
CP+2021オンライン特別企画「シグバラ」リポート①28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary編
今日の担当|シグバラ担当K
こんにちは。2/26(金)19時からCP+2021のSIGMAブース(特設サイト)でオンライン配信した会期限定のライブトーク「シグバラ(SIGMA バラエティ)」の担当スタッフKです。
はやいもので配信から1週間たちます。この「シグバラ」は、2020年2月に日比谷で開催した独自イベント「fpフェス」のオンライン版ともいえるプログラム。いつもの新製品発表では伝えきれない製品の魅力、開発者の熱血エピソード、ユーザーの方々が聞いてみたいあれやこれやに「シグマの中の人」がこたえるという交流イベント的なものをやってみようということで企画されました。
国内最大のカメラと写真・映像の祭典CP+の一番の魅力は、やはりなんといっても各メーカーの個性あふれるブースが一堂に会し、趣向を凝らした展示やタッチアンドトライ、ステージプログラム...出展社も来場者も一体となって楽しめる祝祭感ですよね(毎年この季節になるとなんとなく私たちも浮足立ちます)。
でもオンラインにはオンラインの良さがある。せっかくの機会なので、遠方にお住まいなどふだん会期中会場に足を運べない方にも楽しんでいただきたいなと(無謀にも)思い立ちました。
というわけで、今回は参加者がコメントできるZoom ウェビナーを使った参加型にチャレンジ。SNSでも事前に#シグバラ #知りたいSIGMA のハッシュタグで質問を募集するなどしてみました。
司会は日本国内のオンラインのユーザーコミュニケーション担当である、日本公式YouTubeチャンネルSIGMA Station「花金ライブ」担当の蒲原(右)と、国内向け公式note「SIGMA 広報部」担当の森田(左)
「シグバラ」のプログラム
●第1部
2/24に発表したばかりの新製品、28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryの紹介
●第2部 ※3/8公開予定
2020年1月発売のプレミアムコンパクトプライム「Iシリーズ」開発秘話
●第3部 ※3/10公開予定
SIGMAの中の人が答える「#知りたいSIGMA」質問タイム
今回はSIGMA製品をもっと知ってもらうためのスペシャルクイズもご用意。2/24(水)に発表されたばかりの新製品28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryと、昨年末発売の新シリーズ「Iシリーズ」のコーナーでは、それぞれの製品の開発担当エンジニアが回答者となって、クイズ形式でトリビアルで熱い開発エピソードをご紹介しました。クイズ参加者の方には、正解・不正解に関わらず⁉豪華なプレゼント(大ステッカー+ワッペン+マスクの「薄物3点セット」)を謹呈するというゆるふわなルールでスタート。
第1部:新製品28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryをあの手この手でご紹介
まずはちょうど2日前(2/24)に発表したばかり、満を持して発表された「Contemporary中のContemporary」とも言うべき自信作の一本をご紹介。SIGMAの交換レンズというと、Artラインに代表される「ものすごく解像するけど大きくて重い」というイメージを持たれるかと思いますが、このレンズはそれを覆すくらい、とにかく性能がよくてコンパクトという「スゴ軽」の一本なのです。
このレンズの試作品で試写してくれた蒲原の作品を紹介。
既に24-70mmF2.8 DG DN | Artを愛用している蒲原が、掛け値なしの撮り比べに挑戦(上は24-70mm F2.8 DG DN | Art、下が28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryで撮影)
花金ライブでおなじみの蒲原家の愛猫。コンパクトなのでレンズを向けて逃げない。猫ちゃんにもやさしい28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary。
ちょっと誤解されがちなのですが、ContemporaryとArtには優劣はなくて、Contemporaryは名前通り当世のニーズを重視した、「いかに画質を落とさずに小さく軽くするか」というシリーズなんです。が、このレンズに関しては本当に、実写レベルではほとんど違いがわからなかったです! 広角側が24ミリか28ミリか、より軽量コンパクトさを重視するか、という点だけでどちらかを選んでもらえれば!と蒲原が力説。森田も「明るい標準ズームがほしければまずSIGMA、そこから24mmか28mmか悩むという、そういう迷い方でひとつよろしくお願いします」と涼しくも熱く紹介します。
そしてメインのクイズコーナーへ。出題者は森田です。
第一問(サービス問題)です。
Q: 2019年に発売され好評販売中の24-70mm F2.8 DG DN | Artというレンズがありますが、今回新たに、2021年CP+オンラインに合わせて〇mm-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryというレンズが発表されました。〇に入る数字をお答えください。
A: 「言わずもがなの28mm」(ご名答者あり)
では同じ明るさでArtラインでは24mm、その差4mm。どうしてそれほど似たスペックのレンズを新たに開発することになったのでしょうか?24-70mm F2.8 DG DN | Artと28mm-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryの両方の光学設計を担当された、開発第2部のエンジニア、上村さんに聞いてきました。
光学設計担当者・上村のコメントより
「プロ仕様の大口径標準ズームとして一眼レフでもご好評頂いている24-70mm F2.8 DG OS HSM | Artのミラーレス版を開発するのと同時に、fpにもマッチする小型軽量標準ズームレンズを開発する計画がありました。
社内では「小型標準なズームレンズであってもF2.8がの明るさが欲しい」との意見がありました。
開発初期段階の検討において、日常使いの使い勝手の良さに配慮しつつも、F2.8標準ズームレンズを可能な限り小型軽量化するには、28-70mm F2.8のスペックが最適であることを確認し、今までに無い魅力的なサイズ感の大口径標準ズームレンズが開発で可能との感触を得ましたので、正式に開発がスタートすることに決まりました。
24-70mm F2.8の開発においては、ミラーレスの大口径標準ズームレンズに相応しいレンズ構成、高精度なレンズ加工技術、高いレベルの量産品質が得られる新しい組立工程を新規開発しました。
その技術をそのまま投入することで、小型軽量でありながらも高性能な大口径ズームレンズを実現したのが28-70mm F2.8です。
24-70mm F2.8が持つArt品質の高い光学性能、最短撮影距離が短いことによる使い勝手の良さを維持しつつも、WIDE端の焦点距離を28mmとすることで、可能な限り小型軽量化することだけに注力して開発したのが新しい28-70mm F2.8です。
24mmの焦点距離を諦める以外には、製品として妥協した点は何処にもありませんので、contemporaryに相応しい小型軽量な大口径標準ズームレンズが実現出来たと思っています。
24mmスタートの本格的な大口径標準ズームレンズを利用されたい方には24-70mm F2.8、小型軽量な大口径ズームレンズを利用されたい方には28-70mm F2.8と、ユーザー様ご自身の撮影スタイルに応じて選んで頂ければ幸いです。
用途に応じて2本を使い分けて頂けるユーザー様におきましては、光学性能には差が無いので、どちらのレンズを利用して頂いても高画質でハイクオリティなズームレンズとして満足して頂けるのでしたら、光学設計者としてはとても嬉しいです。」
どちらも間違いなしの、光学設計者お墨付きのレンズ。詳しくは鹿野さんの作例やインプレッションでも比較してみてください。
配信ではインタビュー映像で紹介。
しかし、何だか見覚えのあるシルエット...
つづいて第二問(やや難易度アップ)です。
Q: 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryには「サーマリー・ステーブル・コンポジット」略してTSCというポリカーボネート素材が使われています。この素材の特徴の一つに〇〇〇〇がアルミニウムと非常に近いというものがありますが、〇に入る言葉をお答えください。
A: 答えは熱収縮率でした。(ご名答者あり!すばらしい)
金属、特にアルミに近い熱収縮率を持つので、温度変化の大きい環境でも金属パーツとの形状のズレが少なくでき、高い精度で安定した性能が出せるようになるそうです。プラスチックパーツでは、金属パーツとはまた違った難しさがあるということで、機構設計とプロジェクトリーダーを担当された、開発第2部のエンジニア、星さんにお話を伺ってきました。
メカ担当エンジニア・星のコメントより
「プラスチックパーツは切削加工パーツとは異なり、金型にプラスチックを注入し作成します。そのため、複雑な形状も金型が出来れば作れますが、その金型から取り出せる形状でなければなりません。形状に制限はありますが、その制限内で切削加工ではできない形状を作り出すことが難しさでもあり楽しさでもあります。
軽量・コンパクトさ重視のレンズでしたが、たまたま私たちのチームのすぐそばがIシリーズの開発チームだったので刺激を受けながらの開発になりました(笑)。先にIシリーズが発表、発売されユーザーからの声も好評でしたのでこのままプレスチックで進めていいのか?いや、コンセプトは間違ってない!と言い聞かせながら取り組みました。
結果的に軽量、コンパクトな、Iシリーズに負けないくらい魅力あるレンズに仕上げることができたと思っています。」
なぜか先ほどの上村と似たシルエット...
最後、第三問です(突然難度が上がります)。
Q: 最後はかなり難問です!
この写真は28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryの試作段階のものですが、外観にこの後修正が入りました。(写真右側が試作段階、左側が製品版です)では、どの部分が修正されたかこのパネルの中からお答えください!
①フロント部分
②フォーカスリング
③カバーリング
④ズームリング
⑤後部筒
A: 答えは②フォーカスリングでした!(モニターの画質の限界もあってさすがに無理難題でした...)
かなり分かりづらいんですが、リング表面にヒケと呼ばれるムラが出ているので滑らかな表面になるように開発段階で修正が入りました。開発では数段階の試作と検証を繰り返して性能や精度を高めていきます。時にはこんな目に見えないくらい微細な修正が入ることもあり、発売のギリギリまでできるだけ良い製品になるように開発と工場は努力を重ねています。今回の問題の改良はどんな目的で行われたのか、こちらは機構設計を担当された開発第2部 家老さんに聞いてきました。
メカ担当エンジニア・家老のコメントより
なぜか先に登場した2人と似ている
「この修正は、金型内での収縮時間の差で出来る、外観のわずかな凹みを直すのが目的でした。
熱収縮の話がありましたが、溶けたプラスチックが金型の中で固まる過程でも収縮が起こり、厚みの差による固まる時間の差によって、形状が作れなかったり精度が安定しなかったりします。そういった差を無くせば解決するのですが、形状が無くなってしまいます(笑)
このパーツは外観以外は問題が無く、周辺のパーツも出来上がっていましたが、形状を変更して修正しました。工場の金型設計、製造、塑性部門にも色々無理をお願いしました。必要な機能や形状を設けながら強度を保ちつつ肉厚をなるべく変化させないなど思考錯誤しながら作業しています。
このレンズは外観パーツがプラスチック主体であるのが大きな特徴ですが、実は内部の見えないところでは金属パーツも結構使用しています。金属を使うと一般的にコストは上がってしまう傾向にありますが、パーツを薄型化し製品のサイズを小型化できたり、剛性が向上して光学性能を安定して出せたり…といったメリットが有りますので必要な箇所には金属を使用しました。
光学設計からの厳しい要求を最小限の製品サイズで達成させるという難題に取り組んでいくと、そのしわ寄せが金属パーツにいってしまい、かなり難しい形状になる箇所もありました。
この形状を精度を出しながら加工できるだろうか・・・と不安もありましたが、金属加工部が(あまり)嫌な顔もせず頑張ってやってくれ、満足のいく製品が出来上がりほっとしました。」
プラスチック製も金属もすべてこだわりぬいて創られた「もうひとつの最適解」。
目に見えないほどの細かい修正もぎりぎりまで詰めて製品にしている、「このあたりでもういいでしょう」とならないのがSIGMAのものづくりなんだということが伝わったらうれしいです。
☞第2部(3/8公開予定)へつづく
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