
「ひろゆきと金田一少年の事件簿」
「ひろゆきと金田一少年の事件簿」
序章:旧校舎に集う奇妙なメンバー
ある晩、古い校舎でミステリー研究会の合宿が行われていた。参加者は名門・不動高校の生徒たちと、何かの手違いで参加してしまった大人の男。
その大人こそ“ひろゆき”という人物。パーカーとクロックスというラフな格好で、誰がどう見ても高校の合宿にそぐわない。だが本人は「ミステリーと聞いて興味が湧いたんで、やってきたんですよね。時給換算で見ても短時間で犯人を突き止められるならコスパ悪くないかな、と」と飄々としている。
もちろん、ミステリー研究会の顧問や生徒たちは「何だこいつ?」と困惑。しかもメンバーの中に、あの**金田一一(はじめ)**が顔を出していた。例によって、どこかで事件が起こりそうな予感がする。
宿泊先は校舎の裏にある旧館。時計が鳴る深夜0時、みんなが寝静まろうとしていたとき、突如として廊下から「キャー!」という女性の悲鳴が響く。
「な、何事だ!?」慌てて飛び出す生徒たち。その先には、一人の生徒が倒れこみ、手には血のついた凶器と思しきナイフが床に転がっている。被害者は別室で倒れ、意識を失っていた。現場は荒れ、誰がやったのかまったくわからない。
「うわっ、やっぱり事件だ……」
焦るミステリー研究会員に対し、金田一一はピリッと真剣な顔つき。「やれやれ、本当に起きちゃったか。これは僕の推理が必要かな……」と呟く。
そこへひろゆきが後ろからぬっと顔を出し、「えー、なんだろう、殺人未遂事件ってコスパ悪そうじゃないですか? こんな手がかりしかないとか面倒。やめてもらっていいですか?」とぼやく。
金田一は「お、おじさん、事件をコスパとかで考えないでよ……」と苦笑しつつ、「でも、どのみち早く犯人を突き止めないと、二次被害が出るかもしれない」と表情を引き締める。
第一章:捜査開始、でもひろゆきはコスパ重視?
廊下と被害者の部屋を見回す一同。金田一が手袋をつけてナイフを検証し、ひろゆきが口を挟む。「いや、そもそも痕跡調べても、プロの鑑識とか呼んだほうが早くないですか? 時給換算で、下手に素人がやると二度手間だし」
金田一は「うーん、それはごもっともだけど、今この場に警察がいないし……携帯も圏外ってどういうことだよ。旧館だからかな」とため息。結局、臨時に金田一の推理で進めるしかなさそう。
ひろゆきは仕方なく周囲を見回すが、「やっぱりこういう学園モノって、密室だのアリバイだのに時間かけるじゃないですか。コスパ的に長引きそうで嫌ですよね」とブツブツ言い出す。
そんな折、最初に悲鳴をあげた女子生徒が「私、見ちゃったんです……あの倒れた子が誰かにもみ合いになってるとこ。顔まではわからなかったんですが……」と証言をし、金田一は顎に手を当てて「ふむ、やはり犯人は内部の誰かか」と考え込む。
ひろゆきが横で小声で、「いや、だからそもそも内部とか外部とか、データあります? 本当にここに皆揃ってるか?」とチャチャを入れると、金田一はややイラつき顔。「データとか……いや、現状把握しようよ、理屈だけじゃなく状況証拠が大事なんだ」。
第二章:意外な突破口、論破(?)が役に立つ?
時間が経つにつれ、全員分のアリバイや行動を洗い直すことに。ミステリー研究会のメンバーは部屋にこもっていたというが、誰かこっそり抜け出したかもしれない。
「こら、しっかり自分の動きを説明しなさい」と金田一が叱咤するが、一人の男子生徒がしどろもどろ。「べ、別に隠すことないんだけど、こ、怖くて……廊下に行ったのは事実だけど、殺しなんて!」
空気が微妙に張り詰めたところで、ひろゆきが「うーん、でも仮に嘘ついてるなら、コスパ悪くないですか? あとでバレたら損だし」と素っ気なく言い放つ。その発言に男子生徒がさらに動揺、「や、やめろよ、何だよその‘コスパ’って!」と取り乱す。
すると金田一がはっと気づく。「そこだ。取り乱し方が不自然だ……ひょっとして君、何か別の理由で廊下をうろついてたんじゃない?」
男子生徒はたじたじ。「ち、違う……オレは……」
ひろゆきは横から「多分、ラブレターでも隠しに行ってたとかそういう話じゃないんですか?」と適当に推測すると、男子生徒が「あ……」と痛いところを突かれ、顔が真っ赤になる。
「おいマジなのか!?」周囲がどよめく。彼が「ああ……そうだよ。夜中にこっそり手紙を置きに行ってて……」と白状するが、金田一は「だとすると君は犯人じゃないかもしれないけど……一つ鍵が解けたな。あの時間帯には廊下にいたのは君だけじゃない可能性がある」と推理を前進させる。
こんなやり取りで、ひろゆきの“コスパ理論”が意外に突破口になったのだろうか。
金田一は「ふふ、意外とあんた役に立つじゃん」と微笑。「やめてくださいよ、そんな褒められても僕コスパ優先で動いちゃうんで」とひろゆきが照れる。
第三章:真相解明と逆転、そして論破の果て
やがて金田一の推理が全貌を掴む。真犯人は実は顧問教師で、被害者と密かに口論していた途中、誤って刺してしまったという事故的要素が強かったらしい。それを隠そうとしたのが恐怖に拍車をかけ、こんな騒ぎになった……というのが真相だ。
「なるほど……じゃあ犯人も殺意はなかったんですね。コスパ考えるとリスクだらけの計画殺人とか馬鹿げてますし……」ひろゆきは呆れるように言う。金田一は「事件にコスパとかそぐわないなと思うけど、まぁ結果オーライか」と肩をすくめる。
警察が到着し、顧問教師は自首する形に。被害者の生徒も命に別条はなく、一応ハッピーエンド? だが、“犯人”としての苦しみはこれから背負うことになるわけだ。
「お騒がせだったなぁ……」ミステリー研究会メンバーが深いため息をつくと、ひろゆきは「いやほんと、データに基づかない犯罪ってやめてもらっていいですか? 時給換算で最悪ですよ」と言いながら、パーカーのフードを引き上げる。
「とにかく、あんたがいきなり話に割り込んできたおかげで、まぁ少しは捜査がスムーズだったわけで」金田一が素直に謝意を示す。
「いえいえ、僕も面白い体験できました。やっぱり、コスパって言っても、感情とか宿命が絡むと何とも言えないですよね。ま、そんなとこで。ぼくはもう帰ります」
「そっか。じゃあ、事件はもう解決したし、ここからは僕が後始末を……」
そう言って金田一は警官とのやり取りへ戻り、ひろゆきはさりげなく退場。校舎の外に出ると、もう陽が昇り始めていた。
「結局、論破したというか、金田一くんが全部解決しちゃいましたね。僕はちょっと突っ込んだだけで終わった。なんだろう、やめてもらっていいですか? こういう尻すぼみ感……」
ひろゆきは冗談めかして独りごとを言い、クロックスをパタパタいわせながら校門を出ていく。
長い夜が明けても、金田一少年の事件簿はいつも通り“名推理”で事件を終わらせ、日常に戻る——そこに一瞬だけ変なおじさん(ひろゆき)がいたことも、やがて噂のネタになって消えていくだろう。
「いい経験になったんでコスパ悪くなかったかも……」という微かな呟きだけが、風に流れて校庭の隅に消えていく。きっとこの先も、ひろゆきは思わぬ場所で“何か”を論破しながらさまよっていくのかもしれない。