伝説の男
これは、とある男の話である。
ある街には、誰も近寄らない廃墟の病院があった。一時解体しようと業者が入ったが、すぐに辞退され、次の業者が入ったがまたすぐに…と数回繰り返したのちに解体自体をやらなくなった。噂では逃げるように撤退してあったため、機材やカルテなんかも残されているらしい。そういった廃墟は、廃墟マニアや心霊スポット巡りが好きな人、肝試しスポットとして人が行くことがあるが、誰も行こうとしない。まず、雰囲気が薄暗く怖いというのもあるが、2階より上がとんでもなく怖く誰も行けない、と周辺地域での噂があった。
ある日、お酒を飲んで酔った不良グループが酔った勢いで行くぞ!という話になった。行く時は、誰も行けない2階に行くぞ!みんな腑抜けなんだ!と声高々に叫びながら廃病院に行った。いざ着いてみると、雰囲気に飲まれて誰も中に行きたがらなかった。その中で1人だけ—山田先輩—が、
「お前らビビってんのか?ただの建物だろ。俺は行くからな!伝説達成してやるから見てろ!」
といい中に入っていってしまった。お酒を飲んだことによる高いテンションの声が外まで響いていた。
しばらくして山田先輩が持っていったライトが二階に行き動かなくなって消えた。あれだけ響いていた声も一切聞こえなくなった。それから数分は、怖くなって静かに廻ってるんだ、と思っていたが10分程すると流石におかしいと感じ始めた。2人ほどその場に残り、残り3人は中に入って探し始めた。それからまた数分したら中から声や物音が聞こえなくなった。もう何が起こっているのか分からなくなり、残った2人のうち1人が
「最後、俺が中に入って確認してくるからもし戻ってこなかったら佐藤先輩に連絡して来てもらって。いいな」
と言い中に入っていった。佐藤先輩というのは、腕っ節が強く男気あふれる、不良グループからも一目置かれる人だった。
最後に入った人の声も聞こえなくなった。中の様子も分からないまま連絡するのはどうかと思い少しだけ中に入ることにした。2階に行き、見てみると部屋の中から声がした。みんなでドッキリでも仕掛けてるのか、と中を見ると……
「うわぁ…すげぇ!デンセツだ!」
「デンセツだな!記録しないと!」
みんな口々にそう言い写真を撮っていた。何を撮っているのか、被写体を見ると自分のベルトで首を括ってぶら下がる山田先輩の姿だった。
「あんた達なにやってんですかぁ!!!」
そう絶叫したら、それまでバシャバシャ撮っていた手を止め、こちらを見てもう一度被写体を見た。そして、そこからはみんな絶叫してその場から逃げ、警察へ連絡した。
結局、その先輩の突発的な自殺ということで処理された。警察も現場に来ると嫌そうな雰囲気で中に入り事故処理を行なっていた。
そして、山田先輩はデンセツとなった。その地域の都市伝説として語り継がれる話となって……
[終]
この話は怖い話のツイキャス"禍話"[禍話 第二夜(1)]で話されていた"首頭地蔵"を文章化したものです。
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