中年女のひとり公園デビュー
数年前の花見のときに、突然の雨や日焼けが嫌だなという単純な理由でタープを買った。
アマゾンで数千円で買える手頃なやつだ。
思えばなんのこだわりもなく値段だけで選んだと思う。高すぎても手が出ないし、逆に安すぎても信用がならないという間を取った商品だ。
張り方などわからなくてもなんとなくいけるやろ?と思って花見の朝設営を始めようとしたら説明書の言ってることがまったくわからない。
偶然場所取りに早く来てくれたロペスさんに一緒に立ててくれとお願いした。
ロペスさんが山登りとソロキャンプに造詣が深いことはなんとなくTwitterで知ってたので渡りに船!頼りになる助っ人参上!という感じだった。今思うと地面は部分的にコンクリートだったという悪条件でよく形をつけて立ててくれたものだと思う。
数年後、コロナでどこにも行けないという状況下で、家で外国旅行気分になれる番組ばかりをボーッと観ていたときにヒロシさんのと迷宮グルメ異郷の駅前食堂にはまった。ヒロシさんの率直な感想がとにかく衒いがなくて面白い。
ソロキャンプ動画にも目覚めてヒロシのひとりキャンプのすすめも欠かさず見るようになって、徐々に自分も簡単なことからアウトドアをやってみたいと思うようになった。
中でもタープを地面となる3箇所にペグ打ちするだけで簡単にテント風に立てられるビークフライという設営方法に興味を持った。
土の地面がむき出しにならずカバーされ、なおかつ中を人に見られないところがいい…インドア派&コミュ障の私にピッタリな設営方法だと思った。これでデイキャンプをやってみよう…!
数年前に花見用に買ったタープを持ち出して、動画を参考に近所の公園で立ててみた。まったく思ったようにできない…
薄々わかってはいたけれど私はDDタープ用に考案されたビークフライという設営方法をかなりデカ目のヘキサタープ(BUNDOK製)で無理矢理立てようと頑張っていた。おりがみの鶴を六角形の紙で作るようなことを初回で大胆にもトライしていたのだ。
40分くらいポールを立てては合わせ倒して格闘してもとめどなく崩れ、形にならない。顔から背中から全身汗だくだ。
今日はこれぐらいにしといたるわ!と池乃めだかのようなセリフを心で吐きながらそそくさとタープを丸め込み、保険に持ち出したビニールシートで10分ほど休んでそのまま撤退した。
ダサい…ダサすぎる…!
誰かに一部始終を見られていたとしたらそいつを弾丸でブチ殺していたかも知れない。つくづく日本が銃社会でなくてよかった。
しかしながら、向こうは愛する家族に夢中でひとりぼっちの中年女のことなど端から気にしてはいないのだった。
帰って今すぐDDタープ!という気持ちが高ぶり早速アマゾンで購入した。3*3にしておけばいいものを、花見用に何人かで入ってもいいものにしたいというどっちつかずの心も働いて3.5*3.5にしたけど、やっぱデカい!
ひとりで公園で張るにしてはスケールがデカすぎるかもだが、気にせずやってみる。次の週さっそくリベンジに向かった。持ち運びに良いカートワゴンも買った。勢いでママチャリも買った。
ビークフライは私でも簡単に張ることができた。やっぱり買ってよかった。ポールを入口付近で一本立てるだけで一瞬でテント風になった。
私の城の完成だ!!!
通り過ぎる老人が、変なテント…とつぶやいては通り過ぎていった。
老人にはわからないんだよ!と心で毒づいた。
トイレに行って帰ってくるときに、前方から来た若いベビーカーカップルの旦那さんの方が、オッオッ?何これ何これ!という表情で羨ましそうに私のテントを覗き込んでいた。
フフッ…わかる人にはわかるのよ!!と木の陰からその様子を見つめ、満足げに鼻息を荒くした。
今見るとたしかにゆるゆるの変なテントだね…