vs 鹿島アントラーズ

さすが鹿島と言うべきでしたが、鹿島相手に設計までは上手くできたと言える90分でした。決めるべきを決められなかった"だけ"、ですがその"だけ"という差が常勝軍団との違いなのかな。と、結果ありきですがベタにそう感じました。ただセレッソが前進してることも強く感じます。それは前回対戦のA鹿島戦では45分しかできなかったことが、今回の対戦では90分できたことです。そして残念ながらロティーナやイバンは選手じゃないのでどれだけデザインできてもシュートを打てません。シュート数では上回っており攻め続けられたことから、設計面においてコーチ陣が優れた準備をしたことは間違いないでしょう。それでは試合を振り返ります

【鹿島~良い時間帯の得点と堅い守備を披露/キーマンは町田】
「スカウティングをしっかりできていた」との選手コメントもある通り各選手の立ち位置が整理されていた印象です。特に前がかりになった両SBの裏にCBを引き出したいセレッソに対して、両SBが出ない形で後ろに4枚揃えることでセレッソのサイドは容易にボールを保持できなくさせられました。その大きな役割を担っていたのがU-22日本代表にも選ばれている左利き190cm大型CB(今節はLSB)の町田。そして得点シーンでもその特徴が発揮されました。ゴール後に大岩監督が「町田ー!」と呼んでサムアップしたことからも狙い通りだったのでしょう。セレッソはCK時、真ん中にヨニッチ、木本、メンデスと高い選手を並べるので、「じゃあ外側から折り返せば相手の目線を外せるね」という狙いでそっくりそのままゴールができました。マッチアップも丸橋なので、中で直接やり合うより勝てる可能性は高かったはずです。それを証明するように28分も同じく町田を狙ってきていました。また町田はGKからのターゲットマンとしても役割をこなしてました。サイドに長身選手をぶつけるのは、近年増えてきてる方法で、ユーベがマンジュキッチを、ユナイテッドがルカクをウイングに配置してSBを長身で殴り続けていました。
ただ、鹿島が攻撃でできていたことは他になかった、と断言できます。枠内シュート1本からもそれは明らかです。試合を観ていて、最後の最後までこちらのミスなどによるカウンター以外、追加点を奪われる気配を感じませんでした。それもそのはずで、鹿島は点を奪った後セレッソに押し込まれていたのもありますが、早い時間帯にゴールを奪ったので思い切ってブロックを敷けたためでしょう

【セレッソ/デザインしても最後が力不足。こういう日もあるさ】
まずビルドアップですが、相手2トップに対して藤田のサリーダ(DFラインに落ちて3バック化し、SBを押し上げる戦法)でFWを容易に剥がすことができていました。その時には逆サイドのSB(特に松田)がボランチの位置に入り、ビルドアップをサポートできています。しかし、デサバトよりもワンテンポ貰いに行くのが遅れるソウザのところでスピードダウンしてしまうため、たまに相手のセルジーニョ、土居、伊藤に捕まります。しかしそこは我らがソウザ。深い切り返しで難なく交わせていました。貰うタイミングはデサバト、相手を交わしてロングキックの点でソウザ。お互い違う特徴を出せるボランチだな、と改めて感じました。

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またもう少し進んだ位置でのビルドアップにおいて、鹿島は永木がハーフスペースに入る柿谷をチェック、ソウザや藤田には土居、伊藤、セルジーニョが担当し、少なくとも誰かが後ろに下がる永木の位置近くまで戻るよう仕組みが作られていました。この動作によって、丸橋が大外で幅を取るものの、「セルジーニョと伊東のどちらが大外にプレスに行くか?」という認知のズレ・迷いが生じず、伊東が食いついてくることも少なかったです。そうなれば、伊東の後ろにスペースは狭く、メンデスや奥埜が抜けてもSBが中をカバーするので中が手薄になりません。

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しかしセレッソにも千載一遇のチャンスが訪れました。それは12分のシーンで柿谷が伊東と永木の中間ポジションを取ったところで認知のズレが発生した瞬間です。ソウザがそこに狙い澄ましたスルーパス。これぞ「みんなが待ち望んだ柿谷!」という抜け出しでしたが、ここはクォンスンテのナイスセーブに阻まれます。その後もチャンスを作っては阻まれ、CKを連発すればニアに集中してほとんど跳ね返されてしまいました。16分のCKはメンデスに当たって枠に行けば、というシーンでしたがこれも枠外。今節、柿谷がさらに伸び伸びとプレー出来ていたのには、頭の整理がさらに進み、奧埜と柿谷が入れ替わる形も難なくできたことかな、と思います。それによって奥埜も永木やCBのプレッシャーなくボールを受けられましたし、鹿島もどう奥埜をマークするかで悩んだことと思います。さて、今回は主に左サイドを書きました。清武が抜けて以降、セレッソの不安材料と言われていた左サイドでも試合を進めるごとに結果が伴い、清武がいた頃とは違う形(パスで違いを作れる清武、ドリブルや抜け出しで違いを作れる柿谷)で仕上がってきた印象を受けています。この試合は右サイドも左サイドも全員の立ち位置がここ数試合で1番整理されており、ビルドアップにおいて頭の中がこんがらがっている印象は受けませんでした。あとは奧埜(高木)、舩木らが絡んだ時のアタッキングサードにおける左サイドで整理されれば鹿島相手にもより迫力をもって戦えそうでした。

今回の鹿島戦はこれまでスタメンではなかったソウザや舩木について書く必要があるでしょう。ソウザの守備は強度が高く、幅広い所までカバーに出ていくことができており効果的でした。セルジーニョも土居もドリブルを止められ、満足にできたとは思っていないはずです。さらには惜しいシュートも連発しており、コンディションの良さが窺えました。
そして賛否両論ありますが、舩木はスクランブル発進だったにも関わらず立ち位置や体の向きが整理されており、かなりポジティブな出来だったと思っています。丸橋はスピードがある分、縦への攻撃に重きを置けますが、舩木はスピードが劣っている分、丸橋とは違うプレイヤーにならざるを得ません。そんな彼は早い段階でFWへ斜めにつけるパスで丸橋との違いを作っていました。舩木、奥埜、メンデスと抜けた形は得点の可能性を感じたシーンです。そのパスで違いを出すため、丸橋と舩木の原則となる立ち位置に違いが見られました。舩木が投入されて以降、柿谷がワイドに張って、ハーフスペースに立つことが多く見られました。縦へのスピード勝負は丸橋に代わって柿谷が請け負い、代わりに舩木はキックの技術の高さを活かしてFWへもパスが出来ますし、相手のチェックが厳しければ大外の柿谷にも逃げられる立ち位置を多く取っていました。丸橋の離脱が長期化するならば、舩木には待ちに待ったチャンスが巡って来ます。定期的に試合に出ることでしか選手は成長しないはずですし、丸橋の後釜がいない問題に終止符を打つべく、今後の舩木に期待したいです。

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【感想】さて、今回の敗因はいい時間のFK、CK、シュートが大阪ダービーとは打って変わって全て沈黙したことに尽きるでしょう。また、負けている状況でセレッソが保持できる時のSH奧埜は個人で剥がす点にやや難しさも感じました。代わって入った高木も思うように剥がせず、アタッキングサードに入った時の舩木の動きが周りと合っていないのも及第点を与えるには至りませんが、裏を返せば伸び代です。チームとして1番盛り上がった80分のCK、81分のFKでもボールはクォンスンテの手元へ。鹿島戦はただただクォンスンテの日でした。勝てば優勝争いに割って入れる中で落としたこの試合の重たさはダービー以上です。セレッソとしては、まず現実的なACLを目指すべく、次節札幌戦に期待したいです。あと余談ですが、鹿島戦では松田のボランチ化(偽SB・アラバロール)が形になっていました。開幕戦で見せたトップ下松田のように実はボランチ松田は面白いんじゃないかと密かに期待です(俺だけかも)

最後に。フットボールにおいて結果と内容がリンクしないことが良くある、ということをfootballistaのインタビューで元神戸のリージョ監督が述べています。要約すると、「勝つ確率が高いチームを予想することはできる。ただどんなに確率が高くても、たった一発に負けることもあるのがフットボール」と言ったところでしょうか。まさに”禅問答”のようなインタビューですが、面白かったのでリンクを貼っておきます

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