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vs 名古屋グランパス

【レビュー】

リーグ開幕から4連勝を目指したが、あえなく散った桜軍団。コンセプトを体現し続けていたものの、ゴールが遠く(枠内シュートはそもそもメンデスの1本)悔しい1戦となった。しかし今回の失点はロスト⇒CKとロスト⇒スーパーミドルの2失点。今のプレーモデルに関係なく、フットボールではミスが起こるものであり、崩された失点でもないので、個人的には悲観的な試合と捉えていない。そもそも昨年から続く堅牢なロティーナセレッソは7月以降に相手に崩されて喫した失点がA浦和、H川崎、A東京、A広島の4試合しかない。その他に喫した失点はCKかビルドアップのミス(H鹿島⇒CK、H湘南⇒ロスト、A神戸⇒ロスト、H清水⇒CK)である。まぁこんな試合もあるわ、とビールとつまみを片手にふて寝したのは言うまでもないが、ふて寝しても仕方がないので試合を振り返る。

【前半】~意図をもってやりたいことをやる両チーム

名古屋は予想通りトップ下の阿部を1枚上げて2トップ型にしてセット。これに対してセレッソは定石通りボランチをDFラインに落とすサリーダによって3枚でDFラインを形成し、相手に対して数的優位を作る。

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名古屋もセレッソの手法はわかっているので、3枚の中央が持ってもアプローチせずにある程度前進させたあとサイドにボールが出た時点でハイプレスを敢行。そのままサイドで奪いきってスピーディなウイングを活かしてカウンターを狙っていた。2トップが躱されたら4-4のブロックで堅牢な守備組織に移行するのだが、セレッソはその守備網を破りにかかろうとする。まずセレッソは両SHの特徴が全く異なる。よって左右には非対称の形・策を施されていた。まず右サイドだが坂元(内側)⇔松田(外側)と坂元(外側)⇔松田(内側)の2パターンの立ち位置がある。原則としては坂元に勝負を仕掛けさせて中に人数をかけて良いボールを供給したいが、それだけでは読まれてしまうので準原則も持っている。グランパスの守備はスペースよりもボールホルダーを潰しに行くことを優先するため、食いつかせてその後ろを狙っていた。

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一方、左サイドでは清武がボランチ(主に稲垣)をかき回す。まず成瀬の前に現れた清武はすぐに成瀬のマーク範囲を探ってそこから離れる。次に稲垣の前に出てきてボールを貰って、リターン&稲垣の裏に走る。

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これには丸橋を押し上げてマテウスを下げさせる(本来はボランチより前にいたいはずのマテウスが稲垣・シミッチより後ろに行くこともしばしば)こと、成瀬・稲垣の2人から離れてフリーとなり攻撃で起点になるという2つの意味がある。このようにセレッソは両サイドの異なる特徴を活かしながらも名古屋の両ウイングがなるべくSBについて下がってしまうように仕向けていた。これによってセレッソは攻撃しつつ、縦に速いグランパスのウイング対策も実行していた。しかし名古屋はセレッソのやりたいようにさせたくないので、攻撃に強みを持つウイングをなるべく下げないようにボールホルダーへ激しいチャージを繰り返し、若手の成瀬とJ屈指のハードマーカー吉田が"らしい"対応を見せて試合を沸かせていた。特に吉田は奪ってすぐ前に出る推進力を持っているので、奪えば松田vs相馬&吉田と数的優位を作れる。我慢しつつも激しいプレスでコンセプト通りに守って1点を狙いに行く名古屋、良い立ち位置で自分たちのコンセプト通りに保持して前進して1点を狙うセレッソ。お互いやりたいことをやりながら、しかし点を奪えない展開が続いていた。
そんな中、均衡を破ったのは守る時間が多かった名古屋。実は1点目のCKに繋がったのはデサバトがペナルティエリア前から出したパスをカットされてひっくり返されたところから起こった。そのため2点目だけでなく、1点目も自分たちのミスからやられてしまった失点である。

【後半】~1点の重み、保持&前進の難しさを痛感

(後半は冗長な文面のみなので割愛を推奨)後半は足を痛めたメンデスに変えて豊川を投入。セレッソは後半直後、豊川が前線で起点になり、坂元が得意のドリブルでファールを得たFKでトリックプレーで松田がシュートするも枠を捉えず。結果論だが、これが決まっていれば試合展開も変わっていただろう。その後すぐに連戦続きの奥埜、藤田に変えて都倉、ルーカスを投入。名古屋は前半から清武が中央に入って攻勢をかけているため、中央を固めるためにパスに強みのあるシミッチから守備に強みのある米本にチェンジ。停滞感を払拭できないセレッソは、清武に変えて柿谷を投入。これは清武のケガ対策もあるかもしれないが、米本が入って中央のカバー範囲が広がったため、中ではなくサイドで幅を取った柿谷の個の推進力を活かして前進したかったのだと思う。しかし不運なことに柿谷投入直後にルーカスがロスト→取り返し→ロストと2回のロストでまたまた阿部にゴラッソを食らう。ルーカスがコースを限定していたにもかかわらず、ハイスピード・GK手前でバウンド・木本でコースが見えなかったというトリプルパンチで名手ジンヒョンもなす術がなかった。名古屋は2点取ったこともあって余裕が出来たのか、坂元を引き連れて吉田が以前よりもオーバーラップをかける。そんな中不用意なアフターチャージによるイエローカードを貰い、疲労も見えてきたのでここで坂元を片山に交代。都倉、ルーカスを投入しており高さもあるので、片山のロングスローも活きるようになった。一方の名古屋はシミッチのところに保持できるポイントがなくなったため、クリアが増えてセレッソは保持できるようになるが名古屋は割り切って中央を固める。ガンバ戦で最後に追いつかれていた通り、高さに強くない名古屋に中央を固められたなら、セレッソとしてはそこを突くのは常套手段であった。しかしリスクも負って早くボールを前へ運べば、ボールは早く帰ってくる。名古屋に取られた時、スピードに強みのあるウイングに出されて何度かピンチを招いていた。運が悪ければ、さらに点差が広がる恐れもあったので2点で終わったのは運が悪い試合の中で運が良かったことかもしれない…

【まとめ】

こういう失点を喫して守られる展開が続く試合になった時、高さを活かして素早く放り込むのか、それとも自分たちのコンセプト通りに保持して前進するのか。これはセレッソにとって(セレッソに限らず保持をコンセプトにするチームもだが)去年から続く課題である。また、今回ミスをしたと言われているルーカスは、これまで勝ってる状況で残り数分しか出ていなかった。しかし、今回は勝ちに行くための選択肢として出てきたので、これまでと状況が全く違う。今季のような過密日程の中でルーカスの出場時間を増やして実戦に馴染んでもらうことは、長くて過密なシーズンを考えれば大事なことである。そもそも去年のセレッソが波に乗れたのはカップ戦をこなしつつのリーグ第10節の松本戦。それまではコンセプト通りに進まず、黒星が先行している苦しい状況だった。今年のような中断を経て過密日程という特殊な状況で、ルーカスに「早く馴染めよ!」、「いらねーよ!」、「なんで藤田と替えた?」は早漏発言もいいところである。(付け足すと藤田はリージョの下でポジショナルプレーに取り組んでいた経験があった)

「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議な負けなし」(元阪神の野村監督の名言)とは言うが、しかしこれだけ(以下、OptaJiroのtweetご参照)ペナルティエリアに侵入されていないのに2失点するのだからフットボールはやっぱり不思議である。

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このような試合内容でOGとミドルシュートを食らって負けるのがフットボールの面白さであり、難しさなのかもしれない。だからこそ学問のように答えがなく、なぜ勝ったのか・負けたのかを試合後にビールを飲んで議論できるのだ(研究者の方々、学問も答えがないわ!というツッコミはやめてくださいね…笑)さて、終わった過去は変えられない。次の広島戦に気持ちを切り替えよう。シーズンはまだ始まったばかりだ。(ちなみに去年は4節終了時点で1勝3敗、2得点で5失点。よく我慢できたよなぁ…)

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