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vs湘南ベルマーレ

スタメンはいつも通りの4-4-2のセレッソに対して、GKなど先発を入れ替えてきた湘南。好調を維持して(鹿島が天皇杯優勝する可能性を踏まえて)ACL圏争いに付いて行けるか、それとも5連敗の流れを断ち切れるのか?

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【湘南スタイル~取りどころを定めた前からのプレス】曺貴裁が退任したものの、前から積極的に来るスタイルは崩さない湘南。開始早々、2017年シーズンの天皇杯決勝で伊藤翔がゴールを決めたシーンを彷彿とさせるボールが指宿に。シュートはミートしなかったが、悪い流れを断ち切るべくメンバーをいじってきた湘南のメンバーが溌剌とプレーしている印象で始まった。しかしセレッソも3分にソウザのサイドチェンジ、(パスミスもあったが)サイドのサイクルポジションチェンジから水沼のスルーパスが柿谷に届くも、ファーストタッチが伸びてしまいシュートを打てない。その後は膠着した状態になり、セレッソはボールを回すもののシュートに持ち込めず、逆に湘南が奪ってカウンターを仕掛けるも決め手を欠いて中途半端で打たせるようなシュートに終始してしまう。ただ、しっかりと決まった位置でボールを奪う湘南にやや分があるように感じた前半だった。

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湘南のボール奪取のルールは至ってシンプル。セレッソがCB⇒SBにボールを回して幅と奥を取るSBの裏に蹴ってくるので、その前にSBやSHに付けたところを囲い込んで取ってしまおう、というもの。GKとCBにはFWが全速力でチェイス、そこからSBやSHに付ければシャドー、WB、ボランチで囲い込むことで守備の数的優位を作っていた。そのためセレッソは前からガンガン来るハイプレスを交わしてサイドに逃げるものの、そこで奪われ前にボールが入らない状況が続いた。ここから大きく蹴ってボランチや中央に入ってきていた柿谷に逃げられたシーンもあったが、やはりそこにもチェックが早く、そのまま逆サイドに逃げたら同様の形を作られてなかなか前進できなかった。

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しかし36分には丸橋が幅を取り、柿谷が深さを取ることで相手を押し込みチャンスメイク。右サイドではそれに連動して水沼が内側に立ち位置を取り、相手WBのマークが遅れていた松田のスペースを開け、しかも金子を引き連れて中央に行く。しかしソウザから斜めにボールが出ず、逆に上がりすぎた位置になってしまい、ソウザは藤田へボールをスライド。藤田からしてみれば、右サイドには広大なスペースがあるにも関わらず選択肢がなくなりミドルシュートになってしまう。ピンチも少し、チャンスも少し、でも全体的にうまくハメられてるなぁ、という感じではあるものの堅守でなんとか0-0で凌いだ前半だった。前半は柿谷の安易なボールロスト、ソウザが前に食いつきすぎて後ろを使われる(けど戻って取り返すソウザの守備力もさすがですが)、鈴木にボールが収まらないなど、新しく出てきたメンバーが慣れてきた分、やや雑にプレーしているようにも感じられた。恐らく最初にスタメンとなった試合ではもう少し慎重に入っていたと思う。ここは考えずにプレーできている点をポジティブに評価しつつ、でも取られたりして失点でもしたら結果論ありきだがネガティブ評価になるので、勝って兜の緒を締めてもらいたいところだった
【確立されてきた分厚い攻撃と守備面のチャレンジ】最近のセレッソの攻撃では丸橋と松田がキーマンになっている。潮目が変わったのは恐らく4連勝を果たした浦和戦からだろう。ここ数試合では、彼ら2人からのクロスがゴールに繋がっているが、立ち位置がより洗練され、ペナルティエリア内での配置が分厚くなっている。サイドがキーマンなのはユン体制と同じでも、(どちらが良い悪いではなく)この立ち位置が大きく戦術に違いを生んでいる。2017年の躍進したユン体制では、好調な杉本をニアサイドに走りこませて大外からのクロスを合わせに行っていた。それができたのは山村のようにハイタワーがもう1枚いてマークを分散できたから。さらに押し込んで相手のラインを下げれば山口、ソウザのミドルシュートという選択肢も取れた。中央に待ち構える杉本、山村の2枚のハイタワーとグラウンダーにも合すことができるレベルの高さがあったからこそできた攻撃だった。いわゆる質的優位性が常に作れる状態である。しかも最悪CKにできれば、平均身長が高い(ヨニッチ・木本・山下・ソウザ・杉本・山村)セレッソは圧倒的に有利だった。しかし最近のセレッソは、都倉、B・メンデスは怪我で離脱しており、CBを除けば高い打点で競り勝てる選手がいない。そこで①中に配置する人数を増やす②大外ではなく、SBがハーフスペースから滞空時間の短いセンタリングかグラウンダーでゴールを狙う、という選択肢を取っている。今回もその狙い通りサイドに揺さぶって相手を押し下げ、サイドバックが高い位置を取り、ハーフスペースの奥から奥埜に鋭いパスを丸橋が上げたことでゴールが決まった

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この攻撃を続けるためには相手を揺さぶって押し下げることが必須になる。そのためにはソウザの矢のようなサイドチェンジは幅と奥を取って揺さぶれるため、相手のスライドが間に合わないのですごく強い武器になる。また、松本戦で決めたように、ソウザが中に入り込めば高さの点で強みが増える。ここは藤田やデサバトにないソウザの強みだろう。また、この攻撃を繰り返す中でも相手のポジションはぐちゃぐちゃに崩されながら、セレッソの守備陣形は崩れていない。中央はCB2枚、その前に2ボランチが構え、サイドは少なくとも相手の選手にひっくり返されないように敵陣奥深くまで押し込めている。

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ただ常にボールを持てるわけでもなく、相手WBに押し上げられるとナイスクロスが上がりピンチを招くが、指宿が交代した後は怖さが半減。加えて前節や今節の前半で相手に押し込まれると消えていた水沼のポジション取りなどを変えてきた。まずは選手間の距離を遠くすることで相手のプレスで圧縮されることを防いだ。(近いと相手は寄せやすく、ロングキックで回避するような蹴り方もできない)また、奥埜や鈴木が相手ボランチの脇に顔を出して受けることで相手ボランチはSH(水沼・柿谷)かFW(奥埜・鈴木)かのマーク選択を迫られ、圧縮ができずに守備側の距離が間延びした。そのためSHや降りてきたFWの受ける回数が増加したことでセレッソは前半の圧迫感から解放された

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ただこれはもろ刃の剣でもあった。SHが高い位置を取ることで、奪われたときにはセレッソの強みであった4-4のコンパクトで圧縮された陣形を整えられないのだ。下がって受けるタスクを背負った奥埜がいつも以上にボランチのラインまで降りてきていたので、戻れないところには奥埜、という決め事になっていたのかもしれない。

セレッソのボール保持はシーズン序盤のようなスリルはなく、見ていて安心するレベルに来た。(初めて誰かを連れて行くとビクビクしているが・・・笑)サッカーのプレー選択は認知⇒判断⇒実行と言われており、ゲームモデルやポジショナルプレーが確立されると、認知と判断の時間が削減され、攻守で都度考えずにスムーズなプレーができるようになる。その点で柿谷やソウザが登場するようになった試合とは違ってスムーズにプレーしている姿を見るとチームとして成長していることを窺わせる。そういえば、最近のサッカー雑誌のインタビューで瀬古が「より前からプレスをかけることに取り組んでいる」と言っていた。今節では鈴木や奥埜が前にアグレッシブにプレスをかけて柿谷や水沼の位置でボールを取り返せることが何度かあった。圧縮ブロックを敷いていたことでセレッソの堅守はここまで築きあがられたが、攻撃力が弱かったのは否めない。ただそれは後ろにブロックを敷くことで重たくなることであり仕方ないことだとも考えている。そんな中で、このように前からの奪回が仕掛けられるようになれば、よりセレッソの攻撃力は増すだろう。今季は残すところ2試合でそれが実を結ぶことはほぼないだろうが、来季に向けた積み上げとして期待したい

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