ひとさし指のカタチ
祖母の命日に寄せて。
父方の祖母が大好きだった。
母がまだ仕事をしていた頃に、一緒に暮らして、まだ小さかった私の世話をしてくれていた。
以来、私はすっかりおばあちゃん子に育った。
祖父が急死した時、耳が遠かった祖母を独りにするのが心配で、大学生の私は春休みを祖母の家で一緒に暮らした。
その間にFAXの使い方を覚えてくれて、独りで暮らすようになった後に、チラシの裏に鉛筆で書いたのだろう、素朴で温かな近況を寄せてくれるようになった。
あの頃のFAXはまだ感熱紙で、ジーッジーッと音を立てて、祖母の手書きのメッセージを少しずつ吐き出すFAXをよく眺めていたっけ。
米農家で、さして豊かな暮らしではなかったと思う。
得意の裁縫を活かして、子供用の晴れ着を繕う内職をしていた。
陽の当たる窓際に小机と座椅子を設えて、いつも黙々と繕い仕事をしていた人だった。
繕いながら話してくれる人だった。
色鮮やかな着物の布や、大きな糸巻き、銀色の指貫、祖母を思い出す時はいつも、あの頃の窓際の風景がよみがえる。
祖母は年老いて、亡くなってしまったけれど、私だけに残してくれたものがある。
ひとさし指。
私と祖母のひとさし指は、同じかたちをしている。
節がやや太めで肉感はなく、皺が深くて、指先が中指のほうに少し傾いている。
繕い仕事の姿をよく見ていたから、針を操るひとさし指の様子を鮮明に覚えている。
同じかたちだ、密かにそう思って見ていた。
祖母が亡くなった時、とてもとても悲しかったけれど、私にはこのひとさし指があるから大丈夫だと、どこか心強く思うことができた。
これがあるから大丈夫、いつも一緒だから、と。
何年経っても、それは変わらない。
指輪の映えない不恰好な指だけれど、祖母が宿っていると思うと、なんとも愛おしい。
黄色が似合う人だったから、命日にはいつも黄色の小さな花束を飾ることにしている。
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