SIBO呼気検査の方法と信憑性
前回までは、SIBOとは何か、タイプ別の症状や一般的な治療方法、チェックリストを紹介してきました。
本記事では、SIBOの診断材料となるSIBO呼気検査の方法の詳細と、その信憑性についてもお話したいと思います。
※通常の呼気検査ではメタンか水素タイプのみ検査が可能です。硫化水素SIBOの検査はトリオスマートという検査が2021年頃アメリカで開発され使用されています。今回は通常のSIBO呼気検査について解説します。
SIBO呼気検査の仕組みと結果
SIBO呼気検査では、特定の糖類(一般的にはグルコースまたはラクツロース)を水と一緒に摂取し、その後の呼気中の水素やメタンの濃度を測定することでSIBOの有無を判断します。
※ラクツロースよりグルコースの方が精度が高いとされています。検査を受けた方の中にはラクツロースで陰性だったけどグルコースで陽性だった方もいらっしゃるようです。ただ、ラクツロースは非消化性で吸収されないため、小腸全体をサンプリング出来るメリットがあるとされています。
誤診断を防ぐため、1週間程前から服用する薬やサプリ・食事に制限が有り、当日も朝は絶食です。そしてグルコースまたはラクツロースを溶かした水を飲み、その後呼気を20分毎3時間に渡って採取します。
結果は、呼気中の水素レベルが120分以内に20ppm上昇すれば水素SIBO陽性。呼気中のメタンガスレベルが10ppm以上でメタンSIBO陽性、と言われていますが2023年12月時点では陽性となる基準値について国際的な合意は得られていないそうです。
ここで私自身の例を紹介します。
T2ー最初の摂取から水素ガスレベルがどんどん上昇しているのが分かります。メタンガスに関しても緩やかでは有りますが、合計で10ppm以上となっています。
結果、水素優勢で水素・メタン両方とも陽性と診断されました。
SIBO呼気検査のメリットとデメリット
続いて、SIBO呼気検査のメリットとデメリットを紹介したいと思います。
メリット1 ー安全、簡単で侵襲性が少ない
実は内視鏡検査で直接細菌を検出する方法も有り最も確実性が高いとされているのですが、費用、侵襲性が高く、小腸の奥の細菌は検出不可能なためあまり行われていません。
それに比べて呼気検査は安全で、侵襲性が少ないのがメリットです。
メリット2ーどのタイプのSIBOか分かるので治療方針を立てやすい
メタンSIBOのケースで繁殖している古細菌(アーキア)はほぼ全ての抗生物質において耐性があるとされています。
そのため治療に使用される抗生物質や抗菌ハーブも異なります。どのタイプのSIBOがあるか分かることで、治療内容を適格に定めることができます。
デメリット1ー費用が高い
日本で現在SIBOテストを行うと4-5万かかるのではないでしょうか。私が住んでいるフランスでは保険が適用となり60ユーロ程でした。
デメリット2ー事前準備が大変
テスト前にはサプリ•薬の服用•食事内容などが細かく指示されます。しっかりと事前準備を行わないと正しい結果が得られない可能性が高いので注意が必要です。
デメリット2ー信憑性
SIBOテストは100%確実ではありません。詳しくは、次のトピックで説明させていただきます。
SIBO呼気検査の信憑性について
最近のメタ解析では、グルコース呼気検査の感度 (陽性者を検出する力)54.5%、特異度 (陰性者を検出する力)83.2% と比較して、ラクツロース呼気検査の感度 42%、特異度 70.6% とされています(*1)
グルコースの方が精度が良いとは言え、両者共に偽陰性、偽陽性共に存在するので注意が必要と言えます。
私自身の経験
私自身の経験をシェアさせていただきます。私は自宅でラクツロース呼気検査を受けたのですが、飲んだ5-10分後から具合が悪くなり始め、動悸や冷や汗が出て過呼吸になりました。その後1時間位は普通に座っていられる状態では有りませんでした。
多くの方は特に大きなネガティブな反応は示さないと聞いていたのでびっくりしました。
自分なりの分析としては、餌を与えられた細菌がLPSを発生させ、免疫系が反応し体内のヒスタミンレベルが上昇するトリガーとなったと思います。リーキーガットとヒスタミン不耐症が無ければそこまで体調に変化は無かったと思われます。
結論
もし身近にSIBOテストを行っているクリニックがあり金銭的に余裕があるならば是非受けましょう。
SIBOは早く治療や食事改善を始めるに越したことはありません。
ただ検査結果がどうであれ、生活習慣•食事の改善など包括的に、出来るところから始めることが1番大切だと考えます。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました。何か参考になりましたでしょうか?スキやフォロー頂けましたらとても励みになります。
次回からはSIBOにおける食事療法に関してお届けします。
寒くなりましたがお身体に気をつけて皆様お過ごしください。
*1) Losurdo G, Leandro G, Ierardi E, et al. Breath tests for the non-invasive diagnosis of small intestinal bacterial overgrowth: a systematic review with meta-analysis. J Neurogastroenterol Motil. 2020;26(1):16-28.