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間違って買ったベストセラー(その1)

<いくつになっても、「ずっとやりたかったこと」をやりなさい。>この本は、誰かがSNS上で紹介していて知った。本の内容について細かい説明は書かれていなかったが、そのタイトルを見た瞬間に記事をスクショし、必ず読もうと心に決めていた。まだ完読していないが、読み終えた章から順番に文字へ起こしていくことで、心の変化について「足あと」を残していく。

心に穴がぽっかり開いてしまった人に手を差し伸べる

本冒頭のイントロダクションを読んですぐに気付いたことは「仕事を引退した人に向けられた構成」だということ。文中で紹介される人物たちについて、リタイア後の人生を中心に語られているからだ。30代半ばで、リタイアとはまだ程遠い私が読む本ではなかったと思った。しかし、少し読み進めていくと心の曇りは一瞬で晴れることになった。この本は、年齢やキャリアステージに関わらず、何か大きなきっかけによって「心に穴が開いてしまった人」に手を差し伸べる内容となっているのだ。

【メモワール】いつも乗る地下鉄がタイムマシーンに

著者が本の中で提供する基本ツールの1つに「メモワール」というものがある。これは、自身の年齢を12で割った各期間を振り返るという内容だ。例えば今が35歳の年齢であれば、最初のメモワールは【0歳~3歳】が対象期間となる(算出する数字はおおよそでよい)。そして、掲げられた質問に対してリズムよく答えていくというやり方だ。

【メモワールの質問内容(一部を抜粋)】
●歳~●歳
・どこに住んでいましたか?
・好きな本は何でしたか?
・好きなおもちゃは何でしたか?
・この時期、よくいた場所はどんな場所でしたか?
など

質問項目は10個程しかないので回答はすぐに終わる。私は、移動中の電車内で本に直接書き込むようなかたちで質問に答えた。この質問に答えるたった数分の時間、まるでタイムマシーンに乗ったかのような感覚で「昔の自分」に出会えるのだった。当時住んでいた団地、そこで一緒に遊んでいた近所のお兄ちゃん、毎週末に父が連れて行ってくれた馴染みの喫茶店、さくらんぼが添えられたバニラアイスクリーム。驚くことに、普段は思い出せない繊細な記憶が次々と脳内に蘇ってくるのだ。しかも、解像度の高い映像として。

【モーニング・ページ】心の声との通信手段

著者はまた、心に変化を与えるためにエクササイズを提案する。最初は「遅すぎることはない」というタイトルのもので、【もし遅すぎなかったら、私は__をするだろう。】の文章を5つ完成させる。私は1つ目の文章に【もし遅すぎなかったら、私は サーフィン をするだろう。】とノートに書いた。私が幼少期の頃、プロサーファーだった父にサーフィンすることを反対されたことがあった。海の怖さを知っている親が子どもを心配するのは当たり前だと、今となってはよく分かる。それでも歳を重ねれば重ねるほど、サーフィンへの憧れはどんどん増していく。

この章では、創造性の敵は、自分自身の中に潜んでいるということも教えてくれる。文中ではその敵を「内なる検閲官」と呼び、対峙の仕方も示してくれる。最後は、挑戦してみようとする積極性だけが残るように。そして、混ざりっけのない挑戦心を持ち続けるために役立つのが、著者が提供する「モーニング・ページ」と呼ばれる基本ツールだ。

モーニング・ページは朝起きてからすぐ、思っていることを何でもノート数ページに書いていくというもの。ルールや決まった方法はない。とにかく導かれるように、そのとき思ったことをノートに書いていく。ノートは誰にも見せてはいけない。感じたことを素直に書く習慣は、自分自身とだけ繋がる大切な時間をもたらしてくれる。実際にモーニング・ページを書き始めてすぐ、不思議なことに心の声を聞けるようになった。今自分は何に悩んでいるのか、同じ問題を抱えている人が他にもいるのではないか。時には、ふとしたアイデアが思い浮かぶこともある。

ここで紹介した「メモワール」や「モーニング・ページ」以外にも、著者は、様々な手段と提案をもって心の穴を埋めようとしてくれる。章によってはミッションも与えられる。本書を読み進めていると、焦って前がかりになる自分も現れる。そんなときも著者は、要所要所でなだめてくれる。「心配はいらない、黙々と前に進んでください」と。

(次の投稿につづく)

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