
「ル・マン休暇」を今年も満喫! ル・マン24時間耐久レース2024
2024/6/15~16に開催された、ル・マン24時間耐久レース2024。
毎年この時期に、フランスはル・マンにあるサルテサーキットを舞台に、24時間ぶっ通しで競い合うこのレースは「世界三大レース」にも数えられます。
それ以上に、世界中のモータースポーツファンにとって、年に一度のお祭りです。
今年101回目を迎えるル・マン24時間。
私も昔からこの時期は楽しみに見ています。
いつもはF1の記事を中心に書いてますが、その他のカテゴリーもしっかり見てるんですよ。
ただ、いつもの通りに詳細に書いてしまうと長くなって時間がかかってしまうので、今回は少し気軽に、しかし熱く!書いてみたいと思います。
毎年の楽しみ「ル・マン休暇」
ル・マン24時間耐久レースは、現地時間16時に始まります。
となると、日本時間では土曜日の23時。
この時間に合わせて、かつてはテレビ朝日で中継されていました。
深夜帯なので、23時から翌5時までぶっ通しで放送されるのです。
夕方からスタートしますが、フランスはちょっと日が長いみたいで、日が陰りはじめて夜が始まるころまで中継されていました。
昔はこの中継を夜通し見るのが楽しみでした。
レースは24時間続くのでまだ序盤ですが、それでも様々な事が起きるのです。
そのため、ル・マン24時間レースが開催される日は「ル・マン休暇」と題して、用事などを入れずに、ただひたすらル・マンを見続ける、ということを毎年やっていました。
初めて見たル・マンは、1991年。
ロータリーエンジンを搭載したマツダが総合優勝を果たした年です。
最初にこんな劇的なレースを見させられたら、そりゃハマりますよね。
90年代前半は、グループCカー末期の時代。
1992年はプジョーとマツダ、トヨタが争った年でした。
関谷正徳さんが乗るCASIOトヨタが3位表彰台に輝いたのを覚えています。
直前のF3000のレースで命を落とした、小河等さんの弔い合戦でもありました。
当時のプジョーは本当に強かった。
トヨタTS010は今でも好きなマシンですが、プジョーの前に苦杯をなめたのは悔しかった…。
その後、時代はGTカーへ。
F1で破竹の勢いを誇ったマクラーレンが初めて作ったロードゴーイングカー「マクラーレンF1」を擁し、関谷正徳さんが1995年に日本人初優勝。
LM-GT1時代は、ちょっとズルい感じがしましたけど、各メーカーがこぞって参戦したことで盛り上がりましたね。
カッコいいマシンが目白押しでした。
ポルシェGT1も、トヨタTS020も今でも好き。
SNSにたまに上がる、メルセデスCLRが飛び上がってコース外に吹っ飛んでしまうシーンも、リアルタイムで見ていました。
その時、テレビ朝日で解説していた、レーシングカーデザイナーの由良拓也さんが「ポーパシング」という言葉を使っていた事を先日初めて知りました。
ポーパシング、と言う言葉はつい数年F1で初めて知った言葉でしたが、由良さんは25年も前にそれを教えてくれていたのですね。
さすがはレーシングカーのスペシャリスト。
ちなみに由良さん、今年のフォーミュラEの中継でも解説者として出演されていました。未だ元気に現役です。
思い出深いのは、そのメルセデスの事故があった1999年のル・マン。
トヨタTS020を駆る日本人トリオが2位表彰台に上がった年。
トヨタは3台体制で参戦。
ヨーロッパのドライバー勢が駆る2台のトヨタが翌朝までにリタイヤ。
残されたのは日本人トリオが駆るトヨタのみ。
ドライバーは元F1ドライバーの片山右京、「ドリキン」土屋圭市、日産でデイトナ24時間レースを征したこともあるベテラン、鈴木利夫。
そこで、日本人トリオの実力の高さ、そして本気で勝ちに行く姿勢を見ました。
翌朝までに2位につけた3号車トヨタ。
トップのBMWを猛追し、もう少しでトップに立つぞ!と意気込んだその時…
トヨタ3号車のタイヤが突然バースト!
ドライブしていた片山右京さんの神がかり的なテクニックにより、無事ピットへ帰還。リタイヤを免れたのでした。
後にJ SPORTSのスペシャル番組に出演した土屋さんが「片山右京には頭が上がりませんね」と当時の神がかり的なドライビングを称えていました。
ちなみに土屋さん、その年のスタートドライバーを務めたのですが、元々は右京さんがスタート担当だったのだとか。
しかしものすごく緊張していたようで、それを見ていた監督のアンドレア・デ・コルタンツさんが「おまえ緊張してなさそうだな。よし!お前行け!」と急遽スタートドライバーを務めた、というエピソードを話してくれました。
3位に落ちたトヨタは猛追を続けましたが、惜しくも2位でフィニッシュ。
日本人トリオとしては最高位の成績を残したのでした。
テレビ中継は日曜日の夕方とゴールの模様も中継されていたので、手に汗握るレースをリアルタイムで見守っていました。
優勝できなかったのは悔しかったですが、今でも記憶に残るレースです。
TOYOTA Gazoo RacingのHPより。
1999年に2位表彰台に輝いた3人による振り返りのトーク記事です。
トヨタにとって忘れられないレース
テレビ朝日での中継は2003年まで続き、以降はCS局での放送になりました。
2000年代はプロトタイプカー全盛期。
特にアウディのプロトタイプカーは破竹の勢いを誇りました。
思い出深いのは2004年。
プライベーターとしてアウディのLMP1カーで参戦していたチーム郷が、日本チームとして1991年のマツダ以来、そして荒聖治選手が1995年の関谷さん以来の優勝を成し遂げました。
近年はJ SPORTSで中継されています。
なんと24時間連続生中継というフルボリュームの中継。
さすがに最近は「ル・マン休暇」をフルで満喫している訳ではなく、スタート後しばらく見た後、すぐに寝てしまいますけどね。
でも翌朝起きてチャンネルを合わせると、真夜中ではありますが中継してくれるのが嬉しいですね。
テレビ朝日時代はやきもきしながら中継を待ったものでした。
2010年代、ル・マンは世界耐久選手権(WEC)の1戦としてカレンダーに追加され、今に至っています。
クラス最高峰のマシンはハイブリッドカーになりました。
ハイブリッドカーと言えばトヨタ。
TS020の活躍からル・マンから退いていたトヨタですが、2012年から本格復帰。
思い出深いのは2016年のル・マンでしょう。
それまでNAだったエンジンをターボに変更。
大幅なパワーアップと信頼性を向上させた「TS050 Hybrid」でル・マンに挑みました。
ポルシェ、アウディという強力なライバルを抑えて終始トップを守るトヨタ5号車。
ドライバーはレッドブル育成出身のセバスチャン・ブエミ、あのスーパーアグリでドライバーを務めたアンソニー・デビッドソン、そして中嶋悟さんの長男にして当時トヨタのエースだった中嶋一貴。
いずれも元F1ドライバーという豪華なトリオ。
このまま走り切れば、トヨタ悲願の初優勝を成し遂げられる!
フィニッシュドライバーを務めるのは中嶋一貴。
しかし…
フィニッシュまで残り3分。つまり15時57分。
中嶋が無線で信じられない一言を叫ぶ。
「ノーパワー!!」
そのままゆるゆるとスピードを失うトヨタ5号車。
その横を、同一周回でずっとトヨタの姿を追っていたポルシェ2号車が駆け抜けてゆく…。
長年見てきたル・マン24時間レースの中で、一番信じられない出来事でした。
ファンにとって、そしてTOYOTA GAZOO RACINGにとっても大きな意味を持つル・マン敗退でした。
TOYOTA Gazoo RacingのHPより。
その後、2018年にトヨタは悲願の優勝を成し遂げています。
トリプルクラウンを狙っていたフェルナンド・アロンソと共に成し遂げた優勝でしたね。
息を呑む争い。勝利はどのチームに?
さて結局長く語ってしまいましたが、今年のル・マンはどうだったのか?
2021年より採用されているハイパーカークラス。
昨年から参加台数が増え、デビューイヤーからフェラーリがル・マンを制覇。
トヨタにとっては悔しい敗戦になりましたが、今年は9つのマニュファクチャラーが参戦。ハイパーカークラスは23台の大所帯となりました。
なんだか、かつてのビッグメーカー同士が競い合うル・マンが帰ってきた感じで、見る方もワクワクできるのが嬉しいですね。
ル・マンの天気予報は雨。
スタートからポールスタートのポルシェとフェラーリがやり合いますが、夜に差し掛かるころにはトヨタ8号車がトップ。
その時点で日本時間では日曜朝なので、ずっと見ていました。
居間ではJ SPORTSも見られるのですが、レースの行方が気になってJ SPORTSオンデマンドに課金もしました。
しかし現地時間の夜2時ごろぐらいから雨がひどくなり、とてもレーシングスピードでレースが継続できないとの判断のため、セーフティーカーが導入。
F1なら赤旗中断になるところですが、24時間レースですからそうはいきません。
セーフティーカーに先導されながら、ル・マンは夜明けを迎えました。
確かにこんなル・マンは初めて見たかもしれません。
現地時間朝9時ごろ、ようやく雨が弱くなり始め、路面も落ち着いたところでレース再開。
せっかく長い時間築いてきたマージンもチャラになり、スタートから15時間以上経った時点で、マシン差がほとんどないスプリント状態に。
かつては翌日に同一周回でトップ争いをすることすら珍しいことだったのに、最近のレースではクライマックスになっても同一周回でスプリントのようなヒヤヒヤするレースが多い。
見ている方はエキサイトしながら見る事ができますが、やってる方はたまったもんじゃないでしょうね。
上位を走るチームは全て同一周回。
どのマシンにも優勝のチャンスがある状況。
今年のル・マンは結末が読めない!
気になってしまって、残り3時間あたりからずっと見ていました。
ピットの度にトヨタの2台、フェラーリの2台とキャデラックが順位を入れ替えながらレースが進む。
しかし、残り2時間ごろから再び雨が…。
雨足が強まると、夜中のようにセーフティカーが入り、そのままフィニッシュの可能性もある。
しかし、すぐ止むかもしれない。
ステイアウトか?レインタイヤに交換か??
各車順番にピットインし、レインタイヤへ。
その後雨足は強まり、結局上位勢は全てレインタイヤへ。
しかしレースを左右するほど雨足も強くなりませんでした。
夜間ずっとトップを走り続けていた8号車は、フェラーリ51号車と接触して後退。
しかし、すぐ後ろを7号車が走っていたため、勝負は2台のフェラーリとトヨタ7号車の構図に。
どんな経緯かはしっかり見ていませんでしたが、トヨタ7号車とフェラーリ51号車のピットタイミングと、フェラーリ50号車のタイミングがズレた。
トヨタ7号車とフェラーリ51号車がピットインすると、フェラーリ50号車がトップへ。
計算上だと、50号車はラスト1時間の間のどこかでピットインしないと、燃料が持たない。
しかし絶妙のタイミングで50号車がピットへ。
3位に順位を下げると、しばらくして7号車と51号車がピットイン。
トップは50号車だが、果たしてチェッカーまで燃料が持つか??
中継映像には、各車のエネルギー残量表が。
明らかにトップの50号車のエネルギーが少ない。
走り切れるか?ピットインか?
24時間レースの筈なのに、なんだかフォーミュラEを見ているようなクライマックス!
50号車はペースをコントロールしながらトップを守る。
後ろの7号車との差が少しずつ縮まる。
雨足も、強くもならず弱くもならないコンディションが絶妙。
50号車も7号車も同じようなペースで走り続ける。
途中、GTマシンが止まってFCYになりかけたものの、特に大きなアクシデントもなし。
時計は16時を指し、ファイナルラップへ。
トップは変わらず50号車。
果たして走り切れるか?途中でストップしてしまうのか??
エネルギー表示は少しずつ減り続ける。
5%、4%…最後は3%になったところで最終フォードシケインに差し掛かる!
なんと、50号車のフェラーリが走り切って優勝。
7号車トヨタは辛くも2位。
フェラーリはル・マン2連覇。
トヨタは2年連続で悔し涙を飲む結果に。
ル・マン2024総括
今年のル・マンは、実力…はもちろんですが、ちょっと運が左右したレースだったんじゃないか、と思います。
昨年はBoP(Balance of Performance)がトヨタにとって厳しいものになったものの、速さと信頼性を兼ね備えたフェラーリに驚きましたし、完全に押さえつけられた格好になりました。
でも今年は、コンディション次第でどのようにも結果が転がってしまう難しいレース。
昨年ほどBoPは厳しくなかったものの、トヨタはウェットコンディションに強かった。
夜間はずっとトップを守っていましたが、激しい雨のために長時間セーフティカーランを強いられることに。
これは異例中の異例。
せっかく広がったマージンも、再スタートの頃にはすっかり間が詰まってしまい、残り5時間ごろからずっとスプリントレースを強いられることになりました。
どのチームにとっても本当にキツい状況の中、また雨が降ってきてしまい…。
最後まで気が抜けず、エキサイティングなレース展開でしたが、どのチームも本当にタフなレースだと思います。
トップを争った3台も目立ったミスなく集中力を切らさずに走り抜けた。
51号車のフェラーリに助手席のドアが開きっぱなし、というトラブルはありましたが。
…っていうか、トラックリミットとか完全無視のような気もしましたけど。
このル・マンではかなり厳しい状況だった7号車トヨタ。
まずマイク・コンウェイがレース前の負傷で欠場。
代わりにホセ・マリア・ロペスが乗ることに。
GR010には昨年まで乗っていたので問題なかったようですし、難しいコンディションの中しっかり走ってくれました。
予選もうまくいかず、クラス最下位からスタート。
それでもみるみる挽回し、優勝争いを繰り広げたのでした。
途中までは勝てるムードだったので、チェッカー後のクルーの顔は皆悔しさが滲み出ていました。
ハイパーカーで長くレースしてきたトヨタ陣営でしたが、ようやくライバルが出揃った。
しかしそれは、簡単には勝たせてもらえないことを意味します。
そんな中でも、2年連続してフェラーリと渡り合った。
この悔しさを来年にぶつけてほしいと思います。
来年こそは可夢偉チーム代表の笑顔が見たい!!
その前に、9月の富士ではフェラーリに目にもの見せてほしいですね!!
これだけ様々な顔ぶれを見せてくれたハイパーカー勢。
その姿を日本で見られるのは楽しみ!
ル・マンは終わりましたが、まだまだ続くWECにも注目です。
WEC富士オフィシャルサイト。
ル・マンでものすごい鍔迫り合いを見せてくれたハイパーカーやGT3マシンが、富士スピードウェイに集結!
9月13日〜15日開催です。
台風が来ないことを祈りながら待ちましょう。
結局日曜日中満喫した今年のル・マン休暇でした。
本当は暑い中家事をしていたら疲労困憊だったのでつぶやきに逃げようと思っていましたが、ル・マンの事を書き始めたらかなりのボリュームになってしまいました…。
今後もハイパーカーのエントリーは増える模様。
アストンマーティンもあのヴァルキリーを擁して参戦してくるようです。
WECやハイパーカーの事もいずれしっかりと記事にしないといけませんね。
ル・マン24時間🏎️🇫🇷
— TOYOTA GAZOO Racing (@TOYOTA_GR) June 16, 2024
【決勝速報】
9メーカー、23台もの激戦となった今年のル・マン24時間。
多くの強力なライバルとの激闘の末、
7号車 #GR010HYBRID
ホセ・マリア・ロペス/小林可夢偉/ニック・デ・フリースが2位表彰台を獲得しました🥈✨
たくさんのご声援をありがとうございました!!!… pic.twitter.com/JDYi7UP8f5
タイトル画面は、TOYOTA GAZOO RacingのオフィシャルXのポストより使用させていただきました。
トヨタ7号車の勇士!手に汗握るレース!
結果は惜しかったですが、これからも変わらず応援します!!
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