「品種」として異なっているコモンラベンダー品種たち(写真)

ごく近縁植物の比較栽培などをやっていると、必ずやワインテイストのような作業が誰しもが通る道として存在しています。
かなり匂いの近いもの同士、そして香りがかなり似ているもの同士の違いを言葉に表す作業ですね。

いきなりぶっつけ本番で挑んでしまうと、評価のクオリティがLowのままなので、準備できることは準備して、可能な限り万全に備えていざラベンダー精油の官能評価に挑みたい所存なのですね。

ちょこっと脱線する小話なのですが。。。

1世紀以上でしょうか、万國万人が愛するコカコーラという炭酸飲料が存在していますよね。アメリカといえばコーラ!くらい象徴的な炭酸ドリンクかと思います。
実はそのコーラには20あまりのスパイス・香味が使われていると噂されているんですが、風味材料となる香味スパイスレシピを数年おきに変化させることで味わいを絶妙に変化させ続けてコカコーラという商品の味を飽きさせない工夫を凝らしているという噂が存在しているんですよね。

まぁあるにしろないにしろ、香水メーカーの見解からすると多数の「香料」を数年間安定して入手し続けるのは難しいので、必然的に味に変化が出てしまうという暗黙の承知があったりします。

●実は鼻(嗅覚)にも疲労が存在している

そもそも、ヒト(人間)という動物の五感において、鼻(嗅覚)は他の動物に比べてかなり劣っているとされます。
どうやら火を使って毒肉を調理できるようになったために腐敗や毒に警戒する必要が減ったからとされてます。おそらく。

五感中最も退化しているとされる嗅覚ですが、しっかり食べ物や空間・モノを快い香りなどとして感知する能力はしっかり残っています。
特に食事をより美味しく楽しく感じられるのは嗅覚のおかげとも言われてますよね。

そんなモヤっとした感覚器の嗅覚ですが、「疲れ」というものが存在しています。筋肉などと同様に働かせすぎるとしっかり疲れて機能が鈍ってしまうんですね。

例えば、、、
①甘いお菓子を先に味わってからココアを飲むと、普段よりココアの甘さが少なくよりほろ苦に感じることができるハズです。

②居酒屋に入って1杯目に飲むビールの味わいと5,6杯目に飲むビールの味わいを比べると、格段に1杯目のビールの方が美味に感じられていたハズです。

空腹の時に食べる料理お腹いっぱいになってから口に運ぶ料理の味の感じ方では前者の方がとびきりの美味しさとして感じられているハズです。

これら味覚例のように「匂い」に関しても同様のことが言えて、
同じ匂いを嗅ぎ続けてしばらくすると、その系統の匂いに対して鈍感になってしまう現象が生じます。これを嗅覚疲労といいます。
(香水について勉強しはじめて初めて知りました)

●特定の匂いを嗅覚疲労で弾き出して目的の香りをブラッシュアップする

例えるならば、香り・匂い物質の引き算をすることに似ていると思います。

具体的には、、、

まず香り物質の有無を詳しく調べたい精油①があったとします。
この精油①には匂い物質A,B,C,Eが含まれているものとします。

次に嗅覚疲労を得たい精油②があったとします。
この精油②には匂い物質A,B,D,Eが含まれているものとします。
先にこの精油②を1分強ほど嗅ぎ続けるのです。

そうすることにより、嗅覚が匂い物質A,B,D,Eに対して鈍感になります。

そしてすかさず調べたい精油①の香りを嗅ぎます。
そうすることによって精油①に含まれるA,B,Eの匂い物質が感じにくくなっているので、特に匂い物質Cの香りを感応することができる〜〜〜

という理屈になっているのです〜!どうでしょう!

香りや植物の種類が比較的近い場合などにこの方法が応用できると思うんですね。(サルビア属&ラベンダー属、針葉樹精油、ゼラニウム精油&パルマロザ精油 etc…)

この方法のそもそもの気づき

某フレグランス小売店の精油試香棚でラベンダーとクラリセージの香りを味わってみたときのことでした。
ラベンダー▶︎クラリセージという順で香りを味わうと、クラリセージの香りがなんとも青紫蘇!酸っぱいだけ!という散々なテイスト結果だったのです。
大衆からは人気の精油でオススメされる割にそんなリラックスできる香りではないな…という意外な結果だったのです。

しかし時間をおいて別精油▶︎クラリセージの順でまた香りを味わってみると、なんと香りが大きく異なって甘み・リラックス性を感じる香り部分が感じられたのです…!!

嗅覚の脆さといいますか、不完全さと奥の深さに気づきましてこんなおもしろい嗅覚の性質もあるものなんだなぁ〜〜〜という体験をしていたのです。
(それと同時に、香りの比較って面倒な側面もあるんだなと理解)

●ラバンジン精油を使って試してみよーう!

わが家で所有しているラバンジンの市販精油3品種たち

さて、我が家には市販サンプル香料としてラバンジン(Lavandula x intermedia)の3品種分の精油を持っています。
左からアブリアル、シュペール、グロッソとどれもフランスが誇るラバンジン品種の精油ですね。
特に古典的でファイトプラズマに弱いアブリアルは希少でしょうか。

ラバンジン(仏:ラバンダン)は富良野で見られるコモンラベンダー(L.angustifolia)とは違い、セージのようなカンファラスな香りを持つヒロハラベンダー(L.latifolia)とコモンとのハイブリッド系統種であり、樟脳っ辛い特徴的な香りを持つハイブリッドラベンダー精油になるんですね。
(ということあってリラックス効果は得にくい精油)

有名なローズマリー化学種(chemotype)のうち2つ(シネオール&カンファー)

そして彼ら同様に樟脳っ辛さが特徴的なローズマリーケモタイプ精油も所有しているので、嗅覚疲労判別の実践例として活用してみることにしましょ〜う!

さて。ラバンジン精油から樟脳/シネオールを引いてみる概要説明。

甘く爽やかで癒される香りを持つコモンラベンダー精油とは違ってラバンジン精油をスーッと目が醒めるセージLikeな香りに至らしめている物質はセージ属(Genas of Salvia)と類縁することに由来するシネオールカンファーであるとされます。

なのでつまるところ、セージ類に鼻を慣らせばコモンラベンダーと共通する香りだけが残って感じられるだろうという算段なワケです。
ではやってみましょう。

▶︎嗅覚疲労判別、やってみる。

ローズマリー・シネオール精油

まず先に"龍角散のど飴的な甘さ"を含むシネオールの方から先に鼻を慣らし(疲労)ます。
これを1分強嗅ぎ続けます。

ローズマリー・カンファー精油

そして次にラバンジン精油らから排除したい樟脳(ハッカのようにスーッと辛いアロマ)の香りを強く持つこちらを1分強嗅ぎ慣らします。

スースー感があまり強く感じなくなった(疲労した)ら、いよいよお楽しみパート!ラバンジン精油の香りを味わっていきます。。。

嗅覚疲労を起こした後の各ラバンジン精油の香り

嗅覚疲労後にグロッソ精油を試す

ラバンジン精油の中では特に樟脳っ辛さ(カンファラスなニュアンス)が強いグロッソ精油ですが、おもしろいことにワームウッド(ヨモギ花精油)のようなヘビースパイシーで鈍く甘い香りに変化しているのがわかります…!(これはおもしろい!)

嗅覚疲労後にアブリアル精油を試す

こちらもグロッソ同様、樟脳感が強いとされるアブリアル精油を嗅いでみます。
するとグロッソとは比較にならないほどラベンダーのフラワー的ニュアンスが一気に強く広がるのがわかります!
アブリアル精油は樟脳臭を取り払うとフラワー感(フローラルさ?)が非常に強い品種の精油であることがわかりました!この点グロッソとは大きく違っています。

嗅覚疲労後にシュペール精油を試す

最後にラバンジン品種の中では樟脳含有量が特に低く、コモンラベンダーっぽいと評価されるラバンジン精油を試してみます。

おっどろくことに、まるでラベンダーブルガリアン精油のソレな香りになりました!
コモンラベンダー精油の香りまんまの甘さが特に強調されていて、樟脳に対する嗅覚疲労状態ではコモンラベンダーとなんら変わらないほど甘く癒されるリラックスアロマとなっているのがなんとも驚愕です!!

(ラバンジン精油はリラックスには向かないと言われるだけに驚き…)

Result

というように、どうやら特定の匂い(香り物質)に嗅覚を疲労させた状態で官能比較をしてみるとしっかり香りの変化という比較結果が得られるということがわかりました!

そしてそして、発展実験。。。

我が家の近所で野生化していたのを蒸留した自家製スペアミント精油

ローズマリーなどセージ類と似た香りであるシソ科スペアミント精油(Mentha spicata)で嗅覚疲労後の官能評価も試してみます!せっかくなので!笑

スペアミントはハッカペパーミントとは違いメントール(清涼感の素)を含まず、代わりにカルボンという清涼感無しでミント香を表す香り物質で構成されています。

樟脳による嗅覚疲労でこのカルボンも排除できるでしょうか?

ローズマリー・カンファーを嗅ぎ続けた後にミント精油ビンのフタを開けてみます。。。

すると、、、

甘さをまったくなほど感じずブラックメンソールガムのような香りだけがしていました。(カルボンは消えず、甘さだけが消えていた)

E N D

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エフゲニーマエダ(平成林業。)
若い人がどんどん減る地元【三笠市】もついに人口7000人台目前。 朝カフェやイベントスペースを兼ねたラベンダー園で今いる住民を楽しませ、雇用も生み出したい。そして「住みよい」を発信し移住者を増やして賑やかさを。そんな支援を募っています。 畑の取得、オイル蒸留器などに充てます。