【CatcherInTheRelay】フェイクをぶっ込め!!!【解決編❶】
10周年である。2014年8月27日に稀代の名盤「Catcher In The Spy」がリリースされて間もなく10年を迎える。
そして、Catcher In The Relayである。
アルバムリリース日へのカウントダウン企画シリーズ自体が、今回の5枚目、10周年を盛大に祝ってやるぜとの企画者の魂胆ありきで始まっているのである。4シリーズこなしてきて「次は当然5枚目だよね!」と巧みに読み手の脳内に溶け込む綿密かつ壮大な計画もついにここまで来た。スパイってそういう意味ですか?
このCatcher In The Spy(CITS)というアルバムには異常崇拝者がいっぱいいるが、その理由ならワタクシから並べてご覧に入れずとも執筆者たち自ら勝手に語り継ぐことだろう。
兎にも角にも、Catcher In The Spyの素晴らしさをどうにかして自分の言葉にしてみたくてたまらない、そんな文字書きが集った。
「最後まで自由にやりまっしょ〜よろしくね🌟」
【推理編】4日目;【解決編】サイレンインザスパイ
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さて、世の中は「明日の自分は今日の自分より1日長く生きたのだから、もっと偉い自分のはず」という元を辿れば脆弱な根拠しか見つからない都合のよい妄想を共有して成り立っている。そうでなければ、年功序列などというシステムの成立には至らない。
筆者は本ブログリレー企画のアイデアが浮かばないまま2024年7月を迎えた。UNISON SQUARE GARDENの20回目の誕生日、ベストアルバムリリースに武道館3Days。「いつまでも素晴らしかったライブの記憶だけを考えていたい!」と余韻に溺れながら、上記の妄想を持ち出してようやっと執筆に取りかかった。
「明日は、もっといい記事書けるよね?」と嘯き、「推理編」、「解決編」と二段階に設定された締切を「常識はどっか飛んでっちゃったよ笑」などと踏み倒したくなりながら、後回しに後回しを重ねた結果両手に残ったのは「マスターボリューム(トゲなし)」と「武道館のシャンデリア・ワルツ(2024)」だけしかない。事件ならとっくに起きてるのだから、2024年7月サイコー!などと言って遊んでいる場合ではないのに。
言い訳して逃げ出しちゃうなら最初からやるなよ、と叱られるのを恐れながら、語り出したくたまらず筆を取ったのは自分なのだから、楽しく書き切るより他に道はないのだと奮い立たせていよいよ本題に差し掛かる。
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連続する日々において、「明日の自分は今日の自分より偉い」という漸化式的盲信が成立しないことは、もはや説明不要であろう。ゆえにこの事実に踏み込むために文字は重ねない。しかし、Catcher In The Spyではこの連続性の否定が二つの観点より重要な意味を持つ。
❶Catcher In The Spy以前より事件は起き続けている。
Catcher In The Spyのアルバムキャッチコピー(帯)は「事件ならとっくに起きてる」だ。これは、ちょうどアルバムの折り返しを迎えた7曲目”流れ星を撃ち落せ”の「大事件なら既に勃発中」から導かれたことが明白である。ロケットスタートを決めるサイレンインザスパイとシューゲイザースピーカーからエース格シングルの桜のあとへ、その後も多彩な楽曲を展開するアルバム前半。確かに流れ星を撃ち落せがその姿を現した時、既に大事件は勃発している。その通りかもしれない。
そうか?
アルバムのスターターを務める”サイレンインザスパイ”の名称は「サイレン」と、アルバムタイトルと共通して付けられた「インザスパイ」の組み合わせである。つまりこの楽曲固有の役割としては単に「サイレン;信号・警告のための音響装置」と理解してよいだろう。ちなみにサイレンの語源は美声で船を惑わす神話の生き物、セイレーンとの説があるらしい。
サイレンが鳴らされるタイミングを考えると、現代において身近なのはやはりパトカーや救急車だ。通報を受け、緊急車両が現場へ駆けつける際に、サイレンは鳴らされる。他にサイレンの代表は空襲警報や災害時の避難誘導など。つまり現場では既に何かしらの事件が起きており、その事実を広めるためにサイレンは鳴り響く。
Catcher In The Spyにおいて一曲目が負った役割が「サイレン」ということは、このアルバムが始まった時点で「事件ならとっくに起きてる」といえるのではないか。
Catcher In The Spyより前から、事件ならとっくに起きてる。
いつから?
前作CIDER ROADはご存知Catcher In The Spyの漆黒と対をなす、キラキラとしたユニゾンなりのポップを前面に打ち出したアルバムだ。作者自ら「遠足先」と言ってしまうようなCIDER ROADの振り切った態度がCatcher In The Spyの方向性を決めた。その意味では、このCatcher In The Spyという大事件以前の、シャンデリア・ワルツまで至る道でとうに事件が起きていたと言えるかもしれない。
「明日の自分は今日の自分より1日長く生きたのだからもっと偉い自分のはず」という発想は裏を返せば昨日までの自分を劣った存在として否定することである。
一曲目サイレンインザスパイが始まった時点で既に事件が起きていたことを仄めかすCatcher In The Spyには、世間に蔓延る「新作は前作より良いものだ」という漸化式的盲信を棄却する圧倒的な力がある。では、もう少し踏み込もう。
事件とは何なのだ?
事件はステージで起き続けるもの。それならば「とにかくライブをやりたい」と今日まで歩み続けてきた彼らのことだ。結成当初よりずっと、事件を起こし続けてきたのではないか。日進月歩技を磨きながらも音を鳴らす動機はいつでもまっすぐで迷いない。『ロックバンドは楽しい』と宣ってデビューを果たしたUNISON SQUARE GARDEN。20周年の節目に打ち出した『ロックバンドは、やっぱり楽しい』のキャッチコピーは「進化」と称して肯定されることの多い「経時変化」とは対立する「不変」の姿勢を明示する。変わらない思いがあったからこそ、遠い昔にリリースしたものを含めたいつの時代の曲も輝く、そんなライブが続いていく。
アルバム冒頭に鳴らされたサイレンの警鐘より、Catcher In The Spyより前から起き続けている事件に思いを馳せるのも悪くないかもしれない。
❷明日は必ずしも今日を継承しない。
10周年である。Catcher In The Spyリリースから10年、これは、アルバム制作期間の半ばに行われたギターボーカル斎藤宏介氏のポリープ摘出手術(2014年3月24日より2ヶ月弱活動休止)より10年を迎えることも意味する。
多くの人にとって声は連続する日々で継承されていく不変の個性だ。しかし、20周年の記念日には『天性の声帯』とも称された『透明感に溢れながらも個性的なトゲを持つ』斎藤氏の歌声は特定の1日を境に不可逆的な変化を迎えた。明日は必ずしも今日を継承しない一つの例である。
とはいえ、Catcher In The Spyを聴いた肉親からは「これ(手術前の収録作)は手術後の曲よね?」と誤答を得たというくらい、本人以外にとっては微々たる違いらしい。微々たる違いかもしれないけれども、「僕が歌えば四重奏」なUNISON SQUARE GARDENの音楽では「歌声」がかなりを占めるのも事実である。以上踏まえ本稿でのもう一話題。
問題提起:サイレンインザスパイは手術前後いずれに収録が行われたのか。
わかっていること:Catcher In The Spyには手術前後の曲がちょうど6曲ずつ。
先行してリリースされた桜のあと、harmonized finaleは手術前、シューゲイザースピーカー(R&R Band Wagon #81 )、黄昏インザスパイ(音楽と人 2014年5月号)は手術後に収録されている。
ヒント:『個性的なトゲ』のお手本としてマスターボリュームの「誰も知”ら”ないんだよな」、「突き”刺”してよ”マスター”」、そして「描いてけ時代の彼方」が教科書に載っている。該当箇所を2009年オリジナルのマスターボリュームとマスターボリューム(S.B style)で比較していただきたい。(どちらもとってもかっこいい🌟)
なお、「そんな教科書どこにあるねん」の声には残念ながらお答えすることができない。教科書は今、焼却炉にあるから。
ヒント2:手術後の収録が明言されているシューゲイザースピーカーにも『個性的なトゲ』を見つけることができ(「今宵も無心に行くのは”誰だ”?」)、以降の楽曲でも頻度は少なくなっているもののトゲは健在である。(Own Civilization(nano-mile met)歌い出しの「I’m back」や10% roll, 10% romanceの「ロマンスは”加”速していくかしら」)(※個人の見解です)
筆者による2024年8月14日時点での最新予想
【手術前】
◎桜のあと
君が大人になってしまう前に
メカトル時空探検隊
◎harmonized finale
天国と地獄
【手術後】
◎シューゲイザースピーカー
蒙昧termination
流れ星を撃ち落せ
instant EGOIST
◎黄昏インザスパイ
残るは2曲、サイレンインザスパイと何かが変わりそう。
サイレンインザスパイが古いかなと思いつつ、JET CO.期とかなり古くに成立した何かが変わりそうが「一人だけど独り”じゃ”ない」の特大のトゲを携えて「本当にそれでいいのかしらん?」と問いかけてくる。
筆者はこの問題に決着をつけられる読者に期待して、この企画記事の機会を私的利用しています。
有力情報のタレコミをお待ちしております。
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陰謀論者による不穏な幕開けとなったCatcherInTheRelay解決編1日目、サイレンインザスパイについての一文をお届けしてきた。しかし、とんだフェイクである「キャッチコピー、サイレンインザスパイ説」の他に何を真面目にお話しできただろうか。
例えばサイレンインザスパイのサビ「キラリキラリ目とハートにチカチカしちゃう!」こんなものに真剣な検討が要るだろうか?「CITS2014@新木場STUDIO COAST映像の『し〜ちゃう』の絶妙な角度から切り込むカメラワークがサイコー!斎藤さんかっこいい!!!」の他に感想、なくない?これを読んでどのような画角であったかすぐに頭に浮かんでこなかった者はすぐにDUGOUT ACCIDENT付属のDVDにて復習すること。
座礁してしまったこの船は乗り捨てて次の曲、【解決編】シューゲイザースピーカーへお進みいただきたい。サイレンインザスパイの美声に惑わされた筆者はもう救いようがないところまで来てしまった。
最後に一つくらい真実をお伝えしようか。
サイレンインザスパイでは何が目とハートに煌めきを突っ込んできたのか。
それは、”武道館のシャンデリア・ワルツ”です。それ以外にあり得ません。
スパイスなどというさりげない存在では留まらず、実際には必要不可欠な人生の根幹となるCatcher In The Spyに生かされています。多くの人々を救い続けて、また狂わせ続けて10周年、おめでとうございます!
[ここに「UNISON SQUARE GARDEN Revival Tour "Catcher In The Spy"」トレイラーのYouTubeリンクが将来的に入ります]