物語:9mmパラベラム弾をめぐる零細勢力の挑戦
物語:9mmパラベラム弾をめぐる零細勢力の挑戦
1. プロローグ:9mmパラベラム弾の重要性
20XX年。
治安が乱れ、中間層が崩壊した世界では、主流の自動拳銃やサブマシンガンが使う9mmパラベラム弾が、様々な勢力にとって不可欠な存在となっていた。かつては闇市場や軍放出品で比較的容易に入手できたこの弾薬も、物流が途絶え、国際的な取引が難しくなる中で極端に不足。
そこで零細武装勢力は独自の方法で9mm弾を調達・自作することに迫られ、あらゆる手段を模索し始めた。
ある勢力のリーダーの言葉
「9mmがなけりゃ、俺たちの護身にもならない。作るにしても、それなりにリスクがあるぜ。」
2. 入手ルートを失った9mmパラベラム弾
1. 闇市場の枯渇
• 中央政府の崩壊、港湾を支配する海賊帝国、各地方軍閥による支配などによって、海外からの弾薬密輸ルートが次々と断絶。
• 僅かに残る闇市場でも価格が高騰し、零細勢力には到底手が出ない。
2. 警察・軍残党との取り引き
• 旧政府の装備を持つ警察や軍の残党が闇取引に関わる場合もあるが、数が少なく危険度が高い。
• 新型ヤクザや大規模軍閥が仕切る取引には、零細勢力が付け入る余地がほとんどない。
若き戦闘員の声:
「どこを探しても9mmが見つからない。見つけても、桁違いの値段を吹っかけられるって話だ。」
3. 非効率ながら進められる自作計画
a. 自作9mmパラベラム弾の難しさ
1. 必要な材料
• 薬莢: ベルダン型やボクサー型の古い薬莢を再利用。金属加工で外形を整え、プライマー(雷管)部分の加工が最大の難所。
• 雷管: メタルマッチ粉末や硝酸水銀(雷汞)などを工夫して自作。非常に不安定で危険。
• 火薬: 黒色火薬や簡易な無煙火薬を配合して作るが、安定燃焼を確保するには高度な知識が必要。
• 弾頭: 鉛や合金を溶かして型に流し込む。ジャケット化するには銅板や鉄を加工しなければならない。
2. 安全性の問題
• 燃焼圧や弾頭の圧入がずれると、銃が暴発したり弾道が安定しなかったりするリスクが大きい。
• 作業場は火気厳禁かつ換気の良いスペースが求められるが、零細勢力の拠点は設備不足が常。
技術者の声:
「作れるには作れるが、正直危なすぎる。失明や指を吹き飛ばす奴も出かねない。」
b. それでも作る理由
1. サバイバルの必須手段
• 9mmパラベラムは短銃やPCC(ピストルカービン)で扱いやすく、零細勢力にとっては汎用性が高い。
• 他勢力との小競り合いを生き抜くため、多少のリスクを承知で自作に踏み切るのだ。
2. 少量生産で凌ぐ
• 大量生産は危険すぎるため、必要なぶんだけ製造して消費する“手工業”レベルの生産スタイルを取る。
• 作り手の熟練度や勘が頼りになるが、失敗が致命傷を生む環境にある。
共同体リーダーの言葉:
「これが効率的か?まさか。でも、どうしても必要なんだ、俺たちが生き残るために。」
4. 自作9mm弾の製造プロセス(物語的描写)
1. 薬莢の収集と再成形
• 戦場跡や廃棄された警察・軍の倉庫から拾った薬莢を一つひとつ洗浄。
• 形の歪んだものは金属プレスと簡易旋盤で整形し、口径を再調整する。
2. 雷管(プライマー)の自作
• メタルマッチの粉末や雷汞を少量ずつ細心の注意で混合し、アルミや銅板を丸く成形したプライマーカップに詰め込む。
• 焼き入れ温度や圧縮度合いが少しでもずれると暴発リスクが高まる。
3. 火薬の配合と弾頭装填
• 黒色火薬と自家製無煙火薬の調合を試しながら、燃焼圧を安定させるレシピを探る。
• 弾頭は鉛インゴットを溶かして型に流し込み、ジャケットはある場合とない場合がある。
• 弾頭と薬莢を圧入する際、一定の押し込み長を維持しないと弾道が不安定になる。
4. テストと改良
• 試しに一発撃ってみる作業は常に命がけ。失敗なら銃が破損するか手が吹っ飛ぶかもしれない。
• 成功すれば弾薬が“使える”ことが判明し、小規模に同じロットを製造してストックする。
職人のぼやき:
「成功率は6~7割か……十分とは言えねぇが、使わなきゃ始まらねぇんだ。」
5. 弾薬を巡る争いと物語の行方
1. 他勢力からの狙い
• 新型ヤクザや海賊帝国、軍閥などの大規模組織も9mm弾を欲しがり、零細勢力の工房を強奪しようとする可能性が高い。
• それに備えて共同体は弾薬を一箇所に集めず、複数の隠し場所を用意している。
2. 流通の難しさ
• “完成品”を売るには危険が多く、作った弾薬は基本的に自前の防衛や戦闘で消費。
• 闇市に出せば高値になるが、追跡リスクも増し、大勢力に目をつけられる恐れがある。
闇商人の声:
「自作9mm?こりゃ面白い。仕入れさせてくれれば、いい値段で売れるぞ。でも、命の保証はできねえがな。」
6. 結び:自作弾が映すもの
自作9mmパラベラム弾は、その危険性や非効率性にもかかわらず、零細勢力にとって生き残りの要となる。
同時に、それは社会全体の破綻を象徴する“歪んだイノベーション”でもあった。元の世界が正常に機能していれば、こんな危険な行為を誰が望むだろうか。だが、今は現実問題として、誰もが武器を持たなければならず、安全を保証する制度が崩壊しているからこそ、零細勢力は命がけで弾薬を作り続ける。
――自作の9mm弾を携え、荒廃した世界を生き抜く者たちの物語。