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”美しすぎる”妖怪図鑑 - Sigma妖怪仮装のバックステージ

こんにちは。Sigmaです。
妖怪や魔物、魔女など、「人でないもの」になるのが趣味のものです。
こちらの記事では、そんな私が今までに化けた妖怪を一覧にし、言い伝え(創作も含む)や写真をまとめてみました。

撮影依頼やコラボ、ファンアートの製作などにも、ぜひご活用くださいませ。

嫦蛾(ジョウガ)

撮影:HASEO

妖怪紹介

「嫦蛾」は、「嫦娥」をベースにした創作妖怪です。
言い伝えも「嫦娥奔月」の一説をもとにした創作の物語のため、史実とは異なります。

昔々、中国に「姮娥(コウガ)」という不老不死の仙女がいました。

姮娥はあるとき、夫である「后羿(コウゲイ・ホウイ)」の使命に伴って人の地におりました。
使命とは、天帝の子供らである10人の天子たちを、天上の世界に連れ戻すこと。

后羿は使命を果たすことができましたが、そのかわりに10人のうちの9人の天子を撃ち落としてしまいました
天帝の怒りを買った后羿は天上界に戻ることを許されず、そして姮娥も天上に戻れず人として老いて死ぬ運命となってしまいました。
二人はとある農村に身を寄せ、人間たちと生きていくことにしました。

しかし、妻が人間として一生を終えることを悲しんだ后羿は、
女神西王母に天上の世界にもどるため不老不死の薬を願いました。
しかし、薬は一人分しか与えられませんでした
なぜなら、その薬は三千年に一度だけ生る蟠桃という実から作られるからです。
農村に帰った后羿は姮娥に不老不死の薬を預けましたが、姮娥は人として夫とともにいることを選びました

しかし、とある日――農村に住む悪い人間が、不老不死の薬を狙って姮娥を襲ったのです。
姮娥は、「人間に奪われるくらいなら」と、その不老不死の薬を飲み
ひとり月へのぼってしまった
のでした。

后羿は妻が消えてしまったことを嘆き悲しみました
そのとき、夜空に満月が光り輝き、そこに姮娥の面影が浮かび上がるではありませんか。
姮娥はそこに一人いて、私を見守ってくれるのだな

それから、満月になるたびに后羿は独り縁台に座り、姮娥の好きだった果物やお菓子を並べて盃を傾け、飽かずに月を眺めるようになりました。
姮娥をしたっていた農村の村人たちも、同じように、ことさら月が輝く中秋の名月の日にはお供えをし、姮娥をしのぶようになったのでした。

これが、「お月見」の由来ともなった、姮娥が月の女神となった神話です。

しかし彼女は帝の御名前である「劉」と同じ字を用いる名前だったため、
人間たちは、帝のいかりをかわぬよう、彼女を「娥(ジョウガ)」と名を変えて呼ぶようになりました。

そして海を越え、大陸からさらに言い伝えられるうちに、「嫦娥」が「嫦」と書き損じられてしまいます。
「嫦」と「嫦」という二つの名前、二つの存在がまことしやかに言い伝えられることになりました。

月の裏側には、永遠に光があたることはありません。
人々を慈しみ見守る、やさしい嫦娥の心にも、月の裏側――暗い感情が存在していました。
あのとき薬を盗もうとした人間がいなければ、私はきっと、愛する夫とともに生きて死ねたはずなのに……」
影にかくした恨み言に「嫦蛾」という名前が与えられ――

――月の女神であった嫦娥から、夜に君臨する蛾の妖怪、「嫦蛾」が生まれてしまったのです。

「嫦蛾」の言い伝え(創作物語)

仮装のこだわりポイント

・触角が発達した鹿のような角(製作/角処夏梅)
・大きく軽い、風に舞う蛾のマント(製作/costurero real)
・アンティークの着物。蔦模様に銀糸が織り込まれてキラキラと光ります。
・日本の伝統工芸品である、佐賀錦の袋帯
・額と胸元(ファーに隠れて普段は見えません)を飾る鮮血のような紅のジュエリー(製作/three fox tail)
・日本の伝統とアーティスティックな感性をMIXした、白塗りと赤いお化粧

参加イベント

  • 2023年 京都伏見百鬼夜行

撮影:Akatsuki
  • 2024年 京都一条百鬼夜行

撮影:矢杉佳一郎
  • 2024年 もののけ撮影交流会 第一回京都の陣

撮影:カヂワラ
  • 2024年 怪々yokai祭/うずまさ大百鬼夜行

撮影:泥パン氏。

亀姫

撮影:泥パン氏。

妖怪紹介

福島県の猪苗代城に住む妖怪の姫。
泉鏡花の「天守物語」などに登場する。
姫路城に棲むという刑部姫(おさかべひめ)の妹として描かれ、
姉のもとへ訪れる際に男の生首を手土産にしたという言い伝えがある。

夫人(刑部姫)「ああね。(亀姫に)よく、それで、手鞠をつきに、わざわざここまでおいでだね。」
亀姫「でございますから、お姉様は、私がお可愛うございましょう。」
夫人「いいえ、お憎らしい。」
亀姫「御勝手。」(扇子を落す。)
夫人「やっぱりお可愛い。(その背を抱いだき、見返して、姫に附添える女童に)どれ、お見せ。(手鞠を取る)まあ、綺麗な、私にも持って来て下されば可いものを。」
朱の盤「ははッ。(その白布の包を出だし)姫君より、貴女様へ、お心入れの土産がこれに。申すは、差出がましゅうござるなれど、これは格別、奥方様の思召しにかないましょう。…何と、姫君。(色を伺う。)
亀姫「ああ、お開き。お姉様の許だから、遠慮はない。」
夫人「それはそれは、お嬉しい。が、お亀様は人が悪い、中は磐梯山の峰の煙か、虚空蔵の人魂ではないかい。」
亀姫「似たもの。ほほほほほ。」
夫人「要りません、そんなもの。」
亀姫「上げません。」
朱の盤「いやまず、(手を挙げて制す)おなかがよくてお争い、お言葉の花が蝶のように飛びまして、お美しい事でござる。……さて、此方より申す儀ではなけれども、奥方様、この品ばかりはお可厭ではござるまい。」
包を開く、首桶。中より、色白き男の生首を出し、もとどりを掴つかんで、ずうんと据う。

泉鏡花「天守物語」より

衣装のこだわりポイント

・亀姫の名前にもある「亀」や、猪苗代城の異名である「亀が城」をイメージした、緑の打掛
・打掛と対照的に鮮やかな朱色の着物やアクセサリー
・江戸のお姫様らしく飾り立てた帯やかんざし
・髪飾りに使用した人間の手の骨
・反対色を取り入れた印象的なお化粧

参加イベント

  • 2024年 亀姫コンテスト(最優秀賞)

撮影:ヤマサン

ゆめむし

撮影:カヂワラ

妖怪紹介

蝶の式神。主人とはぐれ、京の都をさまよっている。
主人の霊力がないと、だんだんと「鬼」としての本性があらわれ、白い顔が割れてしまうとか。

また、ゆめむしは「百鬼夜行のさきぶれ」としての顔も持ちあわせている。
彼女を見かけたら、その後ろには百の妖怪がぞろぞろ歩いているかもしれない……。

衣装のこだわりポイント

・和紙の白と墨の黒のコーディネート
・「中身が鬼」であることを示すために、インナーは黒。形代をイメージした白を外側に纏う。(バランスが乱れると、衣も黒に染まっていく)
・儚くゆれる蝶の翅(製作/costurero real)
・額に青く燐光する「鬼の瞳」(製作/UPON HANDMADE)
・墨を引いたようなグラデーションの角(製作/角処夏梅)

参加イベント

  • 2024年 京都節分お化け百鬼夜行

撮影:くろもち
  • 2024年 怪々yokai祭/うずまさ百鬼夜行

撮影:泥パン氏。



黒狐の八穢(ヤエ)

撮影:カヂワラ

妖怪紹介

むかしむかし、とある人間に助けられ、そして死に別れた狐。
好物は、おあげときつねうどん。
なぜか人間たちに「八穢ちゃま」と呼ばれている。

むかしむかし、とあるところに名もない狐がおりました。
狐は飢えて死にかけていたところを、とある女に助けられました。
彼女の名前は「お八重(やえ)」。
きれいな着物を泥に汚し、まるでどこかから逃げてきたようです。
お八重はそのキラキラ光る着物の裾を惜しげもなく引き裂いて、冬の寒さに凍える狐を包み抱きしめました。
「ああ、私に子がいれば、きっとこれくらいの大きさで、これくらいのあたたかさだろうになあ」
女は泣きましたが、狐にはその意味がよくわかりませんでした。

二人が出会った廃寺には初雪がしんしんと降り積もりました。
ふたりは残り少ない山の幸を分け合い、温めあって冬を過ごしました。
「春になったら村に降りて、家を探しましょう。そうすれば、きっとお腹いっぱい食べられるからね」
狐は、お八重の優しい声と温かい手が大好きです。

雪が溶けはじめたころ、狐は森の中でとある老婆と出会いました。
老婆は何やらわけのわからないことを叫びながら狐を追いかけました。
狐は必死に逃げました。雪の中を足跡を散らしながら、一目散に寺へ逃げました。
そこには女がいました。
――逃げて、逃げて、こわいのがくるよ。
コンコンと必死に鳴きましたが、女は笑って狐を撫でるだけです。
そうするうちに、老婆がやってきてしまいました。
「……あんた、お八重かい?」
「ああ、ああ……そんな」
二人が顔を合わせるや否や、老婆はぱっと振り返って駆けだしてしまいました。
――ああ、よかった。もうこわいのいないよ。
狐はコンコンと鳴きました。

その夜のことです。
狐はぱちぱちと、聞きなれない音で目を覚ましました。
あたりは真っ赤に燃え盛り、女はぐったりと伏していました。
狐はコンコンと鳴きました。逃げて、逃げて。ここは危ないよ。
女はぜいぜいと喘ぎながら床を這います。狐は女の着物を咥えて引っ張ります。
ずるずる、ずるずる。ぱちぱち、ごおごお。炎の方が、二人よりもあゆみが速い。
しかし、もっとはやいものがありました。
見知らぬ男たちが、燃える炎もなんのその、こちらへ駆け寄ってきます。
狐はひときわ高く鳴きました。助けて、助けて!
「ここだ! まったく、勝手に逃げやがったあげく、狐が憑いておかしくなっちまった!」
「これじゃあ稼ぎにならねえな」
「俺たちの町に変な噂がついても困る、ここで殺そう」
狐は、男たちが弓を引いているのが見えました。
彼らは助けではありません。花街から逃げた女「お八重」を追ってやってきたのです。

矢の切っ先はまっすぐに女を見据えています。
狐は男たちの脛にかじりつきます。やめろ、やめろ!
「てめぇ! 獣風情が、邪魔しやがって!」
怒った男たちは、弓を狐に向けました。
そのとき、女がにわかに立ち上がり、狐を抱えて走り出しました。どこにそんな力があったのか分からぬほど、女は素早く、炎が着物の裾や、長い黒髪を舐めるのも意に介さず必死に走ります。
男たちも、逃してなるものかと矢を射かけながら女と狐を追いかけましたが、燃え盛る火の勢いと、暗く繁る森に阻まれ、二人を見失ってしまいました。

女はどこまでもどこまでも走り――川のほとりで倒れ込みます。
ぐったりと横たわる女の腕から、狐はそっと這い出ます。
女の背中には八本の矢が深々と突き刺さっていました。八つの傷口からは次から次へと血があふれ出ていきます。
女は――お八重は、狐の顔を覗き込み、何かうわごとのように呟いて……そのまま、眠るように瞼を閉じました。
もう、目を覚ますことはありませんでした。
狐はコンコンと、夜空に吠えますが、それでも、目を覚ますことはありませんでした。

人間です。人間が、女と狐を引き裂いたのです。
狐は、女の着物を脱がせます。冬には似つかわしくない絽の薄衣は真っ赤に染まっていました。
狐は、女の体を土に埋めます。もう凍えなくてもいいように。
狐は、女の名前をもらうことにしました。二度と彼女を――彼女を失った痛みを忘れぬように。

いつしか狐の体は呪いの黒に、炎の赤に染まっていました。
都には、人に化けて人間を祟る呪いの狐の噂がまことしやかに広がっていきました。

それから百年、二百年がたっても、
恨みの黒狐「八穢(やえ)」は、今も彼女をころした人間を探しつづけ、そこかしこをさまよっているのです。

「八穢」の言い伝え(創作物語)

衣装のこだわりポイント

・獣の笑みと鋭い牙を模した面頬(製作:おめんのかしまや)
・恨みと呪いを宿した赤い羽織
・獲物を狙う鋭い瞳
・肉を断つ呪いの爪(自作)

参加イベント

  • 2024年 妖怪撮影会

撮影:JJ
  • 2024年 怪々yokai祭/うずまさ百鬼夜行

撮影:泥パン氏。

百目鬼(ドウメキ)

撮影:奈留

妖怪紹介

百の鳥の目をもつ鬼。
鳥山石燕の『今昔画図続百鬼』に描かれている妖怪で、腕にいくつもの目のある女の姿をしているといわれている。
Sigma扮する百目鬼が男であるのか、女であるのかは不明。ご想像にお任せします。

函関外史(かんかんがいし)云(いわく) ある女生れて手長くして つねに人の銭をぬすむ 忽(たちまち)腕に百鳥の目を生ず 是鳥目(ちょうもく)の精也 名づけて百々目鬼と云 外史は函関以外の事をしるせる奇書也 一説にどどめきは東都の地名ともいふ。

多田克己『百鬼解読』より

衣装のこだわりポイント

・孔雀の意匠をふんだんに取り入れ、「目玉」を表現
・腕や顔にメイクで目を表現
・背中の大きな瞳
・紫陽花の花が咲く傘がトレードマーク

参加イベント

  • 2024年 滋賀三井寺妖怪ナイト

撮影:Hyde

その他

一度だけ撮影のために用意した衣装や、名前のない妖怪たち

水鬼

猪苗代湖に夕暮れどきだけあらわれる鬼。水辺で舞を踊っている。

撮影:ヤマサン

蝶鬼

秋の里山に舞う雌雄のあやかし。夢を見ることが好き。

撮影:てんた

紅い異形

正体不明。紅色の異形。

撮影:Yas.

とある遺作の人形

誰かが遠い昔に作って捨てた人形。

撮影/編集:Sigma

閏年の魔物

四年に一度だけあらわれ、予言を授けるかわりに生贄を一人連れ去るといわれている。

撮影:カヂワラ



以下、準備中の妖怪たち

白蝶の女/名称未定(???)

撮影:すっくん

妖怪紹介

霊魂を司る蝶の化身…?

参加予定イベント

  • 2024年11月 うずまさ百鬼夜行

酒呑童子(シュテンドウジ)

妖怪紹介

大江山に伝わる大妖怪。

参加予定イベント

  • 2024年11月4日 京都大江町酒呑童子祭り


おまけ

  • 嫦蛾プロトタイプ

嫦蛾がいまの姿になるまでに何度かの変遷を経ている。
その一例が、ランプシェード異形頭バージョン。

撮影:カヂワラ


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