見出し画像

ひろゆきvsよしりん〜ゴーマニズム宣言



長編:ゴーマニズム宣言に乱入!? ひろゆきがよしりんを論破?

第一章 ゴーマニズム宣言・公開討論会の幕開け

 ある日の午後、都内のイベントホールにて「ゴーマニズム宣言・公開討論会」が行われるという触れ込みがネットで話題になっていた。そこでは作者である“よしりん”こと小林よしのり氏が「ゴー宣流の日本論」を熱く語り、来場の観客とバチバチの議論を交わすというのだ。
 会場のロビーには熱心なファンから一般の好奇心客まで多種多様な人々が集まっていた。だが、その中に、どうにも奇妙な姿をした男が混ざっている。グレーのパーカーにクロックス……まるで「公開討論会」の場にそぐわないラフな格好だ。男の名はひろゆき。どうやら「ゴーマニズム宣言」とやらに興味が湧いたらしく、フラリとやってきたらしい。

「えーっと、なんだろう……僕がここに来たのはコスパ的にどうなのか。時給換算するとメリットあるんですかね……。でもちょっと見てみたいから仕方ないかな」

 そんな独りごとをつぶやく彼を尻目に、係員が受付でパンフレットを手渡し、「講演はもうすぐ始まりますのでお静かにどうぞ」といかにも仰々しい案内をする。
 周囲のファンたちはすでに席についている。舞台中央には赤い垂幕と横断幕に「ゴー宣! 日本の自主独立を考える!」と派手な文字が踊る。そしてそこに登壇するのが、髪をくるりと整え、自身満々の笑みを浮かべた小柄な男——よしりん、こと小林よしのりその人だ。
 拍手と期待のざわめきの中、よしりんはマイクを握り、ドンと演台を叩いてみせる。

「はいはいはい、皆さん、よく来てくれたもんですな〜。さっそくゴーマニズム宣言らしく、わしがビシバシ日本論をぶった斬っていくぞ〜! 反論ある者は遠慮なく前へ出ろ! どんな意見でも叩き返してやるわい!」

 彼の大げさな挑発に観客が苦笑混じりに拍手すると、その一瞬の隙をついて、なんとパーカー姿の男——ひろゆきがするりと前の方に進み出てマイクを握ってしまった。

「あ、どうも……えー、ぼく、ひろゆきって者です。はい。あのー、この講演で“日本論”を語るってことらしいんですけど、そもそもエビデンスって取ってるんですか? なんかそれ“あなたの感想ですよね?”って話にならないですか?」

 会場にどよめき。よしりんファンたちの間から「何だあの男……」「よしりんに喧嘩売るなんてバカじゃないの?」とヒソヒソ声が飛ぶ。
 よしりんが目をぎょろりと光らせ、「おお、いきなり面白いのが来たのぅ」と笑みを深くし、「聞こうじゃないか、お前さんの疑問。なんだ、“感想論”って言うのか?」とマイクを向ける。
 ひろゆきは「あ、えーと、えー、ぼくが言いたいのは、よしりんさんの言う‘ゴーマニズム’って、基本あなたの主観的主張ですよね? それを日本人全員の総意みたいに語ると、科学的根拠がないというか……」と遠慮なく切り込む。

「なんじゃとぉ!? いいや、わしの論には根拠も何も、魂があるんじゃい! 日本人としての誇り、歴史を踏まえた主張があるんだよ!」
「いや、それって要はあなたの熱意レベルでしょ? 時給換算すると、そんなに時間割いて議論しても結論出ないんじゃないですか? 日本がどうとか語るのって、実際どれだけメリットあるんです?」

 場内の観客が「おいおい何言ってんだ」とざわつき、よしりんは演台をドンと叩いて眉をつり上げる。

「出たな、‘時給換算’。なんだそりゃ。そんな経済論だけで日本を語るなとわしは言いたい! 経済だけじゃないんだ、文化とか精神とかが大切なんだよ!」
「あー、文化とか精神、つまり感情論ってことですよね……でも、どこまでいってもデータなしには説得力が薄い気が。結局、‘やめてほしい’とか‘やるべきだ’とか個人の感想じゃないですか? 本当に大多数の合意を得てるんですか?」
「わしは日本国民に直接聞いてるわけじゃないが、ゴー宣を通じて多くの読者が共感してくれてるんだよっ! それが既に答えじゃ!」

 二人の言い合いが加速し、観客たちは唖然と見守る。よしりんは「オラオラ、ゴー宣の前であんたの時給換算が通じると思うな!」と煽り、ひろゆきは「はいはい、強い言葉ですね。でもそれって……」と返す。
 そこで、場の進行を担う司会者が「ちょ、ちょっと落ち着いてください! 公開討論会なので、順番に意見を……」と必死に制する。よしりんは腕を組みながら、「ふん……わしは負けんぞ」と鼻を鳴らし、ひろゆきは「僕も別に勝ち負けとか興味ないんで、あんまヒートアップされても困るんですが」と肩をすくめる。

第二章 突如のトラブルとガチ論破へ

 ところが、そんな白熱のやりとりを割るように、会場の照明が突然消え、非常灯だけが薄暗く点灯する。主催側が慌てて舞台袖と連絡を取ると、ブレーカーが落ちているとのこと。なぜかトラブルが起きたようだ。
 やがて暗闇の中、「よしりんなどという男の主張は許さない……!」という謎の声がこだまする。音から察するに、誰かが無許可でマイクを奪ったらしい。そして続いて金属が床を転がる音……「警備員はいないのか!」と観客がどよめく。

「なんだなんだ!? くそ、誰が勝手に……」
「ちょっと、なんの騒ぎですか?」
演壇上のよしりんが声を張り上げ、ひろゆきも暗闇の中でパーカーのフードを握りしめ「いやぁ、こういう事件やめてもらっていいですか……コスパ悪すぎる」と嘆く。

 数秒後、非常灯が明るくなり、黒尽くめの服を着た男が姿を現した。どうやら“アンチ・ゴー宣”を自称する人物らしい。彼は「小林よしのりの論が許せん! 日本を貶めてるのはあんただ!」と、よしりんに激しい敵意を向ける。
 よしりんは「わしを貶めるとはなんじゃい! かかってこい!」と再び演台を叩き、声を荒げる。男はナイフのような刃物を取り出し、観客が悲鳴を上げる事態に。
 「うわ、マジですか……やめましょうよ、暴力とか。なんかいろいろリスク高いですよ、時給換算で絶対損ですよ」とひろゆきが困惑していると、男は「黙れ! お前なんか関係ない!」と威嚇してくる。

 しかし、驚いたことに、よしりんはまったく怯む様子を見せず、「なんだと! わしの言論を力で封じる気か? 卑怯者め、そこに理はないぞ!」と一歩踏み出す。観客から「よしりん先生危ない!」という声が飛び、会場が騒然となる。
 ひろゆきはさすがにこれはイカンと、慌てて司会台のマイクを取り、「えー、ちょっとやめてください、今ここでナイフとかリスク高いし……それってあなたの感想というか暴力ですよね? やめてもらっていいですか?」と制止を試みる。
 男は「うるさい黙れ!」と返し、そのままよしりんへ突っ込もうとするが、よしりんが残心の構えか何か独自の“護身術”じみた動きでヒョイと回避し、わりと的確に相手の手首を弾いてナイフを落とさせた。
 会場「おおーっ!!」とどよめき。男は「ぐわっ……」と転倒し、警備員がようやく駆けつけて男を取り押さえる。トラブルは一瞬で幕を下ろした形だ。

「はぁ……危ないとこだった……」
「なんというか、あっさり終わりましたね。時給換算でいうと、よしりんさんは無駄な時間使わず最小の動きで片づけましたね。お見事……」
ひろゆきは安堵の表情で拍手すると、よしりんは息を整えながら「わしの思想を暴力で邪魔する奴なんぞ論外じゃ。あんたもギャーギャーうるさいが、まだ話すだけマシだわい」と鼻を鳴らす。
観客は騒ぎの余韻を引きずりつつも、「まさかよしりん先生が護身術で勝つとは……」「論破どころじゃないな」と興奮状態。

第三章 論破? あるいは和解のようなもの

騒動が収束し、改めてステージにはよしりんとひろゆきが向かい合う形となる。
よしりんはやや得意げに胸を張って言う。「どうだ、わしの身体はなまってないぞ。そもそもゴー宣ってのはそういう生き方まで含めた話だ。口だけじゃないんだよ」
ひろゆきはぱちぱち拍手し、「なるほど、確かに行動力すごいっすね。でもそれと‘日本論’が直結してるかって言われると……なんか微妙に強引じゃないですか?」とあくまでツッコミを忘れない。
少しムッとしながらも、よしりんは「ほうら、また言う。まぁいい。お前さんが‘コスパ’とか‘時給換算’とかどれだけ力説しても、わしは魂だとか誇りだとか、数値化できないものを大事にしてるんだ」と言い放つ。

観客が息を呑み、静まり返る。
そこへひろゆきが穏やかに口を開く。「別にそれ否定してないんですよ。僕が言いたいのは、データと主観が区別されてないと議論にならないってことです。なんというか……一人称の強烈さにみんな圧倒されてるだけじゃないか、と思うんですよね」
よしりんは一拍置いて、「ふん……確かにわしは強烈な一人称で語ってるかもしれん。でも、多くの読者がそこに共感し、日本をこう考えるべきだって気づいてくれた。言い換えれば、わしの“感想”が何千何万という人の思いになりうる可能性があるわけだ」と笑う。
ひろゆきは肩をすくめ、「それを証明するデータとかないんですよね? うーん、まあいいや。そもそも論破したいわけでもなし……どうぞお好きに」と引き下がり気味。観客から「おいおい、もっと突っ込めよ!」という声も上がるが、ひろゆきは「時間かかるし、コスパ悪いんでやめときます」とあっさり。

この微妙な流れに、よしりんがフッと苦笑。「あんた、なんか意外と粘らないな。ま、いい。わしとしては自分の主張があるだけで、それこそゴーマニズムの醍醐味。あんたはあんたのコスパ論で勝手に動けばよい。これでよかろう!」
ひろゆきもニコリと笑い、「そうですね。意外と話が通じる部分もあるって感じです。まぁ全部は共有できませんけど……僕はそろそろ失礼しますね。時給換算で考えると、この公開討論会にこれ以上いる意味が薄いし」と言い、さっと退場の構え。
拍子抜けにも、ここで幕引きとなりそうだ。観客がどよめく中、よしりんがマイクを握って締めくくりの言葉を発する。

「よーし、じゃあこれにて臨時のゴー宣討論は終わりだ! 次はお前ら観客を相手に、わしが日本論を語り尽くすぞ! あんた(ひろゆき)は別にまた聞きたきゃいつでも来い! わしは歓迎するぞ〜」
「いやぁ、多分もう来ないっすね……メリットあんまりないんで。——でもお疲れさまでした」

会場後方のドアを開け、ひろゆきがプイと退場。混乱の残る観客の間に微妙な拍手が起こり、そしてよしりんは顔をほころばせながら独白する。
「ふふ……変わった男だったが、多少はわしも楽しかったわい。さあ、次は皆さんへのゴーマニズム宣言、お待ちかねだぞ!」
大きな拍手の中、イベントは再開していく。
一方、ホールの外の通路を歩きながら、ひろゆきは「あー、結局誰も論破とかされなかったけど……こんなもんですよね。やめてもらっていいですか? 騒がしいだけっていうのは……あ、まぁいいか。面白かった」と肩をすくめる。クロックスの音をパタパタと鳴らし、また街の雑踏に溶け込む姿があった。

こうして、“ひろゆき”がよしりんのゴーマニズム宣言に参戦(?)してみた一幕は、短くも濃厚な騒ぎを残し、幕を下ろす。彼のコスパ論は全員を論破したわけではなく、むしろ主観の激突で終わったと言える。でも、それこそがゴー宣流の“言論バトル”らしさかもしれない。
「世の中、いろんな考えがあるのは当然……まぁ、いいか」——ひろゆきの軽い独りごとだけが、夜の都会に消えていったという。

いいなと思ったら応援しよう!