![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/133168897/rectangle_large_type_2_c1766989b07e8f15d6b107e748bc5f85.png?width=1200)
カーボン・クレジットは森林と林業のみらいを変える?
「将来、1兆円のマーケットになる」と聞いて、どんな市場を思い浮かべるだろうか?
これは、ある金融機関の社長にインタビューした際に出てきたコメントなのだが、答えは『森林由来のカーボン・クレジット』である。
コトはそう単純ではないらしいのだが、森林には1兆円近くの価値が眠っているということのようなのだ…。
その価値のうちの相当額を山林保有者や林業事業者が主体的に引き出せたら、結構なパラダイムシフトが起きるんじゃないのか?
ということで、『森林由来のカーボン・クレジット』が、どんなふうに『森林』や『その関係者』にポジティブな影響をもたらしうるのかをまとめていきたい。
というか、勉強したことをアウトプットしていきたい。
今回は、カーボン・クレジットとはそもそも何なのだろうか――? というところから。
カーボン・クレジットとは?
カーボンクレジット(Carbon Credit)とは、企業が森林の保護や植林、省エネルギー機器導入などを行うことで生まれたCO2などの温室効果ガスの削減効果(削減量、吸収量)をクレジット(排出権)として発行し、他の企業などとの間で取引できるようにする仕組み
ざっくりとしたイメージは上記の説明で掴めると思うけど、もうちょっと詳しく解説してみたい。
現在、全世界的に「脱炭素」「カーボン・ニュートラル」への取組みが強く求められている。日本は、GHGs(CO2などの温室効果ガス)について「国内の排出削減・吸収量の確保により、2030年度に2013年度比で46%削減、2050年までに排出量と吸収量を均衡させ、正味の排出量をゼロにする(ネットゼロ)」を目標としている。
(たぶん)この目標達成に向け、企業は、自社のGHGs排出量自体の開示や削減への取組みについて開示することが求められるようになった。
例えば東証プライム上場企業には、23年3 月期以降の有価証券報告書から、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、気候変動について、「GHGs排出量の削減目標と実績値等」を示す必要がある。
こうした動き以外にも、「SBTイニシアティブ」なんていうのもあって、これに基づきGHGsの排出削減目標を設定する企業が出てきている。
要するに、「環境にやさしい」「脱炭素に取り組んでいる」「実際にこれだけの排出量を削減した」ということを表明しなければならない・表明したい企業が増えてきているということだ。
で、実際に省エネや再エネ利用、燃料転換など様々な取組みをして「GHGs排出量削減」を進めるのだけれど、「製造工程上無理」とか「これ以上の削減はできないけど、社会全体の排出量削減に貢献したい」という企業もある。
こうした企業に手を差し伸べるしくみがカーボン・クレジット。
つまり、自らができない排出削減の『代替手段』として、他者によるGHGs排出削減の価値を『購入』し、自らの排出量と相殺する、という手段を取ることができるようにするものだ。
「GHGs排出削減の価値」を証明するのが、カーボン・クレジットで、これを買った企業は、相当量の排出削減を実現したことになる――というわけ。
経済産業省は、このカーボン・クレジットについて以下のように定義している。
ボイラーの更新や太陽光発電設備の導入、森林管理等のプロジェクトを対象に、そのプロジェクトが実施されなかった場合の排出量及び炭素吸収・炭素除去量(以下「排出量等」という)の見通し(ベースライン排出量等)と実際の排出量等(プロジェクト排出量等)の差分について、MRV(測定・報告・検証)を経て、国や企業等の間で取引できるよう認証したものを指すこととする。
例えば森林管理プロジェクトを推進した結果、〇〇トンのCO2吸収量を確保できたとするなら、プロジェクト実施前より社会全体のCO2排出量は〇〇トン減ることになるはず。
その事実が検証されれば、森林管理プロジェクトの実施主体は当該排出量削減相当のカーボン・クレジットを発行できるということなのだ。
そして、そのカーボン・クレジットを、上記のような「排出量を削減したい」と考える企業等に販売すれば、相当額が森林管理プロジェクトの実施主体のフトコロに入ってくることになる…。
その総額が、冒頭に示したように1兆円もあるみたいなのだ!
そのおカネが山林保有者や林業事業者に還流されれば、林業の復興にも結びつくはず…。
インタビューではそのあたりまで話は展開していったのだが、じゃあ、そもそもどんな取組みをすればカーボン・クレジットが発行できるのか、とか、どれだけのおカネが生み出されるのか、みたいなところが気になる。
このあたりは、別の機会にまとめてみたい。
あと、生物多様性クレジットというのもあるらしく、これについてはしばらく前に書いてみたのでご参照ください。