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ひろゆきのファイナルファンタジーXII



ひろゆきのファイナルファンタジーXII

~「いや、そもそも飛空艇に乗るのってコスパ悪くないですか?」編~

プロローグ

「え、ちょっと待ってくださいよ。ここが“イヴァリース”っていう異世界? しかも帝国が侵略してくるとか、めちゃくちゃ物騒じゃないですか。そもそも論として、こんなところに巻き込まれるコスパが見当たらないんですけど」
 僕――ヒロユキ・ニシムラは、なぜかイヴァリースの地に来てしまっていた。アルケイディア帝国やら、ダルマスカ王国やら、空を飛ぶ船やら、どれを見ても現実離れした光景が広がっている。

第一幕 ヴァンとの出会い

 砂漠に近い街・王都ラバナスタをうろついていると、小柄な青年ヴァンが話しかけてきた。
「ねえ、お兄さん、もし迷ってるなら俺と一緒に行かない? 帝国から町を取り戻したいんだけど、人手が足りないんだ」
「いやいや、そもそも帝国相手に戦うなんてリスクしかないでしょう。命がいくつあっても足りなくないですか?」
 僕が即座にツッコミを入れると、ヴァンは困ったように笑う。
「でも、放っておいたらダルマスカはずっと帝国の支配下だよ。それに、俺は空賊になるのが夢なんだ。大空を自由に飛び回るって、最高じゃないか」
「夢とかロマンは否定しませんけど、現実問題として飛空艇って維持費かかりません? 燃料代とか、整備とか、それこそ盗んだら犯罪だし……」
「……言われてみればそうかもしれないけど。まあ、ひろゆき、フランスってとこから来たんだろ? そっちの価値観はわからないけど、行く宛がないなら一緒に来てよ!」

第二幕 バルフレアとフラン、そしてアーシェ

 ヴァンに連れられ、いかにも軽妙な空賊の男・バルフレアと、その相棒でヴィエラ族の美女フランに出会う。バルフレアは狡猾そうな笑みを浮かべて近づいてくる。
「へぇ、珍しい客人を連れてきたな。俺は“この物語の主人公”バルフレア。そっちのフランス帰りのお兄さんは何者だ?」
「いや、僕はただの一般人ですよ。ネットもスマホもない時代だし、マジで辛いんですけど……」
 するとヴィエラ族のフランが、低い声音で言う。
「ネット……? この世界では聞いたことがないわ。情報収集なら帝国の兵士を出し抜くほうが早いわよ」
「いや、情報収集がそもそも命懸けとかヤバすぎませんか?」

 さらに、亡国の王女アーシェまで登場して、こちらに切実な眼差しを向けてきた。
「帝国からダルマスカを解放するために、どうしても協力が必要なのです。ひろゆき殿、あなたも力を貸していただけないでしょうか」
「アーシェさん、そんな丁寧にお願いされても困りますよ。そもそも、僕に戦闘能力とかないんですけど?」
「……あなたの“意見”は、きっと私たちに新しい視点をもたらしてくれるはずです」

第三幕 帝国の脅威と“そもそも”論

 一行は西へ東へ飛空艇で移動しながら、帝国が利用している“魔石(ネフェシサイト)”や“オキューリア”の謎に迫る。
 しかし、どこへ行っても帝国軍の将軍や恐ろしげな“ジャッジ”が立ちはだかり、命の危険が頻繁に訪れる。
「だから言ったじゃないですか、こんなの死にゲーですよ。せめて“ジャッジ”たちも話し合いに応じてくれればいいのに……」
 僕のぼやきに、ヴァンは汗をかきつつも必死に応戦する。後ろではアーシェが祈るように剣を構え、バルフレアは洒脱に銃を撃ち、フランが華麗に跳躍して弓を放つ。
「ヒロユキ、あんたは口で援護してくれ! どうする? 逃げる? それともジャッジを倒して突破する?」
「いや、戦闘前に逃げられるなら逃げたいですよ。そもそも彼らが鎧着てるし、こっち素肌多いじゃないですか。防具買うお金どこにあるんです?」
「借金してでも強くなるんだよ!」
「いや、やっぱりコスパ悪すぎ……!」

第四幕 ロザリア連邦、そして空中都市

 帝国の陰謀を暴こうとする過程で、ロザリア連邦や魔石研究の闇、空中都市“ギルヴェガン”などを巡る冒険が待ち受けていた。移動にはバルフレアの愛機“ストラール”が不可欠だ。
 ある日、整備中の飛空艇を前に、僕は思わず思案する。
「バルフレアさん、こんな巨大な飛空艇、維持費はどうしてるんですか? 燃料代とか停泊料金とか……」
「そこは腕次第だ。俺は空賊だからな、多少のリスクを承知で華麗に稼いでるってわけさ」
「んー、空賊って強盗ですよね? 犯罪じゃないですか? 堂々と自慢されても困るんですけど……」
 そう突っ込むとバルフレアがニヤリと笑う。
「お前さん、本当に不思議なヤツだな。イヴァリースのことを全然わかっちゃいない。まあ、そこが面白いんだろうが」

第五幕 終局の戦いへ

 結局、ガブラスやヴェインら帝国の強敵を突破し、アーシェはダルマスカ再興のために“聖石”を手放す決意を固める。
 最終決戦の直前、僕はアーシェに尋ねる。
「そもそも、“力”を捨ててでも国を取り戻したいってのは理解できますけど、強大な力をあえて捨てるメリットって何なんです?」
「私の祖国は、民たちの自由と誇りを守ることで成り立ってきました。力に溺れては、それを失うことになる。……私にはそれがわかるのです」
「なるほど……。リスクを承知で決めるんですね。まあ、コスパとか言ってる場合じゃないということか」
 バルフレアとフランは横から口をはさむ。
「そろそろだぜ、アーシェ。飛空艇に乗り込んで帝国の巨大船“バハムート”へ突入する。お前ら、覚悟はいいか?」
「え、僕も行くんですか? まあ……ここまで来たら最後まで見届けたくはありますけど……死ぬの嫌ですよ?」
「何度も言うが、ここに来た時点で“ラクな道”はねぇよ」

エピローグ そしてパリのカフェ

 壮絶な激闘の末、ヴェインの野望は打ち砕かれ、ダルマスカ王家は国を取り戻す。アーシェは女王として新たな道を歩み始め、ヴァンは空賊への第一歩を踏み出し、バルフレアとフランは自由の空を駆け巡る。
 僕はというと、戦闘中の混乱で“時空の綻び”みたいなものに飲み込まれ、気づけばパリの街角。
「はぁ……帰ってきた……。いや、ネットが使えるって最高ですよね」
 すぐ近くのカフェに入り、カプチーノを注文しながらスマホを取り出す。画面には“イヴァリース”や“飛空艇”なんてワードを検索してみるが、もちろん何もヒットしない。
「やっぱりあっちの世界は“ファンタジー”ってことなんでしょうか? でも、あの空賊コンビとか、王女アーシェさんとか、すごく人間味があった気がするなぁ」
 視線を窓の外に向けると、夕陽が街を黄金色に染めていた。まるでイヴァリースの空に浮かぶ飛空艇が、すぐそこにあるように感じられる。
「コスパは悪かったけど、なんか悪くない冒険でしたよね……。またいつか、あっちの世界に呼ばれたりするんでしょうかね?」
 そう呟いて微笑み、カプチーノをひと口。思い出すのは、飛空艇から見下ろした広大な砂漠と、“そもそも”を超える仲間たちの強い意志。計算じゃ割り切れないものに出会った僕は、ほんの少しだけ胸を熱くしながら、静かにパリの夕暮れを見つめ続けるのだった。

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