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vs横浜Fマリノス

【試合前の独り言〜好調な相手を相性で止められるのか?】

僕は対戦成績の相性を信頼していない。それは相性というよりも歴史なだけで、これからの試合は歴史に沿うとは限らないからである。マリノスは2012年からセレッソに勝ちがないとは言え、セレッソは2015~2016年に漆黒の闇へ逃避行していたし、ずっとJ1に居続け昨季はJリーグ王者になった相手に勝ち続けるのは不可能である。しかし、仕組みを作ることで試合を優位に進めることはできる。そういった意味で前から仕掛けてくるマリノスの背後は大好物であるし、今季そういった前から仕掛けてくるフロンターレ、FC東京、アントラーズにやられたことを考えると大の苦手である。

そんな今節のメンバーは藤田がベンチスタートで木本がCBからボランチへスライド。そして前節お休みを頂かれていた若武者・瀬古がスタメン復帰。一方、大阪2連戦のマリノスは大阪滞在でメンバー外の選手も帯同して臨む布陣。喜田が出場停止から復帰した他、松原と前田がスタメンに名を連ねた。

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雨が降りしきる中、お互いに2位/ACLを狙う上では絶対に落とせない試合が始まろうとしていた。

【マリノス(守備)〜前ハメ&前ハメ】

マリノスのチームコンセプトは攻守一体で考えなければならないのだが、マリノスは「敵陣でプレーする時間を長く作り、圧倒的な攻撃力で敵陣を制する」という過激思想の持ち主である。そのためには、ボールを取られたら兎にも角にも前から嵌めて奪い返すことを是としている。その基本フォーメーションは4-2-3-1だが、オールコートマンツーマンのようにマークをピチっと付けて有効な(前を向ける)パス先を遮断した後、マルコスJr.がJ・サントスと並んで2トップに変化することで2CBへプレスをかけ、そこからバックパスがあればさらにGKまでも出撃する。

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このプレスはかなり速いので、寄せられたGKは近場に繋げずロングキックを蹴る機会も多くなるのだが、そうなれば高さに強みのあるマリノスとしては半分勝ち。あとはここで競り勝ってセカンドボールを拾って再び攻撃に転じることになる。とは言え必ずしも前からのプレスがハマるわけではない。もし前からのプレスを剥がされてしまったら、エリキ、前田はMFラインまで撤退して4-4ブロックを形成する。一方、前回対戦でぶち抜かれた坂元対策として、他チーム同様に2枚配置するのだが、マリノスはエリキがその役割を担うように徹底されていた。

【セレッソ(攻撃)〜今背後のスペースを突かずしていつ突く?】

マリノスの前からの激しいプレッシャーは予想通り。良い意味でブレずに自分たちのサッカーを貫き通すマリノスに対し、セレッソは突撃されて生まれるスペースを使わない手はない。

まず、最初のゴールキック/GKからのビルドアップは大外のSBを目指したいのだが、敵陣で取り切りたいマリノスは前からセットしてくる。なのでそれを押し返すためにSBに高い位置を取らして直接供給する経路とCBを経由して逆サイドへ狙う経路で対応。

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特にヨニッチ→丸橋へのパスはベンチからも「ナイス!ヨニ!」と賛辞の声がマイクに拾われていた。

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そしてSBに繋がない場合は坂元が受け手に回る。そのために大外で片山を少し上げてエリキを食いつかせ(=パスコースを作り)、坂元がシャドーの位置に降りて受けるのだが、マークが付いてこなければ坂元に出せばフリーで反転される以上、ティーラトンはここに厳しくチェックする。そうなるとその背後にできたスペースをメンデス/奥埜で狙う。右サイドオンリーの攻め方としてこの形が仕組みとして構築されていた。

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次にコート全面を使って繰り出すのはセレッソの左サイドにマリノスを寄せてから、瀬古/木本/清武/丸橋のロングキックで逆サイド(大外)の坂元へ一気に展開する形。これもまたマリノスが「近くで奪って早く前へ!」というコンセプトを逆手に利用したものである。なので逆サイドで孤立する坂元がボールを受けたらそこはもう1vs1ゾーン。広大なスペースに敵1枚という状況は坂元の個の強みが最も活きる領域である。

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そしてここにはエリキがカバーに来るようマリノスとしても守る形を仕込んではいたが、そこにエリキを行かせないよう片山がインナーラップを仕掛ける。こうすることでエリキは片山を手放すわけにはいかず、坂元のカバーに専念できない。こうして坂元がここ数試合苦しんでいた「2枚で守られる」という状況を作らせないよう、片山は陰ながら多大なるアシストをしていた。もしここが松田の場合、片山とは違ってクロスに定評がある。なので坂元が敵を2枚引き付けることで、後ろでフリーになるパターンやオーバーラップを仕掛けるシーンが多かったのだが、今はペナ内で競り勝てる片山を起用することになり、坂元が1vs1に専念できるようになったことはチームが形を持って前進した証と言える。
そしてこの日は幸いにも10分で仕込んだ形が奏功し、セレッソが先制に成功する。坂元の仕掛けばかりに注目しがちだが、奥埜がしっかりとCBの間にポジション取りをしたこと、片山がエリキにカバーをさせないように走り込んだこと、ハイボールに競り勝てる木本をボランチに起用して大外に走らせたことで、マリノスのDFは木本もケアしなければいけない状況だったことはこの先制点を生み出す大事な要素だった。

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そしてサイドバックの裏以外にもう一つFWに課されたタスクは2CBの間ランニング。最初はメンデスが担い、交代してからは豊川がチャレンジを続けた。もちろんこのパスは高い精度が問われるし、パスが少しでも長ければGKに取られたりゴールラインを割るし、短ければCBに弾かれる。ただそれであっても相手のラインを押し下げることはできる。敵陣でサッカーをしたいマリノスを封じる手段としては有効であった。

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そんな中、後半に入った追加点は再び清武が左で起点になり片山へサイドチェンジ、そこから清武が走り出して広い空間での片山と清武のワンツーが繰り出されると、奥埜がニアサイドをぶち抜く技ありゴール。そして3点目は片山からCB間を走り抜ける豊川へのロングボール。前半からメンデスが狙っていたCB間に走り続けた結果、最短距離で待望の夏男のリーグ戦初ゴールが決まった。片山のピンポイントパス、豊川のピタッとトラップから技ありループと本当に文句なしだった。4点目もこれまた左サイドで起点になった奥埜からCB間を走り抜ける豊川。すべて狙い通りの形から4点を奪ったセレッソの攻撃は圧巻の出来だった。

【セレッソ(守備)〜前から来るなら前から仕掛けて追い返す】

マリノスの攻撃コンセプトに対して、自陣に攻め入られたくないセレッソはボランチをマークする2トップがボランチを背中で消しながらCBにアプローチする形でスタート。そしてそこからSBに出たら対峙する清武/坂元が素早く迎撃し、逆サイドの坂元/清武はSBへのロングキックコースを消す。こうすることで前から嵌め込みつつ逆サイドへの一発展開を封殺していた。さらに2トップがCBに出て行くスイッチを入れると同時にデサバト/木本はボランチの喜田、扇原に対して迎撃する。

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敵陣に入りたいマリノスと自陣に入れさせないセレッソの綱引き合戦はとても見ものだった。しかしマリノスのビルドアップやスピードのある攻撃は前からのプレスだけでは必ずしも防ぎきれない。そうなると大外経由で攻撃にシフトさせることで、スピードダウンを図りつつセレッソの中央圧縮で対応する。この時マリノスはクロスに競り勝てるのがJ・サントスのみ。これに対してクロスに滅法強い2CBが構えることでマリノスはピンポイントでクロスを上げない限り得点するのは難しい状況に追い込み、マリノスの攻撃の良さを封じることに成功していた。

【マリノス(攻撃)〜ハブ空港になる扇原/ハブがなくなれば攻撃は単調に】

マリノスは縦に速く何度も攻撃を仕掛け、常に敵陣でサッカーをすることが社是。そのための進行ルートは、ビルドアップでFWの背後に喜田、扇原が入って受けるところからスタートする。ただスピードに乗ってボールを持ち運べる選手もいるので、しばしばカウンターを使う場面もあった。

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敵陣ではエリキとマルコスJr.はポジションチェンジをして流動的に動くことが許されておりセレッソ陣地を攪乱する。そして左はティーラトン、右は松原が幅を取るのが基本形。(ただし場合によっては前田やエリキが幅を取る形もアリ)そのためには前田やエリキがセレッソのSH、ボランチ間に立ってボールを受けることでセレッソのマークを集中させ、大外に上がる余裕を与えていた。

この配置が完成すると外回りで大外からセンタリングと内側にカットインして中央で崩す2経路を持っていたが、セレッソの中央圧縮をなかなか崩せない。

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しかも今節のセレッソは前からSB、ボランチ、SH、FWがプレスをかけてくるのでビルドアップすらスムーズに進まない。そこで前半途中から扇原が左CBの位置に落ちてマークの回避と左サイドの押し上げを試みるようにチェンジする。これによって2トップに対して3CBと最終ラインで数的優位が形成され、FWのマーカー不在と坂元がアプローチできなくなる。後半の立ち上がりはこの形を続けることで左サイドからチャンスを何度も作りだすことに成功していた。

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しかしセレッソに2点目が入ったところで、天野、水沼、エジガルを投入する。これによって左CBに落ちて左サイドの攻撃を押し上げていた扇原がベンチに下がり、またもや2CBに回帰したことが試合のターニングポイントになってしまった。その結果、残された攻撃方法は大外のティーラトン、水沼/松原からのクロス大作戦。オナイウも追加してさらに中の枚数を増やして中の枚数とポジションチェンジをかけて大外からの侵入を試みるが、水沼が1点返すことに留まった。2点目を取られた以上、やり返すには形を崩さないといえないが、そのリスクの掛け方がさらに悪循環を生むというサッカーではよくある結末を迎えることとなっと。

【試合後の独り言~3連戦の山場その1はクリア】

松田のケガが発表された直後の湘南戦は低調な試合運びだったが何とかモノにしたセレッソ。しかし今節では前節よりもスピードアップしたまま試合をコントロールできたうえ、片山が大外だけでなくインサイドも取れること、ピンポイントのロングキックを供給できること、豊川がCBの間を突くことでゴールという結果を出したことはすべてポジティブだった。松田>片山という評価をこれまでの戦いぶりから持っているかもしれないが、この2人の特徴はあまりにも違うのでそれはやや安易な評価だろう。松田にはない個性を出しながらマリノス相手に4点(そのうち片山は1点目~3点目の立役者)というのは次に繋がる収穫が多かった試合だった。

さらに前節のコメントで「入りが悪かった」と反省の弁を述べていた丸橋もいつもの丸橋のプレーで一安心。(失点シーンにまた絡んだが、この展開ならどこかで起こってもおかしくなかったので目を瞑ろう)

この集中力、高い技術はサポーターが待ち望んでいたバンディエラ丸橋そのものだった。

湘南戦はギア2速で安定したサッカーを展開することで湘南の速さに苦しめられたが、マリノス戦は3速~4速に上げても安定したサッカーができたことからもセレッソの今のメンバーのレベルは(川崎を除いて)リーグトップクラスであることは間違いない。スピードを上げることで事故を起こすリスクも背負うことになるが、少なくともダービーまではこのスピード感で臨んで欲しい、と期待している。

ここからは2位&天皇杯リベンジに向けて落とせない試合が続く。(フロンターレは最速で5試合で優勝確定の状況)その中で今節にFC東京が横浜FCに敗れた上フロンターレ戦が未消化であり、今節は名古屋がフロンターレに敗れ、ガンバがフロンターレ戦を未消化なことはセレッソにとってポジティブな状況である。とは言えフロンターレに勝ちが約束されているわけでもない。次の浦和、ガンバまではまだまだ天王山の途中。しっかりと連勝を積み重ねて狙えるタイトルを目指したいところだ。

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