Day2,「Wispy hair」Inktober2020
中一で上京したての頃、随分か細かった。心細くもあったが、そもそも変わり者で、繊細で、打たれ弱くて、その上喧嘩っ早いから、とても生きるのに苦労した。精神的なか細さは、そのまま弱さと人当たりの悪さに直結する。他人に対する思いやりを持てる程心に余裕がなく、噛み付くことでしか自分を保てなくなる。
フィリップ・マーロウが、ロング・グッドバイの中で言うとおり、世界は、”強くなければ生きてはいけない、だが優しくなければ生きていく意味はない”場所だ。あの頃の様に怯えながら、そして、反対に惰性で生きているだけでも、世界は居心地の悪さを増すばかりだと思う。
インドを旅した時、ヴァラナシという町で、クミコ・ゲストハウスという安宿に逗留した。名前の通り、日本人のクミコさんが運営する、バックパッカーには有名な宿だ。
でっぷり太った彼女は、日本人らしさをほとんど失って、流暢に日本語を操る誰かだった。誰かとは、インド人では決してない。インド人にはない、強烈な強かさが宿っていた。日本人のひ弱さ、染まり易さが生んだ結果なのだろうか。それとも、芯の強さが剥き出しになった結果だろうか。私には分からない。なんにせよ、彼女がヴァラナシで20年以上生きるには、想像もできない程の強さが必要だったのだろう。
WISPという単語を聞いて一番に、wisperという単語を思い浮かべた。か細く、囁く様な声。確かにwispには、細く捉え所のないものを表すニュアンスがあるらしい。煙の様にたなびく、乱れた髪の一房一房を描こうと思ってペンを握った。
"強くなければ生きてはいけない。だが、優しくなければ生きている意味はない。"
どれを欠いても、人生は難しいのだ。そのうち、絵の中の女性はきっぱりした眼差しで、私が未だに持てない強さと優しさを遠く見据えていた。
WISP
[名]C
1 (髪の)乱れた一ふさ;
(干し草などの)一握り,小さい束
a wisp of straw
一握りのわら
2 一片,断片;(煙などの)一筋
a wisp of smoke [a cloud]
一筋の煙[一片の雲]
2a 小さい人[子ども];
〔a ~〕かすか[わずか]な(…)≪of≫
a wisp of a girl
ほっそりした娘
a wisp of mist over the road
道路上にうっすらと立ちこめる霧
3 (鳥,特にシギの)群れ
━━[動]他((主に米))…をねじって
[よって]束にする