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ひろゆきの【推しの子



ひろゆきの【推しの子】 —短編クロスオーバー—

序章:突然の産婦人科

ある日の夜。
人気アイドルグループ「B小町」のセンターであるアイが、身重の体を抱えてひっそりと産婦人科を訪れる。
その病院の医師は、アイを推している大ファンのゴロー。しかし、病院のロビーにはもうひとり、妙に場違いな男がいた。

「えー、どうも、僕“ひろゆき”って言います。なんでこの産婦人科にいるかって言われても困るんですけど……」
グレーのパーカーにクロックスというラフな格好で、受付のスタッフからは「どなたですか?」と不審がられている。しかしゴローはアイの出産準備が最優先で、対応に追われている最中だ。

「ゴロー先生、大丈夫ですか? 急にアイさんが……」と看護師が声をかける横で、ひろゆきは興味津々に「アイさんってアイドルですよね? コスパ的に育児しながらアイドル続けるって大変じゃないですか? 事務所とかどうするんです?」とチャチャを入れる。
ゴローは「いや、そんな話してる暇ないんで! 危なっかしいんですよ、アイさん妊娠中に色々あって……!」と必死。
そこへ謎の人物が現れ、ゴローを襲った。闇から伸びる刃が閃き、ゴローは……命を落としてしまう。

転生後:アクアとルビーの誕生、そしてひろゆきの出現?

ゴロー(≒アクア)やルビーが誕生し、新たな人生を歩み始めるが、その時空の歪みか何かで、ひろゆきまでどこか“巻き込まれ”てしまったらしい。
「えっ、僕、産婦人科からいつのまにかベビーベッドのそばに……?」と首をかしげるひろゆき。見ると、まだ赤ん坊のアクアとルビーがいるが、こちらは前世の記憶を持っている……という状況。

「あー、この展開って転生モノですよね。なんだろう、やめてもらっていいですか、僕まで巻き込まれるの? 時給換算で考えて、メリットあるのかな……」
やがて美しく育つアイと、その子どもたち(アクア・ルビー)。ただひろゆきは、まったくの部外者のはずなのに、なぜかアクアの家にしれっと住み込む形で芸能界を目撃する羽目になる。

アイのアイドル活動とひろゆきのコスパ論

アイがアイドルとして活躍し、番組やライブで大成功を収める中、ひろゆきはその裏側を見ながら「これコスパ悪くないですか? 時間も体力も大量に使い、プライベートも削られるなんて……」としきりに口を挟む。
アイは「コスパかぁ……でも、私がステージでファンを笑顔にできるなら、それでいいんだよ。大切なのは数字じゃなくて、気持ちだから」と穏やかに笑う。
ひろゆきは「いや、何かすごくキラキラしてますね。まぁ、あなたの感想ですよねって言いたいところですけど……」と苦笑。

しかし、この幸せは長くは続かない。誰もが知るとおり、アイが何者かによって殺害される悲劇が訪れる。
その報せを聞いたひろゆきは呆然。「え……マジ? 時給換算どころの話じゃないですよ……命まで奪われるなんて……やめてもらっていいですか、本当に……」
アクアは激情を胸に“復讐”を決意。ルビーはアイドルを目指し、新生「B小町」を動かす。ひろゆきはこの二人の道を見守りながらも、「いや、なんかこう……芸能界の闇が深いですね」と舌打ちをこぼすしかない。

映画『15年の嘘』とひろゆきのドタバタ

アクアが母の敵を探る手段として立ち上げた映画企画**『15年の嘘』**。現場は監督やスタッフ、出演者が入り乱れ、ひろゆきもなぜか雑用スタッフのように手伝わされることに。
「まじか、映画作るとか、コスパ大丈夫ですかね? 前売り券の売上と予算のバランスとか……」とひろゆきはプロデューサーに話しかけるが、「うるさい! アクア君の思いを形にするのが先決だ!」と一喝される。
アクア自身は復讐に向けて暗躍し、一方ルビーはアイドル活動を邁進。ひろゆきはそんな二人の姿を見て、「すごいなぁ、コスパだけで動いてないですもんね……やめておきますよ、僕が口出しするのは」と少し悟る。

こうして作品撮影が進む中、アクアは少しずつ母の事件の真相に近づいていく。ひろゆきも偶然耳に入った裏事情を伝えてやろうと思ったが、**「あなたの感想ですよね?」**と返されそうなので黙っていたり……とコメディっぽいシーンもあったり。

終幕:別れと現代への帰還(?)

映画がクランクアップを迎えようとする頃、ひろゆきは意外な形で事件の断片を目撃してしまう。その日の夜、アクアが静かな決意を瞳に宿しているのを感じ取って、「あぁ、この子はもう止まらないんだな……」と悟る。
「僕はコスパとか言ってても、あなたにはあなたの人生があるし……やめてもらっていいとは言えないかもですね」とひろゆきは小さく微笑む。アクアはそれをどう返すでもなく、ただ一瞬の沈黙をもって別れの合図とする。

翌日、ひろゆきはルビーのステージ裏を見守り、「ああ、こうやってキラキラしてる子を見ると、コスパなんてどうでもいいって思えますね……」とつぶやき、いつの間にか景色がぼんやり歪み、彼の姿は消えてしまう。
アクアやルビーは「そういえば、あのパーカーのおじさんいなくなったね」と首を傾げるが、既にそこにはいない。静かに日常が戻り、映画の公開が近づく。二人の芸能界サバイバルは続く。

エピローグ:ひろゆきの独白

現代社会の一角、カフェでクロックスを鳴らしているひろゆきが一人ごと言う。「いやぁ、ホントにアイさんの死は辛かったし、アクアとルビーも過酷な道を歩んでるんだな。コスパとか言うのも馬鹿らしくなるくらい、みんな本気で生きてるんだ……」
苦笑まじりに、「ま、僕は僕で戻ってこれたし、怪我しなかっただけ得かな。でもまた、あんな芸能界の闇には巻き込まれたくないですよ」とパーカーのフードを上げる。そのまま人波に消えていく背中は、ほんの少しだけ新たな感慨を宿しているのかもしれない。

「結局、人生コスパだけじゃ測れないってことですかね……」——そうつぶやく声だけが風に流れて消える。
こうして**“ひろゆきの【推しの子】”**短いドタバタは幕を下ろす。悲劇とサスペンスが渦巻く芸能界で、コスパ論はほとんど機能しなかったが、ほんの少しだけ誰かの役に立ったかもしれない、そんな物語である。

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