目下、私が最近気になっていることについて、アメリカの人工知能研究所「Open AI」が開発した生成型AI「ChatGPT」と対話してみたやりとりを、以下にメモしておきたいと思います。
今回のテーマは「歴史的町並みについて」。
筆者の質問(以下「Q」)に、ChatGPTが回答(以下「A」)をしています。対話時のバージョンは「ChatGPT Jan 30 Version」及び「ChatGPT Feb 13 Version」(2023年)です。
▶︎Q1.「歴史的な町並みを残していく必要はありますか?」
▶︎Q2.「一部の住民が反対していたとしても、歴史的な町並みを残していく必要はあるのでしょうか?」
▶︎Q3.「国や地方自治体などが行う補助金政策の弊害について教えてください」
▶︎Q4.「歴史的町並みの保存は、行政ルール(法律、条例など)による建物外観の規制や修理費用の補助などにより行われることが多いです。行政ルールに頼らずに、住民自身の力だけで歴史的町並みを保存していくことはできないのでしょうか?」
▶︎Q5.「行政ルールに頼らずに、住民自身の力だけで歴史的町並みを保存しているまちの具体的な事例を教えてください」
▶︎Q6.「歴史的な町並みで暮らすメリットを教えてください」
▶︎Q7.「歴史的な町並みに暮らす住民を増やしていくためには、どのような方法が有効ですか?」
【Feedback / 生成型AIと対話をしてみて感じたこと】
今回、歴史的町並みについて、生成型AIにいろいろと質問をした理由。
それは現在、私が豊田市足助町の歴史的町並みに関わる仕事に携わるなかで、地域住民や行政職員の心の内に、さまざまな葛藤を感じたからでした。
歴史的町並みの保存については、国内外さまざまな手法によって行われていますが、日本国内で最も国家予算を投じて取り組んでいるのが「重要伝統的建造物群保存地区(以下「重伝建」)」という選定制度です。
重伝建とは、全国各地に残る歴史的な集落や町並みを守っていくために、各市町村が保存地区を決定し、条例を整備したもののうち、国(文化庁)が全国的にも価値が高いと判断したものを選定する制度。
令和3年8月2日の段階における重要伝統的建造物群保存地区の数は、全国で126地区104市町村にのぼり、これらの地区のうちの1つに豊田市足助町も含まれています。
この重伝建の制度をつかうと、保存地区内の建物を修理する場合などには、多額の補助金が充てられる一方で、その設計内容は歴史的町並みの景観を損なわないものとなるよう、比較的細かな制約条件(以下「許可基準」)があります。
補助金の上限額や保存地区内の許可基準については、各自治体の条例のつくり方によって違いはありますが、豊田市足助町の場合は、1棟あたり最大5,000万円もの補助金がもらえる基準となっています。
日本各地の歴史的町並みごとに、重伝建の選定を目指したきっかけや目的は異なるかと思いますが、多くの場合は、保存地区内の全ての住民に同意を得ることは難しいなかで、多額の補助金が得られることをひとつの口実にして、重伝建制度の利用に踏み切っているのではないかと思います。
その後、制度運用がはじまり、いざ補助金をもらって建物を修理しようと試みた建物所有者や設計者などからは「保存地区内の景観基準が厳しくて、自分の思った通りに家がなおせない」などの苦情が寄せられることになります。
それ以外にも、建物所有者から「古い建物を解体したい」「新しい建物を建てたい」などの要望があった際には、何とか思いとどまるよう説得したり、保存地区内の許可基準に見合う設計に変更してもらうなどの折衝が必要となってきます。
その他、元々古い建物が多い地域で少子高齢化も進行していくため、当然空き家の増加も目立ってくるなど、歴史的町並みを取り巻く地域課題は山積しています。
例えば、中世末期より約400年続く歴史的町並みで、全国的にも有名な重伝建のひとつである奈良県の橿原市今井町でさえも、地元メディアが以下の記事で取り上げているとおり、事態は深刻です。
私が現在関わっている豊田市足助町でも、重伝建に選定されてちょうど10周年を迎えた昨年度(令和3年度)、地域住民と行政が歴史的町並みの未来を一緒に考えていく活動を行いました。
もちろん前述した課題についても、さまざまな議論がありましたが、その対策の実施や成果の発現については、いまだ道半ばといったところです。
こうした歴史的町並みについての捉え方は、実際にそこに住んでいる人々の目線と、それ以外の人々の目線では大きく乖離があり、素直に議論しようとすることで、致命的な対立を生んでしまうことも多いように思われます。
こうした当事者性の強いセンシティブな議論が必要なケースにおいては、ChatGPTのような生成型AIを使った問答を行なってみるのも、割と有効なのではないかと感じました。