なかなか「壁」にたどり着かない

「それからはジャズ喫茶を経営する傍ら、毎晩キッチンテーブルで書き続けた」
Wikipediaによると、村上春樹の第一作「風の歌を聴け」はキッチンテーブルで書かれたらしい(この時に書かれたテキストが「風の歌を聴け」とは言及されていないので、これは僕の勝手な想像)。
普通はキッチンテーブルは食べ物を食べる場所で、そんな何かを消費する場所で何かを創造するってのはおもしろいなと思う。
僕もキッチンテーブル(や階段の踊り場)でなにかを書いたりするのは好きです。

今年(2023年)の四月に「街とその不確かな壁」が発刊されて、「1Q84」あたりから、なんだかついていけなくなったなぁと思いつつも「街」だとか「壁」なんて単語がタイトルについているせいで、発刊されてすぐに書店に買いに行った。
なんと言っても、僕の大好きな彼の作品は「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で、「街とその不確かな壁」なんてタイトルを目にしてその作品をイメージしないわけにはいかない。
そして、「街とその不確かな壁」を手にして思ったのは、とりあえずこの本を捲る前にもう一度「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読もうと思った。
僕の本棚には「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」が二冊ある。
どちらも最初の版でケースとパラフィン紙のついたハードカバー。
従兄弟が読みたいというので貸したら、インクでべっとり汚してしまい、申し訳ないとインクべっとり版とは別に新しく買ってくれた。
そんなわけで、僕の本棚には「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」が二冊ある。
かなりボリウムのある本なので、出かける時にも手軽に持ち歩いてというわけにはいかないので、新しく文庫版を買うことにした。
最近ではAmazonでも本を買うことはできるけれど、どうしてだか、この本は書店で買いたかった。
できれば、町にある小さな書店で取り寄せた「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読みたかった。
そう思いながらも、仕事が忙しくて、なかなか読み出そうという気にはなれなくて、改めて読む気になったのはこの年末になってしまった。
そうして実際に取り寄せると、届くまで数日かかるということなので、届くまでの間、彼の他の作品を読むことにした。
そして、今読んでいるのは「ノルウェイの森」で、以前に読んだ時にはあまりにもサラサラしていて、なんだか楽しめなかった。
今こうして改めて読んでみると、さすがに最初に読んでから36年が過ぎているからか、その時よりも楽しめる。
大好きだった村上春樹だなぁと思う。
好きな箇所がいくつも見つかる(ちゃんとメモしとけば良かったな)。
「そりゃ私あんまり頭良くないわよ。庶民よ。でも、世の中を支えてるのは庶民だし、搾取されてるのは庶民じゃない。庶民にわからない言葉ふりまわして何が革命よ、何が社会変革よ」
その女の子がはっきりイメージできて良いでしょ?。
しかし、それにしても、女子大生が「搾取」なんて言葉を使う時代でもあった(1960年代後半?)。
そういえば、この「ノルウェイの森」は映画化されていて監督はベトナム系フランス人のトラン・アン・ユンて人。
この人の作品に「青いパパイヤの香り」ってのがあるので、映画の好きな人は見てほしい。
アジアの湿度を上手に撮っています。
ところで、そのオーダーした「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」だけど、すでに手元に届いていて、「ノルウェイの森」を読み終えたら、すぐに読み始めることができるんだけど、その前に「1Q84」をもう一度読んでみようかなと思っている。
「ノルウェイの森」を読んで、時間を空けて再読すると新たな楽しみが見つかることを知ったからね
それから、卵焼きは最後に食べるタイプでもあることだし。

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