コンテンツ・プランナーのススメ #09
変形スクリーンのつくり方① ドーム映像「Let's Go To The Moon」
弊社の細川CDが率いたポカリスエットのキャンペーン「Lunar Dream Capsule Project」は、世界中の子どもたちから集めた「将来の夢」を、ポカリスエットの形状をしたタイムカプセルに詰めて、実際のロケットに搭載して打ち上げ月面着陸を目指す、という壮大なプロジェクトだ。
チームメンバーとして参加した私は、前々から作りたかったドーム映像を提案した。#07で触れたドックヤードマッピングのFRAMEが「左右の視野を映像で埋める」ものであったため、今度は左右だけではなく「上の視野も映像で埋める」拡張をやりたかったのだ。
宇宙の文脈を持つCONTENTにピッタリなFRAMEとしてのプラネタリウム。
メディア発表会でスカイツリーにある「天空」を借りて、そこでプロジェクトの概要とともに、ドリームカプセルに夢を載せた子供が、宇宙飛行士になって月面に降り立つ未来の物語をドームスクリーン用にフルCGで制作した。
16:9に変換したYouTube版だと迫力が伝わらないと思うが、後半のストーリーパートは圧巻である。ロケットに搭乗する宇宙飛行士の主観映像をドームスクリーンで観ると、さも自分がロケットに乗っているかのような体感をもたらす。また、ロケットの真横スレスレを通る発射時のカメラワークは、視野を包まれた環境だととんでもなくスリリングだ。今でいう「没入感」を出すための演出が随所に散りばめられている。
舞台設定となる2045年のロケットや月着陸船、宇宙服はリサーチをもとにデザインされ、ISSやスペースデブリといった本筋とは直接関係ない要素も入れ込んで、リアリティとエンターテイメント性を両立させたコンテンツになっている。
この映像はその後、子供たちの夢を集めるために、空気を入れて膨らませ一度に10人ぐらいが鑑賞できる「簡易プラネタリウム」セットと一緒に全国を周り、結果10万人を越える夢をドリームカプセルに搭載した。
2014年に打ち上がる予定で始まったプロジェクトだったが、着陸船の仕様変更や打ち上げ延期などが相次ぎ、何度も頓挫しかけた。しかし、多くの人々の夢を預かった責任がある。もはや単なるキャンペーンを越えた仕事であった。結果、実際にロケットが打ち上がったのは2024年。10年もの歳月が流れた。これだけの期間、諦めずに継続させた大塚製薬さんの姿勢には頭が下がる思いである。
10年にわたる記録をまとめたプロジェクト映像を載せておく。
大人たちが本気になって夢を追うドキュメンタリー感動巨編になっている。
空を見上げればすぐそこにある月ですら、人類にはまだ遠いのだ。
<CREDIT>
Creative Director : Naoya Hosokawa (Drill)
Content Writer : Jun Nishida (Drill)
Director : Hiroaki Higashi (Stoicsense)
Producer : Akira Oishi (TAIYOKIKAKU)
Production Manager : Shoichi Suwa (TAIYOKIKAKU)
Music Director / Producer : Bruce Ikeda (JKD Collective)
Client : Otsuka Pharmaceutical
Agency : Drill+Dentsu
Production Company : TAIYOKIKAKU