ただただキュンとなる話
私はオーストラリアに留学していた時にある男の子にであいました。
彼の名前はムニ。
韓国人のガタイの良いスポーツマンで
クラスに1人はいるようなおちゃらけタイプで盛り上げ役。
カッコイイタイプではないけど、つぶらな瞳と優しさで学校での人気がとっても高かった。
※でもそれはみんなにとっても、恋ではない。いるよねそういう人!!
彼の親友はタケシっていう日本人だったので、いつもくだらない日本語を覚えては日本人の笑いを取っていた。
『Good morning Mio!キョーノアサ、ウンコデタカ?』
意味もわからず笑顔で挨拶してくるムニが可愛くて、みんなが心から笑っていた。
入学してすぐ、上級生にキザでクールな日本人の男の子を見つけた。
ダンスをしていて英語もかなり流暢な彼はテツ。
およそ遊んでいそうな俺様タイプで、今思えば大嫌いなんだけど
私のタイプは〝英語がペラペラな塩顔〟なのですぐに恋をした。
恋に臆病な私は、とにかくテツに対してなんのアクションもできなかった。
彼は『イケてるチーム』に属していて(当時のギャルとかギャル男が沢山いるグループ)、私はちっとも近づけなかった。
それでも学校内の階段を登っている時や、教室移動の時に意識せずにはいられなくて、
【すれ違っちゃったらどーしよう】
なんて思いながらいつもドキドキしていた。
勉強しなさいと、今なら思う。
ある日、日本人のパーティがブリスベンのクラブイベントとして開かれることになった。
読者モデルの友達サヤカと向かうと、学校の生徒がほとんど来ていた。
※日本人のパーティだけどムニも来ていたw
私は当時20歳で、お酒もほとんど飲んだことがなかったので、メニューを見つめて困り果てていた。
もちろんクラブだって初めてだ。
こんなに凄まじい音が鳴り響く中で、英語でオーダーを通す事すらままならない。
するとどこからともなくテツがやってきた。
『どうしたの?』
『お酒ほとんど飲んだことがなくて…どうしたらいいかわからなくて途方に暮れてた』
『ん〜そうか、うんきっとこれなら大丈夫、頼んであげるよ』
ウルトラかっこいいテツは
『Hey、Can i have 2Vodka Lemonade?』と言い、私にこう耳打ちした。
『俺、今からブレイクダンスバトルに出るから、絶対見ててよ』
田舎娘にはこのシチュエーションはドラマチックそのもので
しばし言葉を失い一人で赤面。
今思えば、この男は完全に確信犯なのだけど、当時の私は全くわかっていなかった。
テツにオーダーしてもらった、初めてのウォッカレモネードとあの言葉
そしてこのダンスフロアの空気感に完全に飲み込まれた。
私はふにゃふにゃっとして、足元がおぼつかなくなるのを感じた。
すると
『Are u OK?』
いつもの笑顔とは違って、とても心配そうなムニが、私の腕を支えてくれていた。
『アイムオッケー!!ハッピー!!』
ムニは『OK』といってまたいつもの笑顔に戻ったけど
その後も自然と、私を壁にもたれさせてくれたり、冷房が当たる場所に移動させてくれたりしていたと後からサヤカに聞いた。
私は『もうすぐテツがダンスするよ!』と叫んでばかりで、
全く気がついていなかった。
テツとはどうなったかというと、男女4人でテツの家で遊んだ日
知らない間に2人消え、家に私とテツ2人だけになってしまい
狼さんが降臨したことは言うまでもありませんが、
奥手だったので盛大に拒否をしてそれっきりです(涙)
ムニとは恋愛感情はありませんでしたが、デートをしたことがあります。ある日
『MIO,出かけよう』と言う誘いを受けました。
ムニ曰く
『MIOはブリスベン滞在期間があまりに短くて、楽しいことも見るべきスポットも全く体験できていない。
一日に詰め込んであげたいからとにかく時間を作って!』とのことでした。
(いい人すぎる)
私はビビリなので、英語が満足に話せない状況での韓国人とのデートに不安を覚えながらも
この優しいお誘いを無下にはできず行くことに決めたのです。
その日のことは今も鮮明に覚えています。
携帯もない時代、待ち合わせはブリスベン駅。
なかなか来ないから不安になりかかったその時、
両手にタピオカジュースを持って走ってきたムニ。
『遅れてごめん、どうしてもこのタピオカを飲んでもらいたくて』
ムニは汗だくなのにニコニコで、
私は嬉しくなっちゃって、
でも『Thankyou』としか言えなかった。
『今からスーパーに行くよ』
手際よく、チキンやサラダやジュースを買い込むムニ。
『チーズ食べれる?ヨーグルトは好き?』
優しい心遣いが本当に自然だ。
食べ物を買い込んで何をするのかと思ったら、
そのまま植物公園へ連れて行かれて、
昔のドラマみたいにベンチにハンカチを引いてくれて、どうぞって。
私が座ると、ムニはスーパーで買ったものを沢山並べて
何とリュックからはラジカセとスピーカーが飛び出した。
太陽の下で、楽しい洋楽を流してくれて、ピクニックがはじまったのだ。
英語なんてそんなにできないのに、2人だけで何を話したのか覚えていないけどとにかくとても楽しかった。
その後はカジノ、サウスバンク、ショッピングモールなどを案内してもらって、夕暮れ時は丘に登った。
この星空は絶対に見せたかったと豪語する通り、
確かにとても美しい星空を見ることができる場所だった。
丘に座って、空を眺めても
『Beautiful』としか言えない私。
ムニは何か話しているけど、全く聞き取れない。
仕方がないので、日本語を話してみた。
『めっちゃ綺麗だね、日本だとこんなの見れないよ』
するとムニも韓国語で何やら話し始めた。
『@¥6;ゞ∞∃〜』
『うん、そうだよね、わかるわかる』
『●※¥3・〆』
お互いの言語で『綺麗』って何て言うのかを教えあったり楽しく過ごしてはいたけれど
私は心底悔しかった。
こんなに綺麗な場所に連れてきてくれたこと
楽しい休日を過ごさせてくれたこと
小さな心遣いが嬉しいこと
クラブで守ってくれたこと
Thank Youという言葉でしか私は表現ができなかった。
いつか、もっと伝えられるようになりたいと思った。
学校がまた始まり、いつものように
『ウンコデタカ?』
『そんなこと言っちゃダメだよ!』
そんな楽しいやり取りをしながら過ごした。
そしてついに最終日を迎えた。
ムニは悲しんでくれるかなぁと思っていたら
『Hey,MIO.When will you leave?』
『Tomorrow』
『Yse...OK、See you someday.』
『Yeah...』
意外にもあっさりとした様子に拍子ぬけしそうだった。
--------帰国後--------
帰国して一週間が経った。
夜、いきなり知らない番号から電話がかかってきた。
不安になりながらも、何となく海外からのような気がして電話を取る。
『YOU ARE LIAR!!!!』
いきなりそう叫んだのは、紛れもないムニだった。
『Why??アイムノットライヤー!!』
『No. You said I will go back to Japan tomorrow that day』
『YES!アイアムインジャパン!!』
私はあの日、あの最後にムニにあった日、確かにムニに『明日帰る』と言った。
もちろんそれに嘘はない。
朝、空港に向かって、飛行機に乗ったんだ。彼は続けた。
『I got up at 3AM,and went to the airport to meet you.Im waiting for u in front of the airport all day with bouquet. But you didn't come up...』
ここまで聞いて、私はすぐにわかった。
私は間違いなく日本に帰国したけど、乗り継ぎ便だったためにドメスティック空港を利用したんだ。
それを知らないムニは朝から国際空港で私を待っていた。
なんてこった。。。
最後にどんなサプライズかまそうとしてくるんだこのジェントルマンは!!
私はまた『サンキュー』と『ソーリー』しか言えない自分に途方にくれた。
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時は過ぎ、あれからもう15年が過ぎてしまった。
彼は韓国で経営者になったそうだ。
『ウンコデタカ』ばかりいっていたあのムニが。
でも、彼の人柄が伝わってくるように、誕生日には数多くの人から彼を慕うメッセージが書き込まれていた。
きっと彼は誰にも驕り高ぶることなく、自然に優しくサポートができる社長なんだろう。
日々忙しく過ごす彼と、この15年で会ったのは2度だけ。
1度目は留学直後で、2度目は5年前だ。
2度目に再会した時は、日本人・中国人・韓国人の5名での会食を予定していたけれど、夜23時の待ち合わせに向かってくれている最中に仕事のトラブルで呼び出され彼はUターンで会社に戻っていった。
翌日に予定を変更してやっと会うことができたわけだ。
10年ぶりに会うわけビックイベント
通訳2名完備!!
当時は20歳だった私も30歳
確実に歳をとったわけで
まぁ老けたわけで
でもやっぱり可愛く見られたいというのが女性の心理。
念入りに化粧をして、その時を迎えた。
体が丸くなって、昔のような筋肉質ではなくなったムニが、同じ笑顔でそこにいた。
私を見るなり、少し驚きながら、可愛らしいつぶらな瞳をクシャッとさせた。
少し驚いた原因はわかっていた。
20歳のただただ元気丸出しの田舎娘は、その後都会で就職して、恋愛を沢山経験し、酸いも甘いも噛み分けた。
女性らしくなったし、いっちょまえに可愛く振る舞うことも覚えた。
嫌だった奥二重も、親と同じく年をとって二重になった。
そんな私を見て、ムニは違和感を感じたようだ。
『MIO、もっと笑ってよ。』
『笑ってるよ?』
『ちょっと違う。すました顔なんかしなくていい。太陽みたいにギャハギャハ笑うハッピースマイルがMIOらしいんだ』
ムニがそう思ってくれていることを知った時、
何かがガランと、崩れて軽くなったことに気が付いた。
よく見られようという努力とか、もちろん大切だけど
ムニはきっと、私がおばさんになっても、これからもっと老けても
可愛くなくても、同じように見てくれるんだ。
それがこんなに心強いことだとは、思わなくて。
本当に嬉しかった。
家族みたいにあったかかった。
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そしてご存知の方もいるように、15年の年月が経過して今、私は英会話を再開した。
やっぱり自分で話したい。
オーストラリアでのお礼をしっかり伝えたい。
目標を2021年と決めて、渡韓に向けて動き始めた。
だが、しかし!!
フォロワーさんはご存知のように
再開は突然に訪れることとなった。
そう、2019年6月、ムニと会うことになったのだ。
予定より2年も早い再開に、私は完全にナーバスだ。
※通訳さんがその日に限ってバングラディッシュ出張…
2人きりの2時間、私のアプリシエイトの気持ちは伝えられるのか。
みなさん、見守っていてください。
完
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