楠木ともりさんがラブライブ!から離れる決断をしたことについて
2022年11月2日
前回の記事を投稿した直後、ファンとしては信じられない発表がありました。
ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の優木せつ菜役、楠木ともりさんが降板するというのです。
降板という言葉はとても重い。
しかし、ネガティブな理由からではなく、彼女がずっと悩み、向き合ってきたある病気により、自身が下した決断でした。
このニュースが意味するのは、今後せつ菜ちゃんの声が変わってしまう、ということ。
せつ菜ちゃんが居なくなるのではなく、楠木さんが引退するわけでもない。
せつ菜ちゃんは今後他のキャストが声を当てる事になる。
楠木さんは今後も他のアニメや自身のソロ活動で活躍していきます。
彼女の今後の活動はもちろん応援したいですが、正直ラブライバーにとっては辛く悲しいニュースであることに変わりはありません。
今回は、楠木ともりさんのラブライブ降板について、今思うことを書いてみたいと思います。
楠木さんが向き合ってきた病気
楠木さんのオフィシャルHPによる公式な発表はこちらです。
2021年頃より、ライブパフォーマンスで踊るなど激しい動きをすると、関節に激しい痛みを感じるようになったそうです。
同年5月に開催された3rdライブの直前、上記を理由にパフォーマンスを制限すると発表があったのですが、数曲の演出に参加しない程度で、ほぼ今まで通りの内容。
そこまで影響があるとは思えませんでした。
しかし時間を経るうちに、テレビ番組でのパフォーマンスにも参加しなくなり、大きな会場では複数人が参加する曲から完全に外れるようになりました。
ライブのMCでは、事情を知るファンからの励ましの声に涙することも。
5thライブでは、フォーメーションを伴うパフォーマンスには参加できないものの、離れた位置でみんなと同じ衣装に身を包み、一緒に歌う姿を見る事ができました。
それは、他のメンバーが歌いだけでもいいから同じステージに立ってほしい、と懇願したことにより実現したのでした。
今後もこういった新しいトライを続ける、とMCで宣言した矢先、彼女の症状に正式な診断結果が出たのです。
遺伝性疾患「エーラス・ダンロス症候群(関節型)」
病気は遺伝性のもので、ライブパフォーマンスのせいで悪化したものではありませんでした。
しかし、万が一症状が悪化すると、将来車椅子での生活を余儀なくされたり、寝たきりになる可能性もあり得る。
記事を読む限りでは、完治の可能性は極めて低い。
症状を悪化させないようにするには、激しい運動をしないようにすること。
激しいダンスがダメ、となるとどこまでが許容範囲なのか?
ウォーキングやジョギングまでダメだと、日常生活にかなりの制限がかかってしまいます。
パフォーマンスを重ねるうちに先天性の症状が見つかるケースは、μ'sの時にもありました。
μ'sの人気が社会現象にまでなった頃、絢瀬絵里役の南條愛乃さんが膝の痛みによりパフォーマンスを制限する、という事があったのです。
病院で診てもらったところ、先天的に膝の骨の状態が正常ではなく、そこに無理をかけたため状態が悪くなってしまった、という事がわかったそうです。
それが元でライブ活動に参加できなくなるレベルの症状ではないにしろ、先天的な膝の状況により症状が回復しても再発する恐れがあったため、トレーニングで周囲の筋肉を増やすリハビリを行ったといいます。
そして、ファイナルライブには一部参加できない曲もありましたが、ファンの前に元気な姿を見せてくれました。
しかし、ファイナルライブに照準を合わせて数ヶ月に渡り準備していたため、μ'sとして出場が決まった紅白歌合戦への出場を断念せざるを得ませんでした。
厳しい言い方になってしまいますが、楠木さんの症状は改善の見込みが低く、このまま活動を続けていても以前のように全員曲の参加は難しい状況であることは明らか。
前述の5thライブの演出も、本人にとってはそれもしたくなかったと言います。
動かない自分を見せてしまうと、せつ菜ちゃんが動けないことになってしまうから。
全員曲は一人でステージに立つのとは違い、他のメンバーに合わせた動きが要求されます。
その結果、思わぬ激しい動きになってしまう可能性もある。
ただ、見る側にとっては1人分だけぽっかり空いたスペースは確かに違和感があったし、いつか輪の中に戻ってほしい、と誰もが願っていたと思います。
その分、5thライブの演出は一歩前進したという意味合いもあり、今後も試行錯誤を続けながらライブには出演してしてくれる、と私も思っていました。
楠木さんにとっても、仲間と一緒にパフォーマンスができないことは、ずっと気がかりだったと思うのです。
今回病名がはっきりしたことで、美しく、楽しい虹ヶ咲のステージをより多くのファンに見てもらうために、自身が離れる決心をした。
仲間がステージに立つ姿を見て、この姿をずっと見ていたい、ファンの皆さんにも見てもらいたいと思ったことが、今回の決断のキッカケとも話されていました。
ファンとしてはたまらなく寂しいですが、彼女自身ずっと悩んだ上での決断だと思います。
声優さんのお仕事について
ネットやSNSの反応を見ていると、「最近の声優は演技以外の仕事もあって厳しい」という意見もありました。
同じタイミングで、人気作品に数多く出演し、ライブイベントも数多くこなす声優の高野麻里佳さんが適応障害と診断されたというニュースもあったため、そういった声が上がったものと思います。
本来、「声優」というくらいですから、アニメや洋画の吹き替えを専門に行う役者さん、というイメージを多くの方が持たれていると思います。
ただ、だいぶ前から「声優」という仕事もボーダーレスになってきています。
声だけで演技して、アニメや洋画、海外ドラマの声を当てる、ナレーションを入れるという仕事だけにとどまらない。
もちろん、それだけで活動している人もたくさんいるのですが、人々の前に立ち、歌やダンスでパフォーマンスをする活動が普通になってきています。
また、歌手やモデルなど、畑違いの分野からこの世界に入る人もいる。
そして、その姿に憧れ、目指す人もいる。
今の声優さんのお仕事は、役者の域を超えて「アーティスト」とも言えると思います。
なぜそうなったか。
それは需要が多様化したからに他なりません。
今のような声優さんの活動が目立つようになったのは90年代あたりから。
夕方やゴールデンタイムに放送されていたアニメが深夜にも放送され、よりマニア向けの趣向が高まり、それに合わせて人気アニメに出演する声優さんもクローズアップされていきました。
活躍の場はテレビ以外にも、ラジオ、雑誌などの出版物、そして普及し始めたインターネットへ。
そんなムーヴメントの中で、アニメに出演する声優さんがユニットを組んでライブをしたり、作品とリンクしたライブ活動をしたり。
さらに声優さん個人にもスポットが当てられ、アーティストデビューをする方も増えました。
90年代はそういった流れが加速してブームにもなりましたが、実はそれより前、80年代にもアニメブームに乗り、声優さんが顔出しで活動する事がありました。
今や、声優さんがアーティストデビューするのは当たり前で、もはや「ブーム」から「文化」に昇華し、現在に至ります。
まぁ私も、その流れに乗ってこのジャンルが好きになったファンの一人なのですが、一般の人にとってそこまでの背景を掴むのは難しい。
そういった側面が、「声優さんは演技だけでなく、歌って踊って大変」「声優さんにそこまでさせるのは酷じゃないか?」といった意見につながったのかと思います。
しかし少なくとも、作品とリンクしてライブ活動を行う作品に出る人たちは、「選ばれて」その場に立っています。
声優としてアニメ作品に関わるには、必ずオーディションを受ける必要があります。
当然、アニメとリンクした歌のリリースやイベントがあり、ライブパフォーマンスもある、という条件を受け入れてオーディションを受けるわけですから、活動は制作側と声優さんとの双方同意の元成り立っています。
そういった難関を乗り越えたキャストは「選ばれた」存在なのです。
ただ、選ばれた人間だからといって、無理をしてでも最高のパフォーマンスを提供しなければならない、という事ではありません。
アーティストだって人間です。
活動の中で突然の環境変化で精神的に辛くなったり、病気や怪我に見舞われる事もあるでしょう。
精神的な面は周りのサポートが重要だと思います。
作り手側のサポートはもちろん、我々ファンもお便りやSNSのコメントなどで励ましたりする事ができる時代です。
休養した事で活動の幅を狭めたりする事がないようにしなければなりません。
しかし、先天性の病気が見つかる、という事は自身や周りがコントロールできる域を超えています。
その事で役を降りるという大きな決断をしたのであれば、悲しいですがその気持ちを尊重しなければなりません。
今後の展開について
ラブライブ!公式は優木せつ菜を引き継ぐキャストを選考中としています。
これは非常に難しい選考になるのではないかと思っています。
やむを得ないことではありますが、いつも聞き慣れたせつ菜ちゃんの声が突然変わるので、違和感を感じることがあるはずです。
今まで声優の交代を何度も見てきた経験上、最初はやはり違和感が生じるもの。
公式の発表では、ゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル オールスターズ」で収録済みの声は変えないと発表しているため、時期によりせつ菜ちゃんだけで声が変わることになってしまいます。
これがどういう結果をもたらすのかは、実際次のキャストが決まってみないとわかりません。
さらに、ライブパフォーマンスでかなりの実力を誇る彼女。
それに匹敵する、あるいは上回るパフォーマンスの持ち主ではないと今までのイメージを払拭できないのではないか?という不安もあります。
ラジオ等でキャストの皆さんのオーディション秘話を聞いて思ったのが、ラブライブシリーズのキャストは、演技や歌、ダンスの実力だけではなく、そのキャラにイメージが近く、キャラに似た人を選ぶ傾向にあると思っています。
せつ菜ちゃんに「呼ばれた」人が新たに現れるのか?そこは今から楽しみなところでもあります。
全く無名の新人が現れるのか?
ファンがよく知る実力者が引き継ぐのか??
多くの不安もありますが、ネットやSNS上でのファンの声は「新たなキャストに批判を向けないように、温かく迎え入れよう」という声が多く、ホッとしています。
熱心なラブライバーなら、きっとキャストが変わっても変わらず応援するでしょう。
ともりるが演じるせつ菜ちゃん
私が衝撃を受けたのが、2020年のラブライブ!フェス。
センターステージで「CHASE!」をパフォーマンスするともりる(楠木さん)の姿に、目が釘付けになりました。
正に、アニメ1期の侑ちゃんと同じような経験をしたのです。
その時の衝撃を過去の記事でこのように書きました。
※こちらの記事より引用
この気持ちは、今も変わりません。
2ndアルバムの「Melody」が本当に素晴らしかったのはもちろん、3rdアルバムの「LIKE IT! LOVE IT!」もアッパーなポップチューンで素晴らしかった。
衣装も可愛くて、トラメガを持ったパフォーマンスが印象的でした。
アニメ1期の「DIVE!」も、ロックサウンドがより洗練されたクールなナンバー。せつ菜ちゃんのスタイルが確立されたと言っても過言ではないでしょう。
ただ個人的に、4thアルバムの「ヤダ!」は物足りなかった。
今までの曲とは真逆の、彼女の可愛さを全面に出した曲でしたが、激しいパフォーマンスを制限した結果こういったスタイルになった事は明白で、ライブでもトロッコに乗って手を振りながら歌うだけにとどまりました。
アニメでもゲームでも、虹ヶ咲の「推し」を問われると「ヒトリダケナンテエラベナイ!」のですが、せつ菜ちゃんは好きなキャラの一人です。
5thライブグッズのメガネケースも購入し、愛用しているほど。
でも、フェスでその才能に惚れたのなら、せつ菜ちゃんの曲だけでなく、ソロ音源も聴くべきではないか?
数年前にデビューし、シングル5枚、アルバム4枚をSONYのレーベル「SACRA MUSIC」より発表しています。
これを機に、ソロワークスも聴いてみることにしました。
当然、せつ菜ちゃんのような元気いっぱいのロックチューンばかりではなく、曲の音楽性は多彩。
しかし、どの曲もしっかり歌い上げる。
丁寧な歌い方も、語りかけるようなフレーズも自然に歌う事ができる。
改めて、才能溢れるシンガーだなあと思います。
お気に入りの曲は「narrow」、「よりみち」、「山荷葉」。
どれも「CHASE!」や「DIVE!」とは真逆の曲調ですが、ともりるの歌を存分に感じる事ができる曲たち。
特に好きなのは「よりみち」。
単純にこういうグルーヴィなナンバーが好きなだけなのかも知れませんが、彼女の澄んだ声も、曲に寄り添うような歌い方も好きです。
コーラスは「武内P」こと武内俊輔さんなんですね。ナチュラルに美声です。
せつ菜ちゃんのキャスト交代まであと4ヶ月とちょっと。
ともりるのラストステージは特に明言されていないため、今の所2月のA・ZU・NAのライブが有力です。
最速先行申し込み券が付いたCDは発売と同時に売り切れ。
その様子を見て、早速2日目の最速先行申し込み券がついたアニメのBlu-rayを予約しました。
恐らくかなりの倍率になるでしょうが、もし当たったら現地でその姿を目に焼き付けようと思います。
まだ、彼女が歌う「Melody」を生で聞いたことがありませんから。
タイトル画像は、ゲーム「ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル オールスターズ」のシナリオより使用させていただきました。
【お知らせ】
ラブライブ!アニメの感想とまとめや、キャストライブのレポートなどの記事をまとめた「ラブライブ!シリーズを語る」マガジンを公開しています。
虹ヶ咲に限らず、μ's、Aqours、Liella!を扱った記事もありますので、お時間がある時に読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!