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vs湘南ベルマーレ

【試合前~湘南BMWスタジアムに行きたかったぜ・・・】
前節の鳥栖戦はすんでの所で勝点1を何とかもぎ取ったが、そこから1週間空けてついに関東での試合が組まれた。コロナがこれだけ拡大しなければ湘南BMWスタジアムに行くつもりでいたが、広がってしまったものは仕方ないので諦めるしかない・・・しかし今年は全くスタジアムに行けておらず非常にストレスフルだ。一方、チームとしてもここから週中にルヴァンカップも挟むので非常に過密日程でこれまた疲労感はかなりのものになるだろう。ここで声援で後押しできないのはサポーターとしてこれまた心苦しい。そんな今節の相手の湘南は一昨年のルヴァンカップ獲得、昨年の大誤審騒動と監督解任騒動とPOでJ1残留確定とジェットコースターのようなシーズンを過ごしていた。しかし開幕前の低迷するという予想に反して、開幕戦では非常に良い戦いを展開して浦和と互角の打ち合いを演じていた。直近の湘南には2018年のカップ戦とアウェイのリーグ戦などで苦しんだ記憶が強く、これまでの成績に関係なく苦しい展開になるだろうと予想していた。それでは試合を振り返る。

【前半~イメージ通りに保持・展開するセレッソvs速い帰陣で強固な緑のブロックを敷く湘南】
ここまでのセレッソの対戦相手は4バックが続いており、主に清武が内側のハーフスペースを取る役割を担っていたのに対して、湘南は5バックを採用していたので坂元が大外からWBを抜いてもまだCBが3枚いる状況となる。そこで前節でゴールを決めた坂元も出だしから内側のハーフスペースに居座るように変更した。そもそも坂元は、昨年まで在籍した山形でシャドーで7得点をたたき出した選手。山形時代にも何度もハーフスペースからの突破でも ゴールを奪っていた。そんな坂元が前節、J1でも内側に入ってゴールを奪えるところを証明したので、ロティーナとしても坂元を長時間内側でプレーさせることに全く抵抗はなかっただろう。この選択肢では大外からの突破⇒クロスという展開が多かった坂元がゴールに近づけられる。さらに大外の松田を使って中へ入り込めば、枚数を増やしたクロスで得点の確率を上げることもできる。都倉とメンデスという大型で競り勝てるFWが不在の中、得点をもっと上積みしたいセレッソにとって、攻撃面で進化できる余地が新たにできたと言える。

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それでは、ここから攻撃の第一段階のビルドアップから見ていく。湘南は1トップなので、セレッソの2CBが数的優位を作ってFWの背後で藤田orデサバトが受け、両SBが高い位置を取るいつもの1トップ2シャドー対策の公式で1列目の通過を図る。キーワードは「おびき寄せる」&「1手目で片方のサイドへ寄せて、2手目で広い逆サイドへ持って行く」で、ここは本当にスムーズに進むようになっている。去年はヒヤヒヤして見ていた感情もどこへやら…だからこそミスをした時に逆に驚いてしまう。

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もし相手が1トップだけでなくシャドーも使って2枚、3枚と前のめりに来たらSBを下げる事で数的優位を作り、相手の出方を見てSBとハーフスペースの奥にいる選手を使い分ける。

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このようにして湘南は誘い出されては剥がされるので、その展開を嫌がり始めた。そこで湘南はさらに深い位置でセットしてより大外へ誘導させるようになる。湘南がこうした理由は2つ。まず1つ目はWB、ボランチ、シャドー、CBの4選手のうち、高い位置であればシャドーを、低い位置ならCBをサイドへ出すことでセレッソに対して数的優位で守れるから。もう1つはセレッソが左右に揺さぶってくる手段として大外から逆サイドへ展開する一発の弾道がないので必ず後ろを経由する。そのため湘南の速い走力とスライドがあれば、十分間に合ってしまう。特にセレッソは大外で数的優位を作られた時、カウンターリスクを忌避して無理やり前へ出て行って打開しないので、セレッソの攻撃は中央からサイドへ行って、詰まっては戻すという展開が続く。

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このように湘南がセットする位置を深くしたので、セレッソは右のハーフスペースに松田と坂元、左のハーフスペースに奥埜と清武が交互に入り、これまでより長めのパスを使って起点を作らされるポイントを大外から内側に寄せることで湘南のWBを死に石にしようする。

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しかしうまく大外を回避しつつ内側へ運ぼうとしても湘南は5バック+4枚で守るため中央はガチガチ。加えて湘南の戻りの速さが左右に揺さぶるセレッソのペースを凌駕していたので、湘南はセレッソの攻撃をほぼ無効化していた。とは言っても湘南に強い攻撃の形があるわけではない。ボールを奪ってはサイドへ展開して鈴木(冬)や古林がセンタリングを上げるものの、ポジショニングと経験で高さを補う石原1枚に対してセレッソは高さのあるヨニッチと瀬古の2枚で対応するので脅威にはならない。持つ技術では凌駕するセレッソvs戻りとスライドの速さでは凌駕する湘南という試合の構図が変わったのはジンヒョンがビルドアップでミスをした20分くらいから。さらに立て続けに前から嵌め込まれて、今度は丸橋のミスからボールを奪った湘南がまたもや決定機を迎えるも、岡本のシュートは枠の外。今季のセレッソはこのようなミスがかなり減ったと言え、やはり今のビルドアップをしていればミスは起こり得る。(マンチェスターシティやリヴァプールですらミスをするので、どれだけ上手でも完璧はないのだ…)しかし相手に立て続けにチャンスを与えた後、給水タイムがあったことでセレッソは冷静さを取り戻すことができた。その流れからデサバトが抜け出してセンタリングを上げ、鈴木のシュートに繋がったシーンは先ほどまでの嫌な流れを引き戻すには十分だった。鈴木が去年奪った川崎戦の値千金のゴールを彷彿とさせたシーンだったが、ボールは惜しくも枠の外。

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再開後はベンチからも遠ざかっていた鈴木だが、鳥栖戦も含めてコンディションの良さが伺える。その後も清武や坂元がハーフスペースで中途半端な位置を取ったり両SBが上がって湘南を押し込むものの、ゴールには至らない。それくらい湘南の5バック+4枚の緑の分厚い壁は強固だった。そんな湘南の厚い壁を崩せた理想の形は相手をうまく引き出した坂元のシュートシーン。鈴木(冬)は大外の松田を気にして内側に寄り切れず、かと言ってCBからしたら坂元は遠い。そこに反転のスピードが速く、左足で一発を振り抜ける坂元がスッと姿を出した瞬間は前節の試合の再来を期待させた。が、残念ながらダフってしまった…

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この日の瀬古の守備にも一言触れておきたい。相手の強いが個人の身体能力ではなく、経験値であることもあって、高さと速さで石原を凌駕していた。このパフォーマンスであれば五輪代表に選出されない理由はないと思う。(生意気な口が災いして落とされているなら話は別だが…)

【後半~リスクを取ってスピードを上げるセレッソvs配置を変えてアプローチする湘南】
湘南の戻りが速くて数的優位や位置的優位がなかなか作れない前半を受けて、セレッソはビルドアップのスピードや前からのアプローチスピードを上げる。特に湘南のビルドアップは行き先が定まっていないので、藤田とデサバトが2ボランチ、右サイドでは坂元がさらに内側で壁を作ることでサイドへ誘導し、落ちたシャドーを松田が捉えに行くように前掛かりになっていく

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一方の湘南は1トップ2シャドーでセレッソの2CB+2ボランチを捕まえられなかった前半を踏まえて、2FWに変更。これによって藤田とデサバトをケアしつつ、ボールを持ったCBが片方のサイドに寄ってボールを持ち、前から嵌められる状態になった時に前から捕まえに行くような形にシフトした。

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しかし中央のケアに枚数を割いたので、前半はサイドで数的不利だったセレッソがサイドで起点を作れるようになる。55分には右サイドで押し込んだ松田のクロス、56分には丸橋が押し込んで奥埜のヘディングシュートと立て続けにサイドからチャンスを作ることができた。しかしそんな状況を見て湘南もやられてばっかりではない。上下動を繰り返して足が止まってきた古林に替えて馬渡を入れ、馬渡を左WB、鈴木(冬)を右WBに置き換える。この交代で湘南は両サイドで幅を取りつつ、スピードで縦への推進力を持つ両WBが逆足で中へ放り込めるようにもなったので、徐々にセレッソの坂元や清武を押し込むように流れを引き戻していく。入った数分間を見れば湘南は正しい采配を採ったと言えるだろう。しかし結果がモノを言う世界は本当に難しい。湘南に傾いた流れはまたもや給水で絶たれ、セレッソが再びリズムを掴み直す。給水後、セレッソは坂元から豊川や奥埜に当てるプレーが連続する。最初は湘南DFに阻まれていたが、数分後にこのトライが身を結ぶことになる。再び右サイドで持った坂元がペナルティエリアの奥埜へパス。既にイエローカードを貰った大岩はペナルティエリア内なので奥埜へ厳しく当たれず、パス&ゴーで馬渡をぶっちぎった坂元がリターンを貰おうとペナルティエリアへ侵入したときにファールを貰い、セレッソは渇望したPKをついに得た。

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そのPKはこれぞ清武と言えるキックで、サイドネットへ鋭い弾道で蹴り込む見事なPKだった。その後清武と奥埜に替えて柿谷と片山を投入し、柿谷はトップ下に入る。湘南のビルドアップは3枚のCBからビルドアップが始まるので、頂点に対して豊川がチェックし、両サイドへ出たら引き続き豊川がチェイスに行くことで最前線は数的不利となるが、柿谷は常にボランチを消しておく。

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これによって湘南はサイドを経由しないとボールを前へ運べないが、WBにはセレッソのSH、さらに2トップ2シャドーに対してはセレッソのCBとボランチが構えるため、数的同数での戦いを強いられる。その状況で唯一怖かったのは苦し紛れの鈴木(冬)や馬渡のカットインとセンタリングくらいだった。中の枚数、高さで制圧しているので放り込まれても特に問題は起こらない。最後はうまく時間を使い、やっと解禁された関東アウェイ初戦でしっかりと勝点3を持ち帰ることができた。川崎がガンバに勝ったため1位と差は縮まらなかったが、今節でガンバを抜いて再び2位へ返り咲いている。(名古屋は1試合未消化)

【試合を終えた感想~3頭体制の確立】
湘南は紆余曲折を経ても湘南スタイルを継続しているが、山田と石原の存在はチームコンセプトに経験と技術を融合させることで+αをもたらす。だが湘南スタイルという根本の思想はあるものの、選手の配置に決まりが少ないので、局面においては個人のアイディアと走力で解決させなければいけない。フットボールのプレー順序は「認知」→「判断」→「実行」の順で進むと言われているが、ボールを持って認知と判断を求められる湘南のプレースピードは、立ち位置が決まっていて「認知」と「判断」のステップをすっ飛ばせるセレッソより2段階くらい遅い印象だった。一方、前節苦戦した鳥栖は立ち位置が明確に決まっていた。これが苦戦した鳥栖戦と快勝した湘南戦の違いだった。余談になるが、湘南戦では通訳兼アナリストの小寺さんが前へ出て指示してるシーンも頼もしかった。「イヴァンとロティーナは攻守で2枚体制を取る」と言われているが、ついに冥途の門番3つの頭を持つケルベロスに昇華した。今後の更なる躍進が楽しみである。(写真はあくまでもイメージ。ケルベロスは音楽を聴くと眠ると言われていますが、今年はそんな雑音を薙ぎ払って勝点を積み上げてほしい)

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