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モンスターハンターひろゆき
灰色の薄暗い森の奥から、低くうなりを上げる声が聞こえてくる。そこには、ぞろぞろと群れを成すゴブリンたちの姿。彼らは狡猾で凶暴、しかも人間への悪意が強い。だが、そのゴブリンたちにとってはまさに“厄災の日”が訪れつつあった。
なぜならそこへ、クロスボウを片手に、軽やかな足取りで進む一人の男がいたからだ。その名は“ひろゆき”。ネット界隈での論破王として有名な彼は、なぜかこうして荒野を放浪しながら、ゴブリン狩りを生業としていた。
「さーて、今日も楽しくやりますかね」
彼は淡々とした口調でそうつぶやくと、腰につけた革袋から奇妙な装置を取り出した。それは複数の歯車と仕掛けが連動し、スイッチを押せば一定時間後に発火する、特製の“煙幕用爆弾”だ。
「正面から行ってもいいけど、ゴブリンは集団戦になると面倒なんだよなぁ。ま、立ち回りさえ考えれば楽勝だけど」
ひろゆきは森の中に点在する木々の配置を一瞥し、獣道のような細い通り道を確認する。そこがゴブリンの行動ルートだ。まずはゴブリンを誘導するための罠を仕掛け始める。
硬い木の枝や蔦を利用した簡単な落とし穴。地面に埋め込むトラバサミのようなもの、そして煙幕を発動させるための小型爆薬。それぞれを相互に連動させ、敵が踏んだ瞬間、わずかの遅延で煙が噴き出す仕組みだ。
「…よし、これで準備はオッケー。あとはいかにうまく誘導するか」
ひろゆきは森の奥へと進み、グルルと唸るゴブリンたちの視界にわざと入った。敵は彼を見つけると憎々しげに叫ぶ。ゴブリンの群れは素早く動き、ひろゆき目がけて一斉に突進してきた。
「はいはい、分かったから落ち着いて」
ひろゆきはゴブリンたちの足音を確かめつつ、軽快に数歩後退して誘い込む。先ほど仕掛けたトラップの方向へと少しずつ敵を誘導していくのだ。その途中、ゴブリンの一匹が投げ槍を放ったが、ひろゆきは紙一重でかわす。
「投げ槍なんて流行らないですよ。ねぇ?」
そう言いつつ軽く肩をすくめたその瞬間、先頭を走っていたゴブリンがひろゆきのトラップを踏む。カチリという音とともに地面から鋭いツメが飛び出し、ゴブリンの足首をガチリと噛みしめた。
悲鳴を上げるゴブリン。仲間も思わず足を止める。だがその遅延こそが狙いである。
「そろそろですね」
ひろゆきがニヤリと笑うと、設置しておいた罠が連鎖的に作動し、辺りには瞬く間に濃い煙が立ち込めた。視界を失ったゴブリンたちは混乱に陥る。くぐもった罵声があちこちから聞こえるが、相手の姿は見えない。
「煙幕の使い方くらい学んでおいてほしいものですね」
そんな冷静な声とともに、煙の中をすり抜けるように姿勢を低くしながら、ひろゆきはクロスボウを構える。鋭いクロスボウの矢が、ゴブリンの喉元を的確に射貫く。急所を射られたゴブリンはうめき声をあげて倒れ込んだ。
他のゴブリンたちも煙をかき分けながら必死に周囲を探るが、音もなく忍び寄るひろゆきの影すら見つけられない。煙幕の密度が薄れ始めると、視界の利き始めたゴブリンがひろゆきに気づき、短い剣を振りかぶった。
「あーはいはい、残念でした」
しかしもう一瞬遅い。ひろゆきの右手はすでにクロスボウの次弾をセットし終えていた。引き金を引くと、低く鋭い駆動音とともに矢が放たれる。ゴブリンの胸を貫いた一撃が致命傷となり、そのまま倒れ込んで動かなくなった。
残った数体のゴブリンは、罠にはまったままの仲間を見捨て、慌てて森の奥へと逃げようとする。だがそこにも抜け目なく仕掛けられた別のトラップが待ち受けていた。木の上から垂らされた縄がゴブリンの足に絡みつき、逆さ吊りの状態で宙にぶら下がる。
「いやー、こういうのは冷静に対処してほしいんですよね。もっと“論理的”に考えればいいんじゃないですか?」
最後のゴブリンが涙目で抵抗するが、ひろゆきは一瞬の隙も与えずにクロスボウの矢で仕留める。短く息をつくと、あたり一帯に散らばる無力化されたゴブリンの姿が目に入った。
「さて、これで一段落ですかね」
煙が晴れつつある森の中で、ひろゆきは仕掛けた罠を確認しながら、念のためゴブリンが生き残っていないかをチェックする。すべて片付いたのを確認すると、彼は小さく息をついて、肩にかけていたクロスボウを背中へ回した。
こうしてひろゆきは、華麗にゴブリン狩りを成功させたのだった。罠と煙幕を巧みに使いながら、的確な射撃で仕留めていくその姿は、まさに“論破”で敵を追い込むごとく隙がない。
「さて、今日はどの酒場で一杯やろうかな」
と、満足そうにつぶやきながら、また次なる“論破”ではなく次なる“狩り”の地へと、彼は足早に姿を消していったのだった。