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可哀そうがうまい女

今日働いているカフェのオーナーから言われた言葉だ


私の仕事

離婚をして、住所不定無職となる予定の私は、困った。
当然だ。家業の手伝いをしていたのだから、離婚となれば職も同時に失う。
友達らしい友達は、いわゆるママ友といわれる部類に仕分けられる人しかいない。
何もかもを置いて嫁に来たのだ。
そこで、所属していたコミュニティーの友達がアパートを持っていることを思い出し連絡してみた。
結果は、貸す部屋はないけど店舗スペースが空いていて、そこの2階であれば住めるとのこと。
ちょうど店もやりたいと思っていたから、一緒にやらないかという話だった。
住むところも仕事も手に入ると思い、私はぜひ、とお願いした。
何屋さんをするかということから考え、3か月と少しくらいで、店はOPENした。
売上のパーセンテージを私に業務委託料という形で支払うということになっていた。
家賃は2万円。シャワー室と洗濯機と乾燥機があり、部屋は6畳ほどであろうか。
十分に暮らせる。
そこで、私は第二の人生を始めることになった。


思っていたよりも簡単ではない

このコロナ禍でのOPENだ。
そう簡単にお客さんが来るわけもない。
お客さんが1組も来ない日もざらにあった。
かつ、パーセンテージも引き下げられる。
収入は少ない。
けれど、東京という初めての大都会。私ははしゃいでいて、インスタで見たお洒落なお店に行った。当然、支出の方が多い。
お金は出ていく一方だ。
さらに、オーナーの思っていたより私は働けないらしい。
集客に力をいれない、言ったことができない、がさつで雑、スマホばかりいじるな、図々しい、出かけてばかりいるな、いろいろ言われた。
今までは、家族だからで許されてきたと思うけど、ここでは許されないよ、仕事をきっちりこなすことが求められた。
オーナーの意見は、すぐに変わる。
昨日までのこと今日は違う。
盛付が昨日とは全く違うものになって、値段も違う。
ついていくのがやっとだった。
そう、私は仕事ができなかったのだろう。
同じ材料で作ったものが、美味しくないと陰で言われ、作ることができなくなった。
言われたとおりにやっているつもりでも、見た目が美しくないといわれることもある。
そう、私はポンコツだったのだろう。
反論することさえ、面倒くさいと思うようになった。
そんなこと言われてないし、聞いてないと思うことも多々ある。
言い返してみても、結果は同じなのだ。
私がダメなんだろう。
自分はできると思っていたことは間違いだったんだと、そう思った。


明るくて優しい子だけどね、

いい子なんだけどね、
だけどに続く言葉は、つかえないんだよね。
オーナー曰く、そういう事のようだ。
私は、人の手柄を取ることがうまいらしい。
やると言い出して、周りにすべて任せて、ありがとうと言われるのが私。
私は、可哀そうを演じるのがうまいらしい。
可哀そうと思わせて、人から搾取して生きているのが私。
私は、人の悪口を言わないから周りが勝手に勘違いして周りが悪くて、いい人が私。
見る人が見れば、お見通しだよ。
深く付き合えば、すぐばれるよ。
40にもなってそんな生き方してたら、誰もいなくなるよ。
ADHDだと思う、ちゃんとしなよ。
私はそういう人間らしい。


じゃぁ、どうすりゃいいの

わたしは、自分では気がつかなかったけれども、どうやらそんな人間らしい。
流石にへこんだ。
周りがやりたそうにしていたけど誰も手を上げないから、出来ないけどやろうって声を上げたのがダメだったのか。
冬服がなくて困っていたから、いらない服あったらほしいなって言いながら、友人の出した服を買ったのがダメだったのか。
人の悪口から入る人が好きじゃなくて、悪く言わないようにしようと思っていたのがダメだったのか。
悲しそうにしてもどうしようもないから、離婚したけど楽しそうに出かけたのがダメだったのか。
何がダメだったのか、全部ダメだったのか。
仕事できる風に言ってたくせに、やってみると全然できなかったから、ダメだったのか。
何がどうして、ダメなのか。
わからなくなってくるよね。
私は私なりに生きていただけなのに。
生きていちゃダメなのか?


それは関係ない


仕事のことはしょうがない、オーナーなんだから、出来ないっていう権利は当然あるし、オーナーが思うレベルまで、実際できていないんだろう。
それは、私の努力不足で頑張り不足で、私のせいだ。
でも、離婚の理由や、子供を置いてきたことについては言われたくない。
なんで離婚したかなんて、言いたくないんだよ。
子供を置いてきて、平気なわけないじゃない。
楽しそうに見えるようにしてるんだよ。
泣いてたって、時間は戻らないし、子供は手元にいないんだよ。
独りで子供を育てて、偉いと思うよ。すごいって思うよ。尊敬だってするよ。
でも、自分で産んだ子供の成長を目の前で見れない辛さなんてわからいだろうよ。
悲しくなるから、子供の写真見れない気持ちなんてわかんないだろうよ。
笑って、離婚届に判押したように見せてるんだよ。
必死に生きてるんだよ。

でも、なんだかんだ、こんな言いにくいことをちゃんと言ってくれるオーナーを信用もしているし、大好きなのである。

(ちょっとへこんでたので、言葉荒くなってしまってたらごめんなさい。吐き出させてくれてありがとう。読んでくれてありがとう)

柴崎紫


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