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飛び降り自殺は事故物件となる?会社には従業員の自殺を防ぐ義務がある?

遺品整理現場での知っ得シリーズ

本日は事故物件の相談でも多い、飛び降り自殺のような部屋と亡くなった場所が異なるケースにおいて事故物件になるのか?という話しです。

はじめに

賃貸物件などで事故物件と呼ばれる経緯には様々なものがあります。自殺や殺人はもちろん、火事などの事故でも事故物件と呼ばれます。

一般的には普通の人だったら「ちょっと気持ち悪くて嫌だな」と思うような状況の場合は事故物件となる可能性が高いといえるでしょう。法律用語としては「心理的瑕疵」と呼ばれるものですね。

上のように「事故」の要因となる状況は沢山ありますが、自殺に関する相談の中で良く聞かれるものとして、「室内から飛び降り自殺をして、死んだのは敷地外(又は病院)だった場合は事故物件となるのでしょうか?」という相談です。

飛び降り自殺の判例はいくつかありますが、今回は自殺した場所以外にも会社の従業員が事務所として借りていたビルの共用部分(ただし、普段は専有使用状態)から飛び降りをして公道上で亡くなった事例がありますので、会社に従業員が自殺をすることを防ぐ義務があったかどうかも併せて考えてみたいと思います。

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公道上への飛び降り自殺は事故物件となるのか?


上のイメージを見て頂くとなんとなく状況は分かって頂けると思いますが、ある会社が事務所スペースとして借りていたビルから従業員が飛び降り自殺をして公道上で亡くなったという事案です。

この事例では様々な争点がありますが、ここでは詳述は避けてポイントだけの紹介とさせて頂きます。

詳しく知りたいかたは「東京地方裁判所 平成27年(ワ)第7569号 損害賠償請求事件」をご確認ください。

この場合まず問題となるのが、飛び降り自殺という状況で実際に死亡した場所が敷地外の公道上であることが、賃貸物件でいうところの事故物件となるのか?ということです。

これは過去にも普通の賃貸アパートなどで飛び降り自殺が起きたケースでの判例もありますが、私が確認した判例ではどれも、死亡した場所が敷地外(又は病院)であったとしても、飛び降りた箇所が当該建物内に存在する以上、心理的な嫌悪感は感じるもものだとして、一般的に言うところの事故物件になるとしています。

確かに死亡した場所は室内ではなく、敷地外の公道上などではありますが、次に借りようと思っている人が、「ここから人が飛び降り自殺をしました」と聞いたらどう感じるか?ということですね。

一般的な感性の持ち主でしたら、少なくても「ええぇ~、そんな事があったんですか、、、、」と多少の嫌悪感や忌避感は感じるのが普通だと思われます。

少なくても、同じ間取り、同じ賃料で募集されているのでしたら、そういった特殊な事情が無いを方を選ぶでしょうから、やはり、たとえ死亡した場所が敷地内でなかったとしても、自殺の起点が室内にあることが賃貸物件を貸し出すにあたり心理的瑕疵にあたると考えられているということですね。

住居用マンションと事務所用ビルで扱いは変わるのか?


上で紹介した判例が他の飛び降り自殺の判例と異なるのが、飛び降りたマンションが事業用のマンションということです。

事業用のマンションですから、一般的な住居として利用する訳ではありません。

ですので、住居用のマンションと違い、仕事をする為のスペースであり、落ち着いた生活を過ごす場所ではないという違いがあります。

そういった、単に仕事をするだけのスペースである事業用のマンションでの飛び降り自殺が、住居用のマンション等と同じように心理的瑕疵が発生するのか?という部分も争点となりました。

結論から言うと事業用のマンションであっても心理的瑕疵になるとしています。

判例では「当該建物が、そこで寝食を行うような居住用物件である場合により顕著であると考えられるところではあるが、本件建物のような事務所用物件であっても、一定時間滞在して仕事をする場所である以上、同様に上記嫌悪感ないし抵抗感等は生じるといえ、やはり心理的損傷と捉えることができるものである。」(上記判例一部抜粋)としています。

つまり、いくら事務所用の建物といっても、仕事をするのに長時間がその場所にいるわけだから、住居用の建物ほどではないにしても気持ち悪く思うのは当然だよね。ということです。

会社には従業員の自殺を防ぐ義務があるのか?


上で紹介した判例のもうひとつ争点として、「会社に従業員の自殺を防ぐ義務があったのか?」ということです。

自殺をしたのは従業員であり、事業用マンションに心理的瑕疵による損害を発生させたのも従業員であるなら、責任を取るのは従業員個人であって、会社にその責任はないんじゃないの?という部分での争いです。

従業員の責任は会社の責任だろ!と思わなくもないのですが、従業員が行った行為の責任を全て会社が負うというのでは業務と全く関係のない部分まで会社が責任を取らされる可能性がありますので、ここは当然に問題になる部分ではあります。

今回紹介した判例においてはという事になりますが、会社には従業員が自殺を防ぐ義務があったとしています。

もう少し判例に沿って言うなら、賃貸物件の契約書には、借主は建物に損害を及ぼす行為をしてはいけないと記載されており、そうであるなら、会社としては従業員が飛び降り自殺などをして本件建物の価値の下落をするような行為はさせないようにする義務があった。

であるなら実際に従業員が飛び降り自殺した事による建物価格の下落の責任は会社に義務違反があった為発生した。としています。

これって、結構重要な点ですよね。ブラック企業、うつ病、過労死などと労働者の働く環境の改善が叫ばれるなか、そういった労働環境の改善に取り組まず、従業員を自殺に追い込むような企業は、結果としてその責任を負う可能性もあるということを示した判決だとも考えられます。

※会社には自殺を防ぐまでの義務はないとした判例もありますので、事案ごとに結果が変わる可能性がございます。

まとめ


①飛び降り自殺の場合のような自殺の起点と結果(入居者死亡)が起きた場所が異なるようなケースで、室内で死亡していなかったとしても事故物件となりうる。

②上記の考え方は住居用マンションでも事業用マンションでも同じように心理的瑕疵が発生すると考えられている。

③従業員が起こした自殺などによる建物価値の下落については、雇用している会社がその責任を取らなくてはいけなくなる可能性がある。

遺品整理・死後事務のご相談は名古屋の第八行政書士事務所までどうぞ~

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