新たな市場で事業をつくる -緒方憲太郎 著『ボイステック革命』-
今年2021年は、音声SNSのClubhouseの日本上陸もあって、急激な盛り上がりを見せた音声市場。
この『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』という本は、音声業界という新たな市場で生まれた新規事業が、世界中の人々の生活習慣自体を徐々に変えつつあることを気づかせてくれます。
以下に、この本の読書を通じて気づいたことや感じたことについて、メモしておきたいと思います。
【Discovery / この本を読んで得られたこと】
この本の著書の緒方さんは、起業家として音声プラットフォームのベンチャー企業Voicy(ボイシー)の代表を務めるかたわら、ビジネスデザイナーという肩書きでベンチャー企業の経営相談なども手がけている方です。
そんな緒方さんが書いたこの本を読んで、主に以下の3つのことを感じました。
著者の考えや狙いをより深く知るためにも、関連するVoicyチャンネルもあわせて紹介しながら、整理していきたいと思います。
▶︎音声の時代がやってくる必然性
インターネットが世界中に普及して以降、世の中には数多くの情報と魅力的なコンテンツがあふれ、かつ簡単に手に入るようになりました。
皆さんは忙しい日々のなかで、いかに効率的に自分の必要とする情報やコンテンツを取得するのでしょうか?誰しも、1日は24時間と限られています。
世界中の情報発信者やコンテンツ制作者が、この可処分時間(個人が自由に使える時間)の奪い合いに奔走しています。
そうしたなかで、何か別のことをしながら「ながら聴き」ができる、音声の分野に注目が集まっていくことは、時代の流れとしても必然なのかもしれません。
実際に、近年ではGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)などのIT系大手企業の参入も相次ぎ、音声市場が活況している様子がみてとれます。
この本では、音声市場にまつわるさまざまな調査データを提示しながら、むこう数年間は確実にこの音声市場が成長していくはずだということを、論理的に説明していきます。
ちなみに緒方さんは、「ラジオポッドキャストみらい会議」というVoicy上の番組でも、音声業界の新しいニュースを題材としながら、これからの音声の未来についての考えを定期的に発信しています。
この本と番組をウォッチしていくと、音声市場の盛衰を、短期・中期・長期といったさまざまなタームにおいて、要点整理をすることができるのではないかと思います。
▶︎「本×音声」という組み合わせの可能性
この本には、随所にQRコードが載せてあり、その一部は「ボイステック革命」というVoicy上の番組へと繋がっています。
この番組では、プロローグやあとがきなどの内容が音声でも聴けるようになっています。
また、本の発売後も、あとがきを更新したり、プレミアムリスナー(月額制有料会員)限定の配信をしたりと、新たな情報を追加で発信することができます。
この本を購入してくれた読者との新たな関係性を生み出す方法として考えられた、音声プラットフォーマーの緒方さんならではのしかけです。
著者と読者との繋がりをさらに深めるこの方法が出版業界でも一般化すれば、本のつくり方や売り方自体も変わり、ひいては新たなビジネスモデルにもなり得るのではないか、という考えもあるようです。
最近では、書籍を朗読した音声コンテンツを販売するオーディオブックなども普及してきており、本と音声の新たな組み合わせの方法については、今後も注目していきたいところです。
▶︎新たな事業をつくっていくことの面白さ
この本では、音声(voice)とテクノロジー(technology)による、世の中の大きな変化の予兆が示されています。
同時に、この新たな市場の可能性を信じて、新規事業をつくっていくことの面白さ自体を感じさせる、ベンチャー起業家の緒方さんならではの個性が際立つ本にもなっています。
この緒方さんの新規事業に対する考えをさらに詳しく知るには、本人のnoteとVoicyをウォッチすると良さそうです。
また、Voicy代表の緒方さんに頼まれた「ベンチャー支援家K」という架空の人物が、最近のベンチャーニュースを辛口批評したり、新規上場企業の「Iの部(上場申請のための有価証券報告書)」の解説をしたりする、少々マニアックな番組を配信しています。
これらのSNSや音声コンテンツなどを通じて、ベンチャーの世界のダイナミックさや、新たな事業をつくるまでのプロセスを知ると、より一層この本を深く楽しめるのではないかと思います。
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以上の3つのことがらについて、それぞれに新しい発見がありました。
自身の活動に落とし込んでみても、新たなプロジェクトを立ち上げる際には、まずその背景にある市場の動向や人々の生活習慣などをある程度把握したうえで、そのプロジェクトの近未来の可能性を見極める必要があることを痛感しました。
音声という新たな市場の可能性を感じると同時に、そこで新たな事業を展開していくことの魅力も身近に感じられるような、とても熱量の高い1冊でした。
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