ダイエットサプリ詐欺事件 その2
2020年11月14日(土) PM
この日の午後、さっそくライフに診断書の写真を添付してメールを送っておいた。
土日だというのになんでこんな仕事みたいなことをしなきゃならないんだ。
己の軽率さを呪った。
HPの約款には、「お体にあわない場合について」という項目があり、当社の商品が届いてから10日以内に連絡をください。診断書もご提出ください。という文言がある。
土日を入れればギリギリ10日で返事をしていることになるので、このメールが無事届くことがキーになるはずだ。とりあえずのアリバイはこれで完了したことになる。
証拠にするために購入時に見たあのピンク色の広告も必死で探してみたが、いくら探しても同じ広告が出てこない。ツイッターで同様の被害者がいないか調べてみたところ、詳しい方によれば、どうやら差しどめ要求で広告の見直しをしているため同じ広告は引き下げてしまったというようなことが書いてある。
なんということだ…。もうあの広告に騙される人がなくなるのは良いことだが、あのときキャプチャーできなかった証拠写真を、「適格消費者団体」という正義の味方の存在によってもう永遠に取り出すことができない…という皮肉なことになっていた。
仕方がないので、私はミヤモトさんの言葉を無視して、ネットに放流してある誰かの投稿にあった100円モニターの画像を、自分がキャプチャーしたもののようにメールに添付しておいた。
解像度が低いのか、文字などはザビっている。Photoshopで多少シャープをかけて、拾い画像だとバレないようにトリミングなどで細工をした。
向こうがインチキなら、こっちも多少のインチキで返してやってもいいだろう。
ということで、11/14 15:00に送ったメール文面は以下のようなものだった。
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「先日100円でラクフロラを購入させていただいたものですが、先日20袋ものラクフロラが承諾もなく送られてきた上、はがきでコンビニ払いの請求書が届いたのですが、そのようなコースに承諾したつもりはありません。
1回目の服用で体質に合わなかったのか目のかすみがひどくなりましたので解約しようとおもっていました。診断書ももらっています。未開封なので返却しますので解約してください。
広告では2回目に4ヶ月分を送りつけるといった契約の文言はありませんでした。その広告のキャプチャもあります。
消費者センターにも相談します。
解約の手続きをお願いします。よろしくお願いします。」
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これでどう出てくるだろう。不安を抱えたまま日曜日も過ごした。
2020年11月16日(月)
この日の朝、9:30を過ぎた頃に、私は勇気を振り絞って(株)ライフのお客様コールセンターに電話をかけた。
ヤマダさん(仮名)という声のボリュームが極端に弱い、柳のように細い印象の男性が電話に出た。
「先日ラクフロラをネット広告を見て注文した木村です。土曜日に2回目をキャンセルしたい旨を書いたメールを送ったのですが、読んでもらえましたでしょうか?」
そう伝えると「担当に確認してこちらから連絡しますのでお待ちください」と信用できないような返答をしてきた。
今すぐにでも解約したい私は、
「診断書もあるので、今すぐ解約したいです。メールに添付しています。」と伝えた。
すると、眉を寄せるような弱々しい声で
「お客様、残念ですがお客様がご注文されたラクトクモニターコースは2回目の39,500円がセットとなった商品ですので、必ずそちらのお振込をしていただかないと解約はできないコースとなっています。」
「でも私が見た広告画面にはそんなこと全然書いていなくて初回100円としか書いていませんでしたよ。おかしくないですか?」
「いいえお客様、そちらを開いたページに2回目がセットのコースだと書いてあるのです。間違いなく書いてありますので、それを支払ってもらわないと解約できません」
「いやいや、そんな約束していないのでいますぐ解約してもらいたいんですが」
「いえお客様それはできません」
まったく埒があかない。暖簾に腕押しとはこのことか。
苦労して取った診断書が無駄になるのかと思うと私は激しくうなだれた。どうしても支払いたくない!!
とりあえずこいつじゃ話にならん!と思った私は一旦捨て台詞のように「絶対に解約してもらいます!こんな商法許せません!!」と震える声で叫ぶようにして電話を切った。
プロじゃないとこれは無理だ。そう感じた私は土曜日にかけた千葉県のセンターとは別の、市の消費者センターに電話をかけた。
もう完全に還暦はすぎているだろうというゆったりとしたおじいちゃん声の、ハヤシさんという担当の方が丁寧に話を聞いてくれた。声からイメージするハヤシさんは棋士のひふみんを真面目にした感じの雰囲気だ。ひふみんが不真面目という意味ではないが、とにかくしっかりとして信用できそうな方だった。
私は土曜日に医者で診断書を取ったこと、不当な広告として適格消費者団体に差しどめ要求の出ている悪徳会社であることなどを説明した。
ハヤシさんは、「それはだいぶ手強そうですね。木村さん、今から私、この会社に電話して木村さんの代わりに返品解約の申し出をしてみます。こちらから話せば少しは態度も変わるかもしれません。ちょっと待っていてくださいね。」
そう心強い言葉をくれて、すっかりもうお任せします!お願いします!というすがるような気持ちでハヤシさんに下駄を預けた。もとから私のような素人が太刀打ちできるような敵ではないのだ。話がわかるような相手だったらあんな厚顔無恥かつやり方の汚い広告が打てるはずはないのだ。
ボロボロとした味のしない焼飯を食べながらヒルナンデスを観た。テレワーク中でよかった。こんな煩雑な一刻を争う出来事が起きているときに会社で集中して仕事などできるはずがない。コロナ期間であったことで救われたこともあった。
早く解決してほしい。
1時を回った頃にハヤシさんから電話があった。
興奮しているのか少し声がグーグーガンモのように裏返っている。
「木村さん、私あの会社に電話しましたけどねぇ!まあー本当に一筋縄ではいかない会社ですね。かなり私もがんばってこちらの希望を伝えましたけど、解約はできないの一点張りで。一応ホームページに載っている解約条件を提示した上でかけあってみましたが、話が通じたかどうか。話が平行線だったので、とりあえずこちらの主張が通るかどうか、また改めて別の担当者からかけ直すということでしたから少し待ってもらってもいいですか?
ハヤシさんから怒りのオーラが噴き出している。このままでは引き下がらないぞという気合いが十分に感じられた。