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ひろゆきと聖闘士星矢
夜空に十二宮が浮かび上がる神秘的な空間。女神アテナを救うため、星矢たち青銅聖闘士が血と汗を流しながら黄金聖闘士の宮を突破していた。その先に待ち受ける壮絶な試練に、誰もが緊張の面持ち。だが、その石畳の片隅、戦闘とはまるで無縁そうな男が佇んでいる。
「えー、どうも、僕ひろゆきって言います。こんな危険な場所まで来ちゃったんですけど……コスモとか燃やすのって、時給換算でわりに合うんでしょうかね?」
パーカー姿でクロックスを履いたこの“ひろゆき”は、戦いの場に似つかわしくなく、まるで観光にでも来たかのような態度。そんな彼に気づいたペガサス星矢が、汗を拭きながら声をかける。
「こんな所になにしに来たんだよ! 今は黄金聖闘士と戦ってて、それどころじゃないんだ! 早く逃げるんだ!」
すると、ひろゆきはあくまで冷静に首をかしげる。「いやー、でもそもそも女神アテナを救うって、実際どういうエビデンスがあるんです? あなたたちが戦わないと世界が滅ぶって、本当に確定なんですか? それってあなたの感想じゃないですか?」
星矢が一瞬むっとするが、「これは感想じゃなくて事実なんだ! アテナは俺たちの女神で……」と一生懸命に説明しようとする。けれど、ひろゆきは口をはさむ。
「まあまあ、冷静に考えましょうよ。いきなり血塗れで戦うより、十二宮スキップすればいいんじゃない? 闘うたびに体力削るし、時給換算で損でしょ。論破して通してもらうとかどうです?」
その時、黄金聖闘士の一人・獅子座のアイオリアが光の速度で現れて「青銅聖闘士、また来たか……!」と構えを取る。ひろゆきはアイオリアの金色の鎧を見て、「わぁ……豪華ですね。塗装とかメンテ大変そう。コスパどうなんです?」と呑気な質問。アイオリアが「何を言っている? これは我がコスモの証、金銘の聖衣だ!」と怪訝な顔を見せる。
星矢はひろゆきをかばうように前に出て、「アイオリア、僕たちはもう時間がないんだ。通してくれないなら戦うしか——」と言いかけた瞬間、ひろゆきがぬっと手を上げる。
「ちょっと待って。えー、アイオリアさんでしたっけ? そもそもあなたが立ちふさがる理由って何です? 女神アテナを助ける行為を阻む正当性ありますか? っていうか、それってあなたの感想じゃないですか? 上から言われてるだけでしょ?」
なぜか論戦の形になったところで、アイオリアは鋭く睨む。「黙れ! 我ら黄金聖闘士は教皇の命令を忠実に守る。そのためなら、誰であろうと通さぬ!」
「なるほど、それ教皇さんの命令なんですね。でも教皇って裏切り者かもしれないじゃないですか。実際、データとかあるんです? 論理的エビデンスなくて、ただ従うのってコスパ悪くないですか?」
アイオリアが一瞬言葉を詰まらせる。なまじ理屈っぽい突っ込みをされると、己の信念がぐらつきかねない。そんな隙を見逃さず、星矢が「いまだっ!」と拳を振り抜く。「ペガサス流星拳!」
アイオリアは反射的に迎撃しようとするが、わずかに遅れたことで衝撃を受け、体勢を崩してしまう。「しまった……!」と悔しげにうめく彼に対し、ひろゆきは言い捨てるように言う。
「ほら、論破しちゃえば意外と戦い省略できるんじゃないですか? まあでも結果的に星矢さんが殴っちゃったんですけどね。どのみち効率よく突破できましたよね」
星矢は「それどこが論破だよ!」と突っ込みたい気持ちを抑えながら「アイオリア、ごめん……今は急がなきゃならないんだ」と息を切らしつつ次の宮へ走り出す。アイオリアは混乱しつつも「くっ……なぜこんな奴の理屈で俺のコスモが……」と地面に膝をつく。
結局、星矢たちは先を急ぎ、ひろゆきは「え、続くの? 全部の宮を行くんですか? 時給換算でめっちゃ時間かかるじゃないですか……」と呆れながらもついていく。途中、剣闘士のような他の黄金聖闘士とも立ち会うが、やはりひろゆきが「あなたの方針って根拠あるんです?」「そこ感情論だけじゃないんですか?」と突飛な指摘をするたびに、相手が微妙に動揺してしまい、それを星矢や仲間たちが技で仕留める……という不思議な展開が続いた。
最終的にアテナが救われた時、ひろゆきは大した傷も負わず、「いやぁ、意外と役に立てたかも……でも実際、なんでこんな試練を全部こなさなきゃいけないかは、やっぱりあなたたちの感想レベルですよね?」と満足げにクロックスを鳴らす。
星矢や紫龍、氷河たちは唖然としながらも、「どうにも釈然としないけど……結果オーライかな……?」「ふしぎな同伴者だったな」などとささやきあい、ひろゆきはパーカーのフードを直しながら「僕はもういいです。時給換算で十分働きましたし」とふいにいなくなってしまう。
「おい、どこへ行った!」と振り向くと、そこにひろゆきの姿はなく、クロックスの足音だけが石段にわずかに反響する。静寂の中、アテナを抱きとめた星矢が呟いた。「いったい何だったんだろうな……あのパーカー男……」
黄金聖闘士たちも、あんな論法で自分たちを動揺させる存在がいるとは夢にも思わず、しばし言葉を失った。戦いには“コスモ”だけがすべてだと信じていた彼らにとって、あまりに現代的な理屈はある意味、最強の“揺さぶり”となったのかもしれない。
こうして、“ひろゆきの聖闘士星矢”は不意に始まり、不意に終わる。神話さながらの激闘に論理的な切り口が挟まることで、かえって闘いが楽になったのか、むしろ違和感が増したのかは定かではない。ただ一つ言えるのは、その異端の男が残した言葉——「それってあなたの感想ですよね?」——が、このコスモ燃ゆる世界に妙な余韻を残したということだ。