6月29日 三度目の正直
4時半に起きる。支度。駅に向かう。途中でなにかの忘れ物に気づいたけど、電車に間に合わないやとあきらめた。朝まで飲んでたであろう人とすれ違いながら歩く。駅前ではたくさんのゴミ拾いの人たちがいた。汚くなりがちな駅前がなんとか綺麗なままなのはこの方達のお陰か。
同期と合流する。仕事の話やら、今日どういう狙いで釣るかを話す。
3回目の釣り。どこに行くかも分かり、今回は夜中出発でもない。心は穏やかだった。
仕掛けを作る。よし完成と思ったけど、糸が巻けない。あれ?すぐに同期に声をかける。糸をガイドにかけてなかったせいだった。戻って作り直す。
磯に立つ。2人が釣れ始める。少し離れたところにいる自分含め2人は当たらない。まだ時間は長い。のんびりやることにした。ご飯を食べながら、同期が釣るのを見る。やっと、ウキの動きとかが分かるようになってきた。こう動いたら当たっているということか。
漂流物がたくさん流れてきて漂っている。おぉ邪魔だと思いながらも、流れがぶつかってるところだから良いかもしれない。ちょっとウキの高さを調整して、漂流物のところに仕掛けを流してみる。紛れてしまい見にくくはあるけどなんだか、かかりそうな動きをしている。見にくいけどあの場所よさそうだねと同期と話す。よしもう1投。
あの一瞬をもっと細かく覚えておいて、書きたかった。でもそういうことじゃないのかもしれない。ウキが深く沈む前に引いたのか、沈む前のわずかな変化に合わせて引き始めたのか思い出せない。強く引いている。おぉと思いつつ、冷静でもあった。前回かかったときに慌てて巻こうとして逃してしまった。こういう時にはサオを立てて、巻ける時に巻く。サオがしなる。グンと引っ張られる。引きが弱くなった時に巻く。さっきまでの反発する力がウソのように、逃げてないよな?と思うほど巻き取れる。でも、サオはしなってる。まだいる。そんなやりとりを繰り返し、ウキが岸の近くまで来ている。もう少し。巻き上げる。影が見える。海の深い青にきらめく水色が右へ左へ動いている。もう少し。海面まで上がって来る。そこそこ大きなメジナだ。タモを使ってあげてもらう。
おおー、これは持って帰ろう。今までは持って帰っても仕方ないような小さい魚しか釣れなかったので、嬉しい。でも。測ってみると26cmだった。30cmいかないか~と悔しさの方が大きかった。欲深い。
なんで、喜びが勝たなかったのか。「30cm以上の魚を釣る」を今年の目標にしていた。目標に届かないその差分が意識されてしまった。
でもなんだかいける気がした。今日の海・魚と自分の仕掛けの調整がなんだか合っているような気がした。
釣った魚を〆る。教えてもらい見様見真似でやってみる。ナイフを突き立てると暴れる。グッと力を入れる。背骨をグッと切ると、プシューという音がした。こと切れる時こんな音がするのか。
海面を見る。なんだかあそこらへんが良い気がする。仕掛けを投げる。当たらなかったけど、なんだかいい感じがする。同じ仕掛けでもう一度。
やはり、どうやって当たったか覚えていない。さっきよりも引きが強い。大丈夫逃がさない。ゆっくりと引き上げる。魚影が見えてくる。さっきより大きい。引き上げる。30cmだった。嬉しかった、そして安心した。
2匹釣ってかなり満足していた。座ってご飯を食べる。片方足を伸ばしたその座り方は、"おれ釣れましたで"の調子乗りの座り方だった。おれはそういうところがある。気づいて恥ずかしくなり、両足を縮こませた。
もういいかな。でも、今日釣ったのは小さいのも含めて全部メジナだ。なんか違う種類も釣りたい。ちょっと針とかも変えてみる。重りの付け方も変えてみる。標準的なやり方はあっても、なにか思うことがあれば変えてもいい。それは、基本が分かって、色々試していい、間違えても大丈夫と思えているからできることだ。
沖の方に大きな魚が居る気がしたので、ちょっと遠めの方にエサを撒く。おびき寄せて、仕掛けを食べさせるように。
グッと引く。引きの動き方から、あぁ魚が泳いでいる、逃げようとしているんだということが伝わってくる。メジナとは違うという確信に近いなにかがあった。それは、糸から伝わる力のちょっとした違いを感じ取っていたんだろう。上がってくる、金色と銀色を混ぜたような色、細長いフォルム、30cmのイサキだった。
エサはまだあったので釣り続けるけど、もう満足していた。変なの釣れないかなぁと、仕掛けをふかーくしてみたり、手前の方に投げてみたり。
夕方。海面の見え方が変わってくる。インクを溶かしたようなマットさ、海軍の迷彩のように、深い青いと灰色に近い青が混ざりあっていた。
帰りの車、釣れた後だとこんなにも楽しい気持ちだと知れてよかった。
釣り3回目で釣れたというのが嬉しかった。ビギナーズラックではなく(いやビギナーですが)、なんとなくここにいそうとか、こう仕掛けを変えようとか、試す中で釣れた。1回目に酔っ払ったおじさんの釣り講座に絡まれたことも、2回目に慌てて引いてバラしてしまったことも、今回に繋がっているならば、意味があったと思える。
帰宅、23時だったけど、不思議とそんなに眠くなく、撒き餌の匂いを放つ色々を片付けた。とてもえらい。洗濯を干し終わり24時30分過ぎに寝た。