見出し画像

解答例文つき 昇進・昇格試験(論文編)|ワークライフバランス&働き方改革をどう達成するか

『ワークライフバランス(働き方改革)をどのように達成するのか?』

このテーマは私が、実際に管理職の昇進試験で面接官に問われて、モゴモゴしてしまった、いわくつきのテーマです。

当時は、頭が真っ白になって『適材適所で業務を振ることで、効率よく業務を進めワークライフバランスを達成する』みたいな理想論で逃げた記憶があります。

幸いにも深追いされませんでしたが、おそらく「それが簡単にできれば、誰も苦労しないよね。」と面接官には内心思われたことでしょう。

ワークライフバランスに限らず、昇進試験で求められるのは理想論・抽象論ではなく、具体論です。

ということで、今回はワークライフバランスの達成には何が必要かをテーマに小論文の模範解答(1,600字程度)を公開していきたいと思います。


小論文作成の準備|キーワードの洗い出し

① 言葉の定義を必ず調べる

言葉の定義を調べるにあたっては、出来るだけ公式なソースにあたりましょう。国や公的機関のホームページが最適です。

書籍や企業のHPには、そこの筆者の考えが入っているので、偏った定義をしている可能性がありますから注意しましょう。

今回のワークライフバランスは内閣府のHPにキッチリ定義されています。

仕事と生活の調和とは(定義)
多様な働き方が確保されることによって、個人のライフスタイルやライフサイクルに合わせた働き方の選択が可能となり、性や年齢にかかわらず仕事と生活との調和を図ることができるようになる。

男性も育児・介護・家事や地域活動、さらには自己啓発のための時間を確保できるようになり、女性については、仕事と結婚・出産・育児との両立が可能になる。

引用:内閣府HP(外部リンク)

働き方改革で押さえておくべきポイント

平成30年6月、働き方改革方が成立し、・時間外労働の上限時間が、明文化されました。

原則、残業は月45時間・年360時間(三六協定で特別条項を設ければ、限度時間を超えて時間外労働させることができる)迄となりました。

siba

② 理想の状態をイメージする

ワークライフバランスが実現されれば、どんな状態になっているか?定義を見ながらイメージを膨らませましょう。

キーワードを洗い出しする時点では、体裁を気にする必要はありません。自分の理想を自分の言葉で、どんどん書きましょう。

  • プライベートが充実できる。

  • 育休や産休が取りやすい。場合によっては時短もとれる。これは女性だけでなく男性も。

  • 1人1人の業務時間が短縮される。残業が減る。

  • 家庭生活が安定する⇒仕事への活力が湧く⇒仕事が効率よく進む⇒家庭生活が安定・・・好循環。

  • ホワイト企業になる⇒企業として(組織として)価値があがる⇒良い人材が集まる⇒業績が高まる⇒・・・好循環。

  • 離職率の低下⇒人材の流出防止。

③ 現実をイメージする

  • 仕事が減らないのに、ワークライフバランスは無理。事業の効率化にも限度がある。

  • 現実問題として有給の消化率が、2割に満たない。

  • 有給は、取ったもん勝ち。責任感強い人ほど損をしている。

  • 権利は主張するが、義務は履行しないメンバーがいる。⇒不公平。

  • 有給の取り過ぎ=悪という価値観がある。真面目な社員ほど、プライベートで有給をとるときは、気後れしてしまう。

  • いくら時間をかけも、良いものができれば評価されるという組織風土。利益を最大化、効率化は2の次。

  • 夏季休暇とか代休の消化率は高い。これは義務なので。

  • 同じ部署なのに一部の人だけ、早く帰れる。(仕事の割り振りが、個々の力量と一致していない)

  • フォロー体制がない、だから効率の悪い作業の進め方になり、結果的に休めない。

  • 会議で発言してアイディアをだせば、そのアイディアの実現という仕事を振られて損。だから発言しない。

  • 仕事とプライベートの優先順位が人によって違う、価値観が違うので分かり合えない。
    例えば、子どもの運動会や参観日と重要な商談の日程が被った場合。人によって基準が違う。結果、ギスギスした職場になってしまう。

④ 余力があれば、マイナス要因も考えておく

余力があれば、マイナス要因も考えておきましょう。

今回であれば、ワークライフバランスが達成されたときに危惧されることは何か?を書き出しましょう。

  • 過剰に残業が抑制される⇒仕事の質が下がる、給料が減る。

  • 仕事の総量が減らないなら、結局、裁量労働制の管理職にしわ寄せがいく。⇒実際に管理職を希望しない人が増えた。

  • 若手を成長させるためには、あえて無駄なことをさせる必要がある。自分で考えさせて、小さな失敗をさせることが大切。効率のみが最優先されると、そういった時間も失われる可能性がある。

⑤ 具体的な解決方法をイメージする(メモレベルでOK)。

理想と現実をそれぞれ見比べてください。理想と現実を比較して、管理職としてワークライフバランスにどうやって貢献できるかを考えてください。

ちなみに私が思いついたのは、「業務効率を上げて仕事を圧縮」、「休みを取りやすい環境の構築」、「フォロー体制の構築」の3つです。実際に論文中で、その具体的な解決方法を整理してみます(以下参照)。

小論文 解答例文

小論文を作成するにあたっての論理構成

作成するにあたっては、先ほど準備した①~⑤の材料を組み合わせて、論理的な文章を構築します。論理展開としては以下の順番がおススメです。


  1. 用語の定義(今回は管理職の役割)

  2. 現状(どんな課題があるか)

  3. 理想

  4. その為に何をするのか


解答例文 ワークライフバランス(働き方改革)をどのように達成するのか?

内閣府の重点戦略会議では、『ワークライフバランス』は次のように定義されている。
『個人が仕事上の責任を果たしつつ、結婚や育児をはじめとする家族形成のほか、介護やキャリア形成、地域活動への参加等、ライフステージに応じた希望を実現できるようにすること。』と定義され、これを後押しするように、平成30年6月、働き方改革方が成立し、時間外労働の上限時間(原則、月45時間・年360時間)が、明文化されました。

この社会の流れに沿って考えると、管理職として職場のワークライフバランスを推進することとは、『仕事の業務効率を高めることで、社員が仕事以外の重要な活動に取り組めるような環境を構築すること』であるとの考えに至った。

以下に、実際にワークライフバランスを達成するために、職場の課題(現状)と具体的な対策について論じることとする。

1.職場の課題(現状)について
ワークライフバランス(働き方改革)を達成するうえで、職場の課題(現状)は、以下の3点に集約されると考える。
(1)仕事の総量は変わっていない、当然、繁忙期には残業が生じる。何らかの圧縮が必要。
(2)有給の取得率が2割程度、責任感の強い社員ほど、休暇を取るときは、気後れしてしまう。
(3)フォロー体制がなく、個々人の業務効率が悪い。

2.具体的な対策について管理職として、この3つの課題へのどう対応すべきか、以下に具体的な対応策を挙げる。
(1)業務効率を高める事による残業時間の縮減それぞれの担当者が担う業務には、忙しい時期と暇な時期があり、この忙しい時期に実施しているタスクが、ボトルネックとなり、スムーズな事業展開を妨げている現状がある。業務効率を上げるためには、管理職はボトルネックを把握し、そのタスクに関わる係員の人数を増やすなどの対応を取る必要がある。具体的には、プロジェクトの最終ゴールである成果物を達成するための、個々の作業理リスト(to doリスト)とその実施時期を抽出し、それぞれの作業ボリュームと難易度を評価して、それぞれの作業の軽重を数値化する。数値化されたデータから、あらかじめボトルネックを事前に特定し、人員を手厚くしておくなどの対応を取ることで、業務効率が高まると考える。

(2)休暇申請しやすい環境の整備私の部署における有給消化率は50%前後となっており、以前より取得率は高まっているものの、国が示している労働条件総合調査の結果である56%とほぼ同じレベルとなっている。
一方、社内に目を向けると、その消化率は、部署によって異なっており、残業が多い部署の消化率が低い傾向が認められるものの、残業が多いが、有給の消化率は一定の水準に達している例外部署もいくつかある。
この違いは何か、どうすれば有給取得が取りやすい環境になるのか。1つの考察になるが、上司を含め、チーム全員が有給を取得していれば、気後れすることなく有給の取得を申請できるのではないだろうか。
無理強いはできないが、有給取得率を高める為に、チーム員全員が一律的で有給取得を推進していくといったしくみを取り入れることも有効ではないだろうか。例えば、部署の業務目標に残業時間の圧縮が掲げられているが、そこに有給の目標取得時間数も加えることで、有給消化率を高める事ができるのではないかと考える。
また、これらに加え、残業の時間数と同様に有給の消化率も管理職が把握し、休暇の取得が少ない部下に対しては、取得を促すなどの取り組みも有効であると考える。

(3)フォロー体制の構築我が社には、新入社員が円滑に仕事を進められるよう、フォローする先輩社員を事前指定するメンター制度が導入されている。
私自身は新人の頃に、忙しそうにしている先輩に気後れして質問ができなかった経験があり、メンター制度は質問という行為のハードルを下げる良いしくみであると思っている。
また、この制度には知識・経験が少ない新入社員が無駄に悩む時間を減らし、部署全体の残業時間の圧縮にも効果がある。一方で、2年目以降の経験の浅い若手、知識・経験の乏しい異動者(中途採用者)については、周りから、多少の助言はあるものの、独力の業務達成が求められている。独力で仕事の進めていくにあたっては、どうやって進めればいいか悩む、過去の資料を探す、方向性を考えて前任者やベテラン社員に確認するという流れになるが、この悩む時間や過去資料を探す時間は、何も生み出すことはない無駄な時間である。
この無駄を解消する1つの方策として、担当者を決定する際に、メンターとしてサポート要員(前任者等)を同時に決めることで、円滑な事務遂行に寄与すると考える。

管理職への昇進が叶ったなら、上記3つの具体策をもってワークライフバランス(働き方改革)に貢献したいと考えている。(文字数1,600字)

siba

その他テーマの解答例文が気になる方はこちらのリンクからどうぞ


結局、人生100年時代にどんな働き方が求められるようになるのか

日本の雇用環境・生産性は悪化する

今回は、昇格・昇進試験の論文ということで、「働き方改革」に着目して、残業抑制・業務の効率化を中心に主張を展開しました。
ただ、この「働き方を変えていく必要性がある」という本質は、もっと別な所にその理由があります。
日本という国は今、このような状態にあります。

①日本という国の生産人口(15歳から65歳)が減り、国力が下がっていく。
⇒②とりあえず、女性がもっと働けるようにしよう。
⇒③(労働者足りない・社会保障費を賄えない)
⇒④定年を伸ばして、高齢者をもっと働かせよう。
⇒⑤(イマココ)まだまだ、人が足りない
⇒未来⑥外国人労働者を受け入れよう。

今現在、人が不足している業界は、サービス業だったり、飲食業などになります。日本は、諸外国に比べてこの分野の生産性が低く、平均賃金も低い傾向があります。
そのため、日本人労働者を雇用できない分野なのです。
日本人が見向きもしない、生産性の低い分野を、今までの形で何とか生きながらえさせるため、外国人を安い労働力として導入しようとしています。

この政策は、生産性を下げ、賃金抑制につながる悪手にほかなりません。私たちの日本は今、そういう間違った方向に突っ走ろうとしています。
賃上げと経済成長は、卵が先かニワトリが先かの関係にあります。

日本が今すべき方策は、経済成長が難しいのであれば、賃上げであるというのが、デービット・アトキンソン氏(2020年 政府の成長戦略会議委員)の主張です。

まとめ

学校のテストとは異なり、昇進・昇格試験は、その勉強方法や手順を誰も教えてくれません。

職場の親切な上司や先輩に聞けば、ふわっとしたアドバイスをくれると思いますが、注意してください。

その方法は、その上司や先輩が『たまたまうまくいった方法』に過ぎません。鵜呑みにすると、失敗します。

少なくとも、タイムロスをすることになります。

多くの人は、昇格試験・昇進試験に合格するための学習プランをメソッド(手順)として確立できるほど、多くの受験経験は有していません。

加えて、受験者である『あなた』と『その上司・先輩』は、経験もスキルも違うので、同じ学習計画をたてても、結局、うまくいきません。

合格するために必要なのは、『合格までのロードマップ』には、何があって、自分が何を対策しなければならないかを、把握することです。

昇格・昇進試験に、志望動機の提出や筆記試験(択一式)、面接なども課されていて、何をやったら良いか、よくわからないという方向けに昇進・昇格試験全体のロードマップに関する記事も用意する予定です。

ご参考にしていただければ。

皆さんの試験が上手くいくことを祈っています。

いいなと思ったら応援しよう!