ひろゆきとグラップラー刃牙〜「オイオイオイ」「死ぬわアイツ」
「ひろゆきとグラップラー刃牙 第1話（パロディ）」
ある地下格闘場。青白いライトが不気味に照らし出すリングでは、無数の観客が血を求めて叫んでいる。
その観客の一角、なぜかグレーのパーカーを着てクロックスを履いた男が佇んでいた。男の名はひろゆき。雰囲気にそぐわない軽装で、なんだか浮いているが、どうしてここにいるのか自分でもよくわからないらしい。
「えー、どうも、僕ひろゆきって言います。ここって地下格闘場ってやつですか？ なんだかコスパ悪そうな場所ですよね……時給換算的に怪我したら赤字じゃないですか」
ひろゆきは首を傾げながらリングを眺める。そこに姿を見せたのが“範馬刃牙”。まだ幼さの残る少年のような体躯だが、筋肉は研ぎ澄まされ、瞳には闘志が宿っている。
すると、その姿を見た周囲の観客から声が上がる。「おいおいおい、死ぬわアイツ……」——有名な台詞が耳を突き抜ける。巨大な対戦相手が出てきて、刃牙を圧倒するかのようなオーラを放っているのだ。
ひろゆきは思わず、「オイオイオイ、死ぬわアイツ？」と半笑い。「それってあなたの感想ですよね？ 本当に死ぬかどうか、データあるんですかね……」
周囲のファンたちは「シーッ！ 黙れ。うかつに口出しすると巻き込まれるぞ」と制するが、ひろゆきは「えー、やめてもらっていいですか？ こういう危険な試合、見てるだけでヒヤヒヤするんですけど」とさらに声を上げる。
戦いの火蓋が切られると、あの“巨大な対戦相手”が豪腕を振るい、刃牙を殺しにかかるかの如きラッシュを仕掛ける。
「オイオイオイ！ ホントに死ぬってば……！」周りは怯え、悲鳴が上がる。しかし、刃牙は見事なステップでかわし、一瞬のカウンターを叩き込み、相手を地面に沈めてしまう。その圧倒的な実力に場内が湧き立つ。
「す、すごいですね……」ひろゆきは目を白黒。「時給換算で言ったら一瞬で終わりましたね。意外とコスパいいかもしれない……」
さらに刃牙がリングを降りるやいなや、係員が“炭酸抜きコーラ”を差し出してくる。これは刃牙愛飲のメニュー（？）と言われる、鍛錬後の炭酸抜きコーラ伝説のやつ……かどうかは分からないが。
観衆の一人が「ほう、炭酸抜きコーラですか……たいしたものですね」と呟き、会場の別のファンが「そりゃあ、炭酸を抜くことで胃に負担をかけず糖分を——云々」と解説し始めると、ひろゆきが口をはさんで「あー、それってエビデンスあるんですか？ 栄養学的にどうなんでしょうね？」と疑問を投げかける。
すると、近くにいた謎のマッチョ観客が「オイオイオイ、そういうヤボな質問はやめろよ……死ぬわアイツ」と小声で言い出し、場は微妙な笑いに包まれる。
刃牙は炭酸抜きコーラをひと口啜ってからひろゆきに向き合い、「コスパ？ 時給換算？ なんだか変わった考え方だね」と声をかける。ひろゆきは恐縮しながら「いや、ほら、危険を犯す割にリターンが曖昧だと損じゃないですか？ 格闘技なんて怪我したら……」と答えるが、刃牙は苦笑いして「どうしても闘わなきゃいけない奴がいるんだ」と言うのみだ。
「それってあなたの感想ですよね？」と切り返そうとするひろゆきだったが、こらえるように一息ついて、「……まぁ、やめておきます」と呟く。「刃牙さん、あなたにはあなたの戦いの理由があるわけですよね。わかんないですけど……」とどこか納得した風。
試合が終わり、観客たちは大興奮のまま帰り始める。「オイオイオイ、あの若者強すぎるだろ……」「死ぬわアイツ、とか言ってたけど全然死なないじゃん！」と笑い声が絶えない。
ひろゆきはリングを眺めながら「いや、さすがに底知れない……。ほんと、やめてもらっていいですか、こんなガチ戦闘ばっかり。こわいんで」とハラハラが収まらない。
そこへ突然、また別のファイターがリングに上がり「次の試合だ！」と叫ぶらしい。観客がさらに盛り上がる中、ひろゆきは首を振って帰る支度。「もういいです……これ以上見ても時給換算で何も得られないですよ。やめときますね」とそっと会場を後にする。
刃牙は遠巻きにその姿を見送り、「変わった人間がいたもんだ」と炭酸抜きコーラをもう一口飲む。彼の表情はどこか苦笑い。「コスパ……時給換算……ふん、そういう生き方もあるのかな」と呟き、次の闘いへ心を切り替える。
こうして一瞬だけ“グラップラー刃牙”の世界へ滑り込んだ“ひろゆき”。第1話の名台詞「オイオイオイ、死ぬわアイツ」「ほう、炭酸抜きコーラですか…たいしたものですね」を取り巻くシーンに、やや時給換算論を混ぜて混乱を招いたが、結局彼は何事もなく（？）会場を去っていった。
後に観客が「あのパーカー男、何だったんだろう……」「論破とか言ってたけど、結局論破したのか？」と首をかしげるが、答えは誰にも分からない。最後にただ一言、「やっぱり刃牙世界はコスパ悪くてやめてもらいたい」と呟くひろゆきの姿だけが闇に消えていた。