慈悲の意味は、南方アジアの上座仏教では、「慈」は、「(人々に)利益と安楽をもたらそうと望むこと」であり、「悲」は「(人々から)不利益と苦を除去しようと欲すること」であると理解されている。これを漢字で表記すれば、「抜苦与楽」になる。この「抜苦与楽」こそが、慈悲の基本的な精神である。
この慈悲は、生きとし生けるものすべてに対して抱く純粋な愛情のことである。
私はこれこそが、well-being の基本的な精神だと思う。そしてこれがアドラー心理学の他者貢献の精神でもあるだろう。そして、この純粋な愛である慈悲の念は、世俗の愛憎とは全く異質なものである。何故なら世俗の愛憎は条件が変わればすぐに変わってしまう相対的な愛憎だからである。純粋な絶対的な愛情は、不変・清らかな愛情の謂いである。