「ハナムケのハナタバ / 青空」にまつわる雑記【Song for Prism 雑記 Vol.2】
こんにちは、蜷川です。
LIVE FUN!! に向けた企画を動かしていたらシャニマス関連 CD に関する記事がなんと約 8 か月ぶりとなっていました。
もうタイトルの時点で「今更」感が強いですが、リハビリもかねていろいろと聴いてて感じたポイントを記していきます。
※諸事情により(CDをすぐ参照できないため)、アーティスト情報は作詞・作編曲までとさせていただきます。状況が解消し次第追記予定です。
ハナムケのハナタバ/コメティック
作詞・作曲・編曲:園田健太郎
コメティック楽曲といえば、最近のボカロ曲などのいわゆる「Z世代」的な音楽の潮流を汲んでいる CANVAS シリーズの 3 曲でしたが、『ハナムケのハナタバ』はその潮流こそ若干残してはいるものの、根幹にはいわゆる哀愁ラテンと呼ばれるジャンルの要素が光る楽曲となっています。
ラテン音楽というと、世代が近い人であればポルノグラフィティの『アゲハ蝶』あたりが有名でしょうか。もうちょっと時代をさかのぼると、他には 松任谷由実『輪舞曲』、TUIBE の『さよならイエスタデイ』などがその「風」を強く感じる曲です。
最近のシャニマス曲では SHHis の『White Story』もこの流れの中の楽曲と言っていいかもしれません(というのを実際 CANVAS 07 の記事でも書いています)。K-POP の文化の中でも日本の哀愁ラテンの文化からの派生として広がっていますが、今回の『ハナムケのハナタバ』でもそれとは違った派生形と考えることができそうです。
さて、哀愁ラテン、もとい広くラテン音楽の一つの重要な要素として"Tresillo"(トリージョ)と呼ばれるリズムパターンがあります。これは「ターンターンター(さーんさーんに)」と8分割した時間を 3:3:2 の区切りでリズムを取るもので、この哀愁ラテンでも一つの重要な象徴として用いられるケースが多いです。(詳しくは以下記事)
『ハナムケのハナタバ』でもサビのメロディーのリズムはこのTresilloで構成されています。楽曲だけでなく同時に実装されたコミュ『GOOD BYE FLOWER』も「別れ」をテーマとして、過去への懐かしや故郷を思う寂しさを伝えるのには哀愁ラテンというジャンルを引用したのはなかなか効果的なように感じます。
その一方で B メロの前半では三連符という一つのカタマリを 3 つ均等に分けるリズムを取っていて、「3 つの分け方」のバリエーションが見えるのもコメティックに対する多角的な視点が見えるようで面白いですね。
青空/ノクチル
作詞:秋浦智裕 作曲・編曲:渡辺徹 (Blue Bird's Nest)
なんといってもこの曲で印象的なのはイントロからAメロにかけての完全純性のカノン進行でしょう。
カノン進行とはパッヘルベルのカノンで曲の最初から最後まで終始変わらずに続けられるコードのパターンで、ドを基準の音とすると「ド-ソ-ラ-ミ-ファ-ド-ファ-ソ」(パッヘルベルのカノンでは「レ-ラ-シ-ファ-ソ-レ-ソ-ラ」)というパターンを低音のチェロがずっと続けているのが以下の曲を実際聴くとわかるでしょう。
カノン進行自体は大衆音楽の文脈でも多く用いられてはいるのですが、その多くはベースを階段式にした分数コードの使用(「ド-シ-ラ-ソ-ファ-レ-ファ-ソ」)や、転回系と呼ばれるコードの解釈変更、コードとコードを繋ぐ経過的なリハモコードの挿入……などなど、いろいろなパターンでアレンジされたものが世には多く出ています。
これらのようにカノン進行は比較的サビで使われる傾向がありますが、『青空』と同様にA メロで使われる例として外せないのは、やはりスピッツの『チェリー』でしょう。
そんなカノン進行ですが今回の『青空』ではさきほど色々と言及したようなアレンジのない、パッヘルベルのカノンそのままの純性のカノン進行になっています(もちろんキーは違いますが)。イントロ~Aメロが純性カノン進行、Bメロは「IV-I-V-VIm」軸、サビは「IV-V-I-VIm」軸と王道も王道なコード進行をベースにしているためか、すごく曲としての落ち着きというか立ち振る舞いの安定感を与えてくれます。このようにコードをぐちゃぐらといじらずに各種パーカスをモリモリしていくことでビート感を出す手法は洋楽っぽさを感じるだけでなく、どこか今の邦楽・アニソン界隈への一種の問題提起・反骨精神(?)のようにも感じられます(※個人の感想です)。CANVAS 06 がなかなか凝った曲が多かった分、『青空』のシンプルさのコントラストが際立ちますね。
==========================
今回は以上です。
それでは~。
🐚
前回↓
次回↓