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幻想小説『招魂祭』

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宵闇より深淵へ
とつと流(なが)るる参道は

燈々(あかあか)と
提灯(ちょうちん)掲げ

闇へ蝶(てふ)を
誘うかと

蠱惑と招く
色を模(も)す

たつと
慣れぬ足取りで

参道を
ゆくりと掠(かす)めば

極彩(ごくさい)と
幾多の小さき社(やしろ)

所狭しと
並び建て

声の罹(かか)りて
甘味を持たせ

朗(ろう)と誘いて
幽玄を魅(み)す

繋(かか)る舌先
味わえば

桃源の庭へ
招かる心地

ほうと思惟さえ
蕩(とろ)かして

先へと促す
善(よ)いの途(みち)

手に与(あずか)りて
覗(のぞ)きと観(み)れば

てらと艶めく
丸硝子(まろがらす)

艶美を映して
微酔(びすい)と舐(な)めば

ちつと煌めく
金銀箔かと

色を含めて
夢路へと

耳に触れるは
夜這(よば)う声

艶(つや)を含みて
吐息と雑(ま)じり

湿(しま)る指先
請(こう)と添(そ)う

魅(み)せる儘(まま)と
戯(たわむ)る爪先(つまさき)

影を踏みては
夜半(よわ)を駆け

灯り廻れば
焦(じ)れるかと

夜陰(やいん)と潜む
紫黒(しこく)の地

視得(みえ)ぬ本殿
褪(うつろ)いて

醒(さ)めぬ私怨を
仄(ほの)めかす

玄(くろ)き腕(かいな)に
抱(いだ)かれば

為す術(すべ)亡(な)しと
胸に留め

腕に絡ます
月明かり

標(しる)べを一つ
提げ折らば

ふつと
儚き光彩を

月を享(う)けると
残光滲(にじ)ます

光被(おお)きと
賑やかし

未知を一度
離れれば

ほつと頼らぬ
篝火(かがりび)と

列と連なる
石燈籠

上(あが)りを希(もと)めと
昇らす足は

夜の深きに
身を潜め

其処(そこ)啼(な)き
沼と泥路(ぬかる)めど

先と照(ひか)りし
輪を染めば

喜色安寧
治(おさま)りて

亦(また)一つと
足を遊ばす

堪らずと
纏(まと)わる風は

揺れし髪先
乱れと弄(あそ)び

此方(こち)へ
手招かすも

陽の施(ほどこ)し
輝(ひか)る飾りに

肌に触(ふ)るるも
暴挙と責(せ)まれ

おのと嘆きて
袖を濡らすも

唯(ただ)
逢いにと

可憐の面(おもて)
慈愛の瞳

慕わしきと
眼を妬(や)きて

鎮魂と
厭(あ)かぬ扉に

獅噛(しがみ)し指先
堪え難しと

白きへ染まり
私を見詰(みつ)むも

手を添えて
微笑み孵(かえ)せば

荒(あら)みし心も
添い遂げしと

柔和と溶けて
言の葉散らす

逢いたきと
この日を待ちて

俟(ま)ち侘びし
永年の世

生れ変わりて
此処まで来(き)しも

結ぶ縁(えにし)は
紐解(と)かる

はつと
月より零れるか

彼の涙と
影を打たば

千切れし追憶
言祝(ことほ)ぎて

走馬(そうま)の宿業(しゅくごう)
胸に堕(お)つ

晴れぬ哀悼
緊(ひし)抱え

身を窶(やつ)しし
我が隻翼(せきよく)

護らる日輪(ひのわ)
喪(うしな)えば

澱(よど)みし刻(とき)の
永さ故(ゆえ)

鬼と見紛う
鋭き角を

朱(あか)しと染めて
牙を魅(み)す

異形と祟(たた)う
彼の身を

寵愛深しと
見果てぬと

暗き底より
繰(き)たるかと

狂愛焦(こ)がす
煌(きら)めきを

そつと撫(な)ぜれば
絶え絶えと

優しき息を
吐(つ)き果てる

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