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破産管財人国家アメリカ、ソビエトとその再生

序論
第二次世界大戦によってヨーロッパ諸国の覇権が事実上崩壊し、世界秩序の“管財人”として台頭したのがアメリカとソビエト連邦である。だが、東西冷戦を経てソビエトが崩壊し、代わりにロシア連邦が誕生したのは周知のとおりだ。そして、かつてのもう一人の管財人とも言えるアメリカも、いまや国民国家としての機能やアイデンティティが大きく揺らぎ、ロシア連邦的な「再生」の道を歩まざるを得なくなっているように見える。

1. 西欧文明の破綻と管財人国家の登場
ヨーロッパ各国は二度の世界大戦によって深刻な打撃を受け、自らが主導してきた国際秩序を維持する力を失った。その空白を埋める形で、アメリカとソビエト連邦が世界政治の主役へと躍り出た。西欧諸国の再建や統制を主導する“管財人”となった両国は、冷戦期において地球規模の影響力をふるった。しかし、冷戦終結時にソビエトが崩壊し、ロシア連邦が誕生したことで、一極支配に近い形でアメリカが覇権を握る時代に入るかのように見えた。

2. ソビエト崩壊後に生まれたロシア連邦
ソビエト連邦は、共産党による統制と計画経済を基盤としながら超大国として振る舞っていた。しかし、内在する経済の非効率や官僚機構の硬直化、軍事的過拡張、そして政治的自由の欠如などが重なり、1991年に崩壊。そこから生まれたロシア連邦は、急激な改革(ショック療法)を経験し、人口減少・産業構造の歪みなど多くの問題を抱えながらも、国民国家として再生の道を模索し始めた。ソビエト時代からの継承は断ち切れないにしても、資本主義を導入し、民族的・宗教的要素も再び前面化するなど、まさに「一から国民国家を再構築する」過程を辿っている。

3. アメリカ国民国家の破綻と再生の兆し
かつての管財人国家の“片割れ”であるアメリカも、冷戦期から現在に至るまで、巨大な軍事・経済力を背景に世界秩序をリードしてきた。しかし、グローバリズムの進行や内政の対立(政治的分断、産業空洞化、移民問題など)によって、国民国家としての統合力が深刻に揺らいでいる。いわゆる「エリート寡頭制」への不満が爆発する形で、トランプ現象や反ワシントンのポピュリズムが台頭し、またイーロン・マスクのように国境を超えたテクノロジー企業を旗頭に“新しいフロンティア”を主張する動きも見られる。いずれも、これまでの国民統合の枠組みでは対処できないほど社会構造が変化し、国家としての意志決定やアイデンティティが危機に瀕している証左と言えるだろう。

そうした状況は、ソビエト崩壊後のロシア連邦が辿った「再構築プロセス」に通じるものがある。かつては絶対的に見えた共産主義体制が瓦解し、軍事大国から過疎や経済混乱に苦しむ国へと一挙に変貌したロシア連邦が、宗教や伝統文化の復興も含めて新たな国民意識を再定義しようとしているように、アメリカもまた“再定義”を迫られているように見えるのである。

4. パラドックスとしての「管財人国家」
ヨーロッパ文明の破綻を背負って登場したアメリカとソビエトは、本来ならば“外科的”に西欧社会の再建を監督するはずだった。しかし、冷戦終結後にソビエト(ロシア連邦)が大きく変貌したように、アメリカ自身も“国民国家”としての一体感や秩序を失いつつある。つまり、管財人として台頭した両者が、いまやそれぞれ再生を迫られる立場になっているわけだ。

結論
第二次世界大戦で破綻した西欧文明を引き継ぎ、管財人的な役割を果たしたアメリカとソビエト。しかし、ソビエトが崩壊してロシア連邦が生まれたように、アメリカも国民国家として事実上の破綻状態に陥り、新たな再生を模索せざるを得なくなっている。これは皮肉にも、21世紀において国民国家が再定義される過程の一部であり、アメリカがどのように“ロシア連邦的”な再生に乗り出すかは、今後の世界秩序を大きく左右する焦点となるかもしれない。
いわゆるトランプ政権、DOGEがそれである。

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