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君の名は「焼け野原」

#バッタを倒しにアフリカへ
旧約聖書、出エジプト記に、
イスラム教のコーランに、
大地を覆い、
太陽を隠すほどの蝗害の場面がある。
🦗🦗🦗
時は流れ、
その者、緑の衣を纏いて、
砂の大地に降り立つべし…
(♫ランランララランランラン)

宮田珠己や高野秀行を買った方なら、
聞いた事はあるであろう名著。


通称「バッタ博士」
ふざけたビジュアルだが、
これも研究のための資金集めの一環。
遊び半分のYouTuberとは一線を画す。

涙ぐましいセルフプロデュース、
プロモーション撮影にも余念がない。
しかしこんな努力を、
彼は何に注いでいるのか。

旧約聖書 出エジプト記 10

第八の災い

主はモーセに命じました。
「あなたの手をエジプトの国に差し伸べなさい。
いなごが出て来て国中を覆い、
雹の害を免れた物を食い尽くそう。」


冒頭でも書いたが、
アフリカでは古来から蝗害(こうがい)
に悩まされている。

想像出来るだろうか、
ひとたび発生した数百億匹のバッタが、
東京都を埋め尽くすような光景を。

群体の発生予測が立て難く、
農作物に限らず緑という緑が残らない。
地球上の陸地面積の20%は、
バッタによる被害に遭い、
これは人類史上の森林伐採を凌駕してしまう。

🥗🦗

地球をバッタの支配から守るため、
ここで1人の緑色の日本人が立ち上がる。
遠くモーリタニアの地で、
大蝗害の研究を続ける「コータロー」
殺虫剤は人間や家畜にも有害で、
決定打にはなっていない。

しかし発生源を突き止め、
被害が拡大する前に押さえ込めれば、
50億円の被害が3億円で済む。

🦗💨

現地で研究し続けられるポジションが、
日本にはほとんど無く、
今でいうクラウドファンディングや、
セルフプロモーションが必須だった。
何より、書籍化に際して、
興味の無かった読者も、
笑って楽しめる文章力!
やっぱノンフィクションは、
読んでオモシロくてナンボ。

僧侶(コック)
魔法使い(通訳)
戦士(ドライバー)
を連れて、勇者(研究者)コウタロは、
バッタ退治の旅へ出る。
デビュー戦がサハラ砂漠、
メンバーみんなレベル1。
こいつぁいきなりベリーハードだ!

バッタを倒すぜアフリカで




そして、2024年、続編が刊行された!
大幅ボリュームアップ、信じ難い事だが、
600ページもあってその全部が面白い。
2024年、ノンフィクション大賞を贈りたい!


バッタ。
現地語では「locust」🦗
その意味は「焼野原」

だがこれだけの被害が出ながら、
「被害が出ている」という事しか分かっておらず、
バッタそのものの繁殖行動や雌雄研究が、
ほとんどされていない!


ウルド氏は目の付け所も秀逸と言える。
しかし「科学」とは「再現」が、
出来なければいけない。
同じ状況下、環境下なら、
同じ結果が出なければ証明出来ない。

オープンワールドのモーリタニアで、
これは中々過酷なのだ。
しかもバッタに触れ合ううち、
ウルド氏はバッタアレルギーになってしまう。
普通慣れそうなモンだろ?

バッタバッタと


前作は25万部以上売れ、
海外で翻訳され児童書が刊行され、
異例のベストセラーとなった。

これは当然、
みんながバッタの生態に、
関心があるからじゃない。
宮田珠己や高野秀行の本を買うと、
オススメに出るあたりお察しだが、
文章がアットー的に面白いのだ!

冒頭で、成立する大量のバッタカップルに、
嫉妬するあたりもういきなり面白い🦗

本筋をバッタ研究とするならば、
紀行文、旅行記、珍冒険譚、
グルメ記録、プライベート雑談で、
ポッキポキに話の腰を折りまくる。
そんな長かったパスタが、
ペンネみたいになったものを、
美味しく美味しく頂ける。


学術書としての観点はオマケ、
物事に本気で挑みつつ、
それを楽しく知って貰う、
読んで楽しんで貰う、
全ての研究者にそれが出来たら、
物事への関心が、興味が、好奇心が、
彼らの活動源へと変わるかもしれないのだ。
まぁほぼ個人だからこそかもしれないが。


#前野ウルド浩太郎
#バッタ #ノンフィクション
#バッタを倒しにアフリカへ


⚠️注意
(本書はフルカラーですが、
大量の虫の写真が掲載されています)

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