METAFIVEがライブを配信してくれた意味~METALIVE 2021~
2021/11/20に配信されたMETAFIVEの最新ライブ。
元々は今年7月に実施される予定だったが、種々の理由から中止に。
その前に発売される予定だったアルバムも発売中止になった。
このコロナ禍の閉塞的な空気の中に流れたニュースは青天の霹靂だった。
あのMETAFIVEが再集結してくれるという。
ライブへは行けないまでも、久々のアルバム発売は本当に楽しみにしていた。
時は流れて11月。
オリンピックが終わり、世間の空気が落ち着いたところで発表された、新作アルバム付きの配信ライブ。
なんと、ライブを行うはずだったあの日に収録していたという。
アルバム「META」をショップで手に取り、初めて聴いた時の衝撃。
そして象徴的な名前を冠した「ウィンターライブ」を見に行った時の胸の高鳴り。
あの時からずっと切望していた、METAFIVEのライブ。
配信という形になってしまったが、それでも再びあのグルーヴを感じることができる。
しかも、最新アルバムのおまけ付き。ライブを堪能した後に、新曲を収録したアルバムが届く。
結果的に、ということになってしまうが、この趣向が面白い。
本当は、多くの人にこの珠玉のサウンドを聞いてほしいのだけれど。
確実にMETAFIVEが好きで、アルバムを切望していた人の元に新作が届く。
新曲も既存曲も織り交ぜた、新しいMETAFIVE
ライブはリアルタイムで見ることができず、11/23の落ち着いた時間にようやく見ることができた。
配信終了日ギリギリのタイミング。
サイトにアクセスし、再生ボタンを押してから待ち時間が長い。
会場に入場して、開演するまでのワクワク感を高める演出なのだろうが、元々アーカイブを見ているのでもどかしい。
1時間ほどスキップすると、ライブが始まった。
タイトだが無機質なグルーヴのSEに乗ってメンバーが登場。
ゴンドウトモヒコ、テイ・トウワ、砂原良徳、LEO今井、そして小山田圭吾。
高橋幸宏さんの姿はない。サポートドラマーは事前にアナウンスされていた通り、白根賢一氏。
SEかと思ったら、LEO今井が歌い始めた。新曲「Full Metallisch」。
ステージは見に行ったウィンターライブのまま。バックが一面スクリーンとなり、映像がサウンドとシンクロして流れる。
無機質でクールなサウンドの中に、小山田さんの軽快なカッティングと、ゴンドウさんのフリューゲルホルンが溶け込む。
そして白根さんのドラムが加わる。タイトで、力強い。
METAFIVEと言えば幸宏さんのスマートなビートが特徴のひとつ。
それよりも重い印象だが、グルーヴにうまく溶け込んでいる。
初めて聴く曲だが、METAFIVEらしさをひとつも失っていない。
オープニングからじわじわと気持ちが高ぶってくる。
ライブはニューアルバムの曲中心かと思いきや、3曲目で耳なじみのあるイントロが流れてきた。
「Musical Chairs」。空撮映像が印象的。
メインボーカルがLEO今井なのは以前も今回も変わらないが、新しいサウンドの中に少し寂しさも感じる。
そして、アルバム「META」の中でも好きな曲、「Maisie's Avenue」。
コーラスはゴンドウさんが務める。白根さんのグルーヴに乗って、ブラッシュアップされたサウンドが響く。
クールな中にもどこか温かな印象があって好きな曲だが、以前聞いたものと少し変わった印象だった。もちろん、これはこれで好きだ。
「Gravetrippin'」白根さんの力強いグルーヴが曲をグイグイ引っ張ってゆく。
ドラムセットは幸宏さんも使用していたブラックのクリスタルのもの。
グルーヴもフィルも絶妙。そこに乗るデジタルサウンドや小山田さんの特徴的なギターもそうだが、何よりLEO今井のボーカルがドライブする。
元々、6人それぞれが素晴らしいソングライターであるMETAFIVE。
曲ごとに表現されるそれぞれのサウンドが象徴的だが、この6人ではないと表現しきれないものだと思っている。
今回は幸宏さんが不在。しかし、それによりまた違った側面を見せてくれる。
かっこよくて楽しいのだが、やはり少し寂しさも感じる。
「Luv U Tokio」。アルバムの中でも好きな曲を演ってくれるなんて!
曲調も映像もテイ・トウワっぽい一曲。
オープニングのボーカルは幸宏さんのあの声だが、今回はなんと小山田圭吾!
甘く、独特のボーカルも小気味いい。
そして2番からはLEO今井のパート。いつもと変わらぬパフォーマンスがクール!
間奏で響くゴンドウさんのユーフォニアム。
あの「TOKIO」のコールは懐かしさの象徴であるが、同時に都会的なサウンドを象徴する。
5年の時を超え、またこの曲をライブで聴けて良かった。
新生METAFIVEとも言うべき今回の編成は、白根さんのタイトで重いグルーヴが、METAFIVEを新しいフェーズに持っていってくれたと思う。
もちろん、幸宏さんのドラムを否定するわけではないが、いい意味で「別物」になった印象。
それは残念なことではなく、新たな形に進化したMETAFIVEを存分に楽しませてくれる。
「変わらぬもの」を見て安心する気持ちもあるが、それとはまた違った一面を見せてくれた時の意外さや新鮮さも楽しい。見るたびにいろんな色を見せてくれるMETAFIVEは本当に素晴らしい。
その一方、やはり幸宏さんがいないことは寂しい。
細野さんのラジオにゲスト出演した時の放送を聴いたが、元気そうで安堵したものの、その声を聴いてちょっと心配になった。
愛犬と過ごす静かな日々をSNSで見ながら安堵しているが、やはりステージに帰ってきてほしいというのが正直な気持ち。
お恥ずかしながら、長いことYMOのファンではあるものの、前述のウィンターライブで初めて幸宏さんの姿を生で見た。
初めて生で聞くあの歌声。「Radio Junk」を聴けたときは嬉しかった。
ご自身のペースで活動してほしいが、もう一度あの歌声を聴けることを待ってる。
幸宏さんのボーカルが象徴的な「Turn Turn」も、メインは小山田さん。
新しい姿のMETAFIVEが作り出すサウンドの楽しさと、やはり感じてしまう寂しさを象徴する曲だったとも思う。
そしてベースとギターの一発からLEO今井の一声!「Don’t Move」!
YouTube で配信されたスタジオライブの映像でMETAFIVEの魅力に引き込まれた人も多いだろう。
私もその一人。
体を揺さぶる4分打ちのグルーヴに、LEO今井のタイトなボーカル。
オリジナル音源では幸宏さんがあのヴォイスで脇を固めたと思ったら、突然ドラムに座り、ソロをプレイしだす。
デジタルと生のグルーヴの融合。
しかも今回は、間奏のDon’t Move!の一声で全員がブレイク。微動だにしない。
緊張感に溢れた長い時間が続き、一発のフィルと共に再び流れるグルーヴに鳥肌!
ライブならではの臨場感!やはりこの曲はすごい!
ラストナンバーは、昨年発表された新曲「環境と心理」。
長い沈黙を経て発表された新曲だが、メインボーカルが小山田圭吾とは珍しい、と当時は思っていた。今考えてみると、幸宏さんが体調不良で活動を縮小していた頃だったと思う。
オリジナル音源では後半に幸宏さんもボーカルを取り、トリプルボーカルとなるのだが、この日は LEO今井と二人で歌う。
デジタルのリズムに、今までのMETAFIVEにはなかったポップさ。
今までの曲にあったようないい意味での緊張感はなく、なんとなく温かな印象。
盛り上がりが最高潮に達して終わるのではなく、ミディアムテンポで緩やかに歌い上げるこの曲がライブのラストを飾った。
この曲は特に象徴的だったが、今回小山田さんがボーカルを務める曲が多かった。
幸宏さん不在となると、自身のユニットでもボーカルを取る彼が適任ではあるが、さすがにあの当時の状況ではこの構成でライブを開催することは無理だっただろう。
今回のMETAFIVE再集結にあたり、この話は触れねばならない。
改めて説明の必要はないだろうが、小山田圭吾氏の事について。
小山田圭吾氏の一件で思うこと
ひろゆき氏が「小山田圭吾のいじめ問題って、3年に一度ぐらい炎上してるけど、何か法則でもあるんですかね?」と言っていたが、私は今回このことを初めて知った。
フリッパーズギターをほぼ聴いたことがなく、コーネリアスも注目してこなかった。
ただ、坂本教授のライブやHASを経てのYMOの際にギターとして参加していたことから、注目されている人なんだなという印象。
サウンドは前衛的でアグレッシブだが、サウナ好きにとってはドラマ「サ道」のOPでおなじみのあの曲で、アンビエントなサウンドも奏でる。
私にとっての小山田圭吾という人は、そんな印象だった。
騒ぎが大きくなるにつれ、なんでこんなにバッシングを受けているんだろう?と興味を持ち始める。
話題となる記事の切り抜きを読んでみると、確かにひどい。
学生時代とはいえ、こんなことをしていたのか…と印象も悪くなって当然。
ただ、数年前から気になっていたことでもあるし、多くの人が同じ意見だと思うが、いくらなんでも叩かれすぎだと感じた。
結果、東京オリンピックの開会式の演出メンバーを辞退することに。
炎上現場に火をくべる人たちの望みは叶ったのだろうが、なんとも後味が悪い。
アンチが騒いだ結果、ということのみでは語れない、多くの要因が絡んでいたようにも思う。
彼の犯した罪は、当然学生時代に行っていたいじめと、それを被害者側の気持ちを考えずに紙面上で語ったこと。しかも、それを20年以上も放置し続けてきたことが非常に重く、結果的に今になって彼の首を絞める結果になった。
そもそも、読んでいい気持ちのしない記事を掲載して売り出す出版社側の罪も重い。
そういう時代だった、と語る人もいるが、時代に関係なく気分のいいものではない記事だ。
9月に発表された彼の経緯説明と謝罪文、そして週刊文春のインタビューに応えた記事も読んだ。
雑誌に掲載された内容の一部は真実ではなく、直接関与せず傍観していただけのことも話してしまったという。しかも、記事の内容は事前にチェックすることが許されず、内容を知ったのは雑誌の発売後だった。
真実を語ってくれることによって、かつて犯した罪が許されるわけでも軽くなるわけでもないが、モヤモヤした気持ちは多少晴れた。記事に書いてあったことを主犯格として実行していたのであれば問題だが、実際はそうではなく、一部のいじめに関与していたことは認めたうえで、実際はいじめの現場を傍観したり、怖くて止めに入ることができない事もあったようだ。
そう考えると、やはり残念なのは20年以上に渡って釈明も謝罪もしなかったこと。
傍観していたこともいじめに加担していたことになると思い、記事が発表されてから経緯説明も反論もしてこなかったと言うが、今回のようになる前に何か手を打つことはできたのではないかと思う。
しかも「多様性と調和」を謳うオリンピックの開会式に参加することになり、今までで一番騒ぎが大きくなってしまった。そもそも、小山田氏に参加を打診した経緯を紐解いていくと、落胆しか覚えないような内容でもあったわけだが…。
ただ、多くの音楽ファンや関係者も同じ意見だと思うが、今回の小山田氏への過度なバッシングや、彼の活動を締め出すような社会的な流れはあまりにも非生産的だと思う。
METAFIVEのニューアルバム発売中止を例にとってみると、確かにあのタイミングで作品を世に出してしまうと、また別のバッシングに発展する可能性もあるだろうし、他のメンバーにも迷惑がかかると思う。それ以前にレコード会社の利益に繋がらない可能性もある。
しかし、このまま抑えつけられる事が続くようでは、その先の発展が見込めない。
「作品に罪はない」という言葉はその通りだと思う。
これ以上バッシングを続け、彼を活動停止に追い込むことが人道的と言えるだろうか。
人ひとりを「殺す」も同然の事を世の中は実行しようとしていたのではないだろうか。
今回のMETAFIVEのライブを無観客で収録し、後日配信するという方法は、次を見据えるという意味でとても大きな意義があったと思う。
それでもバッシングする人はするだろう。私のツイートにも異を唱える人がいた。
それは仕方ない。考え方は人それぞれなのだから。
でも、過去の過ちに向き合い、世間に対してきちんと説明し謝罪したのであれば、私はそれでいいと思うし、チャンスをあげてほしいと思う。今までそのフィールドで活躍してきた人なのだから、表現の場を取り上げることはフェアじゃない。
今回、METAFIVEはそういった道筋を示してくれたと思っている。
ニューアルバムも配信ライブのおまけに付くのだから、せっかく作った作品も無駄にはならなかった。素晴らしいことだと思う。
今後も、小山田圭吾氏の活動には注目していきたい。
そして、幸宏さんを含めた6人で再びステージに戻ってくれることを強く願っている。
タイトルの画像は、METAFIVEオフィシャルのツイートを引用させていただきました。
ニューアルバム、手元に届く日が待ち遠しいです。
素晴らしいライブでしたが、今度は有観客のフルライブを見たいですね!
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