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ボカロがサンプリングされたラップ3選【曲紹介】
先日出した砂の惑星noteにてVOCALOIDとHip Hopの相似や、Hip Hop におけるサンプリングという手法に軽く触れましたが、今回は「ボカロがサンプリングされたラップ」を紹介していきたいと思います。肉体性の要不要の極致に居るようなお互いの音楽性は、果たしてどのような化学反応を生むのでしょうか。
Big Boi - Kill Jill ft. Killer Mike, Jeezy ー 【初音ミク】データ~DATA~【トランス】
まずはBig Boiから、何故かリスナー達が皆ご存知の「Kill Jill」を。
ワオ!アトランタ(南部)を代表するHip Hopデュオ「Outkast」でAndré 3000の相方のBig Boi。東西全盛期の頃から南部で強い存在感を放ち、iPhone XのCMソングにも起用されたりと大物中の大物です。しかも今YouTubeでBig Boiで検索すると一番再生数多いのがこの曲という(笑)
feat.のKiller MikeとJeezyもアトランタの有名なラッパーです。
「砂の惑星」ではハチがTrapとの接近を図っていたわけですけど、奇しくも時期を同じにしてTrap側も初音ミクと接近していたんですね。相思相愛か?
日本が舞台になっている映画「キル・ビル」を参照しているこちらの作品は、ジャケットからも日本からの影響を強く感じさせ、初音ミクが選ばれた理由を仄かに感じなくもないです。Rap Genius(現Genius)では、サンプリングの意図を、王座に戻るという曲のテーマに歌詞を合わせたものである可能性があると考察しています。
全編に渡って大胆にDATAをサンプリングし、絶えず初音ミクの声が聞こえてくるビートはかなり先鋭的で日本でも少し話題になりました。我々からするとちょっとシュールに感じる気もしますが、日本語が分からないとどれだけクールに感じるのか気になりますね。あとはイケないものを吸いながら聞いた時の初音ミクボイスの酩酊感は非常に気になります。Trapと組み合わせたら凄い面白い世界に行けそうじゃないですか?
ところでMVの終盤ですが…ん?
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おい!これってYO!実写版「となりで風に触れたから」じゃんか!!!!
助手席の位置違って面白いねーじゃないんじゃ
Future - 712PM ー 【初音ミク】データ~DATA~【トランス】
おい、マジかよ。これまたアトランタを代表するラッパーのFuture!!!ディレクターがライブで死人が出る程の熱狂的人気を誇るラッパーTravis Scottなのもエグい。この曲ビルボードHOT100で8位なったらしいです。Trapシーンを牽引する第一人者であり、本人が多くのラッパーへの影響を認め、お前らのスタイルは俺から来てるんだぜって言うほどの大物です。しかもサンプリングネタまで一緒。こっちはどういう意図があるのかちょっとわからないんですけど、先ほどのBig BoiとKiller Mikeも所属するHip HopクルーのDungeon Family繋がりなのかな。とにかくFutureがミクと一緒に歌っているってのはなんだかエモいです。アメリカの未来と日本の未来!(笑)
さっきとは違って、忘れた頃にチラチラと初音ミクがフェードインしてきて面白いです。
あとこの曲アルバムの1曲目に持ってくるの凄いなぁ。Trapを日本で一早く完成させたと言われるKOHHも働かずに食う[IA Ver.]なんてのやってましたけど、やっぱTrapやってる人って新しいこと好きなイメージがあります。DJ YANATAKEやKamuiは日本を代表するカルチャーなのにいいところをもってかれちゃったなとか、もっとボカロを使ってヒップホップをすればいいとか言ってましたけど本当にそう思います。ヒップホップでのメインストリームは如何にリアルかが問われるところがあって、現状はボカロを使う必然性がなさすぎて普通の聞けばいいじゃんってなってると思うので、そこら辺がもっと発展していって面白いものが見れたらいいなぁと思います。(他力本願寺)
そういう意味では、yanagamiyukiの、ボカロとボカロPである自身を俯瞰したリリックや、ボカロやAIをテーマにした曲作りっていうのは、僕はめちゃくちゃ楽しませてもらってます。
A prisoner in the glasses/ぼくのりりっくのぼうよみ ー 【鏡音リン】グラスアート【オリジナルMV】
UOOOOOOOOOOO!!!!!!!選曲が、良い。「エンゼルフィッシュ」でお馴染みのパトリチェフさんから、今回はボーカルではなくトラックのサンプリングですね。一時期結構話題になってた(?)ぼくのりりっくのぼうよみ(現たなか)がラップやってた頃の作品です。こいつがHip Hop濃度低いせいでタイトルにHip Hopって使えなかった!(笑)でも逆に言えば一番オシャレで聞きやすさ抜群だと思うので是非聞いて欲しいです!これの為にnote書きました。
ぼくりりの気だるげな声の隙間を縫うようにピコピコとなる2stepのトラックが、互いを支え合いマッチしています。2つの波が頭にダイレクトに侵入し、全てを委ねてしまいたくなる程に聞き心地が良いです。
以上!3選でした。Big Boiは初音ミクが過小評価されていると言っていて俺らがそれに火をつけるとも言っていますが(多分彼はよくそういう事を大袈裟に言うだけなんですけど(笑))、アニメや漫画好きのラッパーがたくさん出てきてるんだし、もうそろそろボカロ好きのラッパーとか大々的に出てきて欲しいですね。Snoop DoggやTravis Scottだったり、日本でもOZworldのゲーム産業との接近があったりと、ナードコア・ヒップホップやネットラップだけではなくメインストリームのHip Hopでもオタク的カルチャーとの距離が近くなってきてるんで、これからのHip Hopとボカロのクロスオーバーに期待です。ただ音楽的に組み合わせるだけではなくて、“Hip Hop”と“ボカロ”であることを活かした、クリエイティブとしてちゃんと聞きごたえがあったり見応えがある面白い表現手法が確立されたらいいなって思います。