見出し画像

2010~2020年代にアメリカの政治・外交分野で活動し、東欧系ユダヤ人の出自をもつ、かつ「ネオコン(新保守主義)」的な政策・思想に近い人物

以下では、2010~2020年代にアメリカの政治・外交分野で活動し、東欧系ユダヤ人の出自をもつ、かつ「ネオコン(新保守主義)」的な政策・思想に近い人物を中心にリスト化する。ネオコンの定義は学説や本人の政治的立場によって揺れがあり、必ずしも全員が「自らをネオコンと公言している」わけではない点に留意されたい。また、公職での役職とシンクタンク・メディア等での影響力を分けて記載する。

1. エリオット・エイブラムス(Elliott Abrams)
• 東欧系出自:
父方の家系がロシア帝国(東欧)出身のユダヤ移民。
• 主な役職(2010~2020年代)
• ジョージ・W・ブッシュ政権(2001-2009)で国家安全保障会議上級職を歴任後、オバマ政権期(2009-2017)には政府ポストに就かなかったが、保守系シンクタンクや外交専門誌で影響力を保持。
• トランプ政権下で
• 2019-2021年: 国務省特別代表(ベネズエラ担当)
• 2020-2021年: 国務省特別代表(イラン担当)
• ネオコン的特徴:
1980年代のレーガン政権から一貫して強硬な対外介入(中南米・中東)を推進してきた。イラク戦争、対テロ戦争にも積極関与。

2. ヴィクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland)
• 東欧系出自:
父方がウクライナ系ユダヤ人(Nudelman 家系)で、東欧出身。
• 主な役職(2010~2020年代)
• 国務次官補(欧州・ユーラシア担当)(Assistant Secretary of State for European and Eurasian Affairs)
• オバマ政権下 (2013-2017)
• (2021年以降はバイデン政権で**国務次官(政治担当)**に就任)
• ネオコン的特徴:
ブッシュ政権時代(2000年代)にも国家安全保障担当副大統領補佐官などを歴任し、共和党・民主党を超えて強硬な対ロ路線、東欧・中東での積極外交を支持する。夫妻のロバート・ケイガン(後述)とともに「介入主義」的外交思想で知られる。

3. ジョー・リーバーマン(Joe Lieberman)
• 東欧系出自:
両親ともポーランド・オーストリア系ユダヤ人の家系。
• 主な役職(2010~2020年代)
• 1989-2013年: 上院議員(コネチカット州選出)
• 民主党→無所属(インディペンデント・デモクラット)へ移行
• 2013年に引退
• ネオコン的特徴:
党派を問わず強い対外介入を支持し、イラク戦争支持、対テロ戦争推進で共和党の新保守派とも親和性を示した。2010年代前半までは上院議員として国防・外交分野で大きな影響力を持ち、いわゆる「リーバーマンは民主党にいるネオコン」と評された。

4. ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner)
• 東欧系出自:
父方(チャールズ・クシュナー)の家系はベラルーシ系ユダヤ人で、ホロコーストを逃れて米国に移住。
• 主な役職(2010~2020年代)
• 大統領上級顧問(Senior Advisor to the President) トランプ政権 (2017-2021)
• ネオコン的特徴:
厳密には「伝統的ネオコン」とは異なるが、中東政策(パレスチナ問題や対イラン)ではリクード系イスラエル右派と協調し、強硬・保守路線を後押し。対イラン強硬策、アブラハム合意(中東の親米国家連携)などを推進。親イスラエル姿勢は強固で、実務面ではネオコン色とオルタナ右翼色が混在するトランプ政権内で一定のブレーン役。

5. ロバート・ケイガン(Robert Kagan)
• 東欧系出自:
父ドナルド・ケイガン(リトアニア系ユダヤ人)
• 主な活動(2010~2020年代)
• 政府公式ポストよりもシンクタンク(ブルッキングス研究所など)や外交論壇での影響が大きい。
• 1990年代にネオコンの拠点「新アメリカ世紀プロジェクト(PNAC)」を共同設立し、イラク戦争推進、対ロ強硬策を提唱。
• ネオコン的特徴:
妻のヴィクトリア・ヌーランドとともに、軍事力を含む強権的介入で民主主義・自由主義秩序を拡大する思想を持つ。トランプ政権下では一部距離を置いたが、対ロ・対中強硬路線は維持。

6. ビル・クリストル(William “Bill” Kristol)
• 東欧系出自:
父アーヴィング・クリストルは東欧系ユダヤ人の移民二世
• 主な活動(2010~2020年代)
• 政府公職ではなく、保守系メディア・政治アドバイザーとして活動
• 『ウィークリー・スタンダード』編集長、後に『ザ・ブルワーク』などでトランプ政権批判を展開
• ネオコン的特徴:
1990年代以降のネオコン論客を代表する一人。トランプ政権には反対したが、対外介入主義や中東政策での強硬姿勢は一貫。

7. その他注目すべき東欧系ユダヤ人の保守・強硬派
• マックス・ブート (Max Boot)
ロシア系ユダヤ人出自で、『ワシントン・ポスト』などで軍事・安全保障に関する強硬路線を提唱。政府の公式ポストよりも言論活動中心。
• ダニエル・パイプス (Daniel Pipes)
ポーランド系ユダヤの家系。中東・イスラム研究でイスラエル右派や米国の対イスラム強硬策を主張し、ネオコン色が強いが、直接の政府要職は少ない。
• エリオット・A・コーエン (Eliot A. Cohen)
東欧系ユダヤ人家系とされる。ブッシュ(子)政権末期の国務省顧問などを歴任。2010年代も言論界・シンクタンクで対外強硬策を支持。

結論

2010~2020年代において、アメリカ政治・外交の現場で一定の発言力をもち、「ネオコン」的外交・軍事観を掲げる東欧系ユダヤ人としては、以下のような流れが見てとれる。
1. 政権内ポストを担った人物
• エリオット・エイブラムス(トランプ政権で国務省特別代表)
• ヴィクトリア・ヌーランド(オバマ政権で国務次官補、バイデン政権下で国務次官)
• ジョー・リーバーマン(上院議員として2010年代前半まで在職)
• ジャレッド・クシュナー(トランプ政権の上級顧問)
• (過去にはネオコン主導のブッシュ政権で要職に就いたフェイス、ウォルフォウィッツ等は2000年代で退任)
2. シンクタンク・言論活動で影響力を保持
• ロバート・ケイガン、ビル・クリストル、マックス・ブート、ダニエル・パイプスなどが論壇やメディアで積極的発言を続け、対ロ・対中・対イラン強硬策やイスラエル支援を訴える。

このように、東欧系ユダヤ人のバックグラウンドを持つネオコン系論客や政治家は、2010年代~2020年代に至っても依然としてアメリカ外交政策の一角に影響を与え続けていると言える。

いいなと思ったら応援しよう!