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ひろゆきのパタリロ
ひろゆきのパタリロ:短編クロスオーバー
ここはマリネラ王国、王宮の玉座の間。
いつものようにパタリロ陛下が玉座で足をぶらぶらさせながら「フフフ、私のダイヤ輸出計画が大成功して国庫は潤うぞ〜!」とご機嫌に喋っていた。その傍には、漆黒の髪をオールバックにまとめ、鋭い瞳を光らせたスレンダーな美青年、バンコランの姿がある。
バンコランはその黒い髪を軽くかき上げつつ、淡々とした口調で「陛下、近頃スパイの侵入が増えていると報告を受けています。ご警戒を」と進言する。
しかしそこに、ごく自然な風合いで混ざり込んでしまっている男がひとり。
グレーのパーカーにクロックスという、マリネラ王宮に似つかわしくないラフな格好でキョロキョロしているのだ。名前をひろゆきというらしい。玉座の侍従が驚いて「どなたですか!? 無断で入室されては困ります!!」と声を荒らげるが、ひろゆきはむしろ呑気に答える。
「えー、すいません、なんだか気づいたら王宮に来てて……セキュリティ意外と甘くないですか? 時給換算で考えたら、こういうゆるい管理はコスパ悪いんじゃないですか?」
その瞬間、王様パタリロが玉座から跳ねるように立ち上がり、「何だと、このわが王宮をバカにする気か! バンコラン! 黒髪を風になびかせながらそいつをとっ捕まえろ!」と怒鳴る。
バンコランは黒い髪をしなやかに振り、「落ち着いてください、陛下。まずは話を聞きましょう。もし侵入経路に問題があるなら、セキュリティを見直せますから」とクールに制止する。
ひろゆきは苦笑しつつ、「やめてくださいよ、捕まえるなんてコスパ的に無駄でしょ。ぼくスパイじゃありませんし……本当に入り口が開いてたんですよ」と弁明。
パタリロは両手を腰に当て、「そ、そんな馬鹿な! ここの門は厳重に守られているはずだぞ!」と叫ぶ。
バンコランは黒髪を少し撫でながら「陛下、確かに最近、警備員が若干気を緩めている様子がありました。対策が必要かもしれません。……ところで、あなた(ひろゆき)は何者で、ここに何の用が?」と問いかける。
するとひろゆきは肩をすくめ、「ぼくは“ひろゆき”といいます。まぁコスパ論を持論にして生きてるって感じですね。とくに大した用はなくて、突如来ちゃっただけです……正直、ここで騒がれるとぼくも困るんですけど」と答え、場は微妙な沈黙。
「むむむ……なんなんだお前は! こんな失礼な男、牢に入れるぞっ!」とパタリロがまた吠えると、ひろゆきは「や、やめてもらっていいですか。時給換算的に、僕が牢に入ってもお互い得しないですよね……」とさらなる挑発とも取れる返答。
バンコランはふいに軽くクスリと笑い、「なるほど。牢に入れてもメリットない、ですか。ま、ひとまず彼の言い分を確認して追い出すかどうか決めましょう」とまとめる。
パタリロが「ぐぬぬ……バンコランの黒髪が眩しい! まぁ仕方ない、多少聞いてやろう」と渋々承諾する。
第二幕:妙な経営論が王国に波及?
やがて、陛下がダイヤ輸出について家臣たちと会議を始めた。そこへなぜか、ひろゆきが同席する形に。「えー、ダイヤ輸出の効率化ですか? コスパ重視で設備投資を……」などと口を出すから、周囲の家臣が「何を勝手に……」と憤慨。
だがパタリロは「ふん、バカにするなよ。私こそがコスパの鬼才だ!」とか言って聞く耳持たない。バンコランが「まあ、彼の視点も一応参考になるかも」と冷静にフォローする。
ひろゆきは「警備をちょっと見直して、不法侵入できないようにすればいいのに……それだけでリスク管理が整うでしょ? あと損益計算書がどうとか、あ、エビデンスとかあるんです?」と、わかりにくい現代語を多用。パタリロ陛下はむっつり顔で「フム、よくわからんが儲かるか?」と単刀直入に訊く。
「いや、儲かるかどうかはやり方次第じゃないですか。っていうか、そもそも僕はこんなところで謀略なんてしたくないんで……やっぱり帰りますよ」とひろゆきは急に興味を失った風。
バンコランが黒髪をなびかせながら「とにかくアンタ、もう国王の計画に首突っ込む気ないなら、さっさと帰るといい」と進めるが、パタリロが「ちょっと待て! こいつにもう少し話を聞いて利益を上げさせてもらう手もあるぞ……」と言い始める。
「えー、やめてもらっていいですか、その金の亡者的な態度……ぼくが協力しても大して変わらないと思うんで……」とひろゆきが背を向けると、パタリロは「うるさい、何と言われようが、王の権力でお前を従わせることもできるんだぞ!」と息巻く。しかしバンコランが「陛下、強権は後々厄介ですよ」と抑え、あまり事態はエスカレートしない。
結果、「うん、まぁ、じゃあ好きにしろ。お前などに付き合ってられるか!」とパタリロが指を鳴らし、家臣に「追い出せ!」の命を下す。ひろゆきも「はいはい、それがベストですよ。時給換算でここにいても、変な陰謀に巻き込まれそうですしね」と肩をすくめて、あっさり退出。
バンコランがエスコートする形で王宮の門へ向かう。するとバンコランがひそっと囁く。「正直、君が悪人じゃないとわかってホッとしてるよ。黒髪の俺が取り締まるまでもなかったな」とクールに微笑み、ひろゆきは「そうですね……巻き込まれずに済んで良かったです」とお礼を言う。
終幕:再び現代へ
王宮の外へ出たひろゆきは、石畳の道を数歩行くと、いつのまにか景色が滲むように歪み始め、気づけば元の世界(現代フランスか日本か)の街角に戻っていた。
「ふう……なんていうか、マリネラ王国ってすごいところでしたね。パタリロ陛下は金に目が無いし、バンコランさんは黒髪でイケメンだし……いやぁ、でもコスパでどうこう言っても通じないわけですよね……あ、まぁ良い体験だったかも?」
クロックスをパタパタ鳴らしながら、ひろゆきは自分の日常へ帰っていく。「ほんと、いろんな世界に行くなぁ。やめてほしいって言っても、なんか巻き込まれちゃうんだよな……」なんてぼやきながら、夕焼けの街へ消える彼の姿——
こうして“ひろゆきのパタリロ”、バンコランは黒髪ver.の奇妙な交錯は、あっけなく幕を下ろす。パタリロのダイヤ事業も相変わらず、バンコランの美形オーラも健在。
ただ、ほんの一瞬だけ、パーカー男のコスパ論がマリネラをかすめていった形で残った——そんな短い騒動の幕引きとなるのだった。